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72話 俺、手段を選ばない事について考えます。


「最後の爆発は事前に仕掛けておいたものです。ほら、爆発した場所を見てください」


 【空気砲(エアキャノン)】で飛ばされ、爆発が発生した場所を見る。


「入り口……まさか最初から……?」

「ええ♪ 私は()()()に使う魔法は一度だけとは言いましたが、戦闘前に制限は設けませんでしたので♪ それにら実はこの爆発に持っていくまでのロジックにもちょっとした仕掛けがあるのです。が……まあそれはおいおい説明していきましょう」


 戦闘の中での攻防……正確には攻められっぱなしだったが、それらの過程は全てミーシャさんの手の上にあったらしい。


「では最後のアドバイスです。戦闘の流れは最初からある程度計画しておく事。慣れない内はニパターン程、慣れてくればいくらでも派生して、無限に戦闘の終着が見えてきますよ♪」

「と言う事は……今回の戦闘、ミーシャさんは爆発以外にも戦闘の終着点を?」

「もちろんです♪」


 ミーシャさん曰く、木刀の軌道を強引に変えての切り替えしの時点で、決着する可能性も考えていたらしい。


「正直、この時点で七割方勝負は決まると思っていました。ですが流石夜様、男性であの柔らかさは鍛錬の賜物ですね♪」

「いくら筋肉があったとしても、身体が硬いといざという時に怪我をしかねませんからね。風呂上がりには柔軟をするようにしてます」

「男性は疎かにしがちですからね。柔軟性があれば、物理攻撃に(しな)りがでて威力の増加が、逆に攻撃を受けた時に受け流しやすくもあるんですがね……」


 「だからこそ、柔軟性の無い人を虐める拷問は種類が沢山あるわけですね♪」と続けるミーシャさん。

 とうとう自分の黒い性格を隠す気が無くなったらしい。


「では、いくつか振り返ってみましょうか。まずは攻勢の時、相手の反撃の択を潰す方法からいきましょう。まずこれ、簡単に言ってしまうと相手への嫌がらせです♪」

「ずっと攻勢に立ち続ける事で相手にプレッシャーを与え、体力を消費させて焦りを生じさせる……」

「その通りです♪ 例えば鍔迫り合いの状態だったとしましょう。お互いの実力は互角、引く事もできそうにない。夜様ならどうしますか?」

「強引に蹴りを入れますかね……?」

「まあ、それも択としてはありでしょう。ですが私なら──」

 

 わざとらしく言葉を切って、満面の笑みで──


「相手の顔面に唾を吐きます♪」


 こう言い切った。


「…………最低ですね」

「ええ、我ながらクソ以下の行動だと思います。ですが実戦ではどんなにクソな手を使ってでも、結局は最後に立っていた者が勝者なのです。いくら力があったとしても、手段を選んでる内は二流ですね。勝利を死んでも取りにくる頭のおかしな人達を相手にした時、生きていられるとは思えませんから」

「………………」


 考えさせられる言葉だ。

 

(手段を選んでる内は二流、か……)


「マイル様はその辺りスキが無いですよ。とんでもない魔力に加えて、価値のある勝利を得る為なら、全てを捨てて向かって来ますからね。魔界の総司令時代、エルフ軍一番の精鋭部隊30名を倒すに、魔族500名を死なせる選択をしたそうです。それで、マイル様はこう言ったそうです。『後悔は一欠片もない。でも彼らの死には、勝利で報いる』と。」

「凄まじい……ですね」


 勝利への貪欲さも、500人の死を背負って進むその覚悟も。


「本当に末恐ろしいです。あの人は絶対に敵にしたくありません……さて、話を戻しましょう。夜様は鍔迫り合いの最中、相手がいきなり唾を吐いてきたらどうしますか?」

「……多分、咄嗟に避けてしまうと思います。でもそうしたらスキが出来る」

「そうですね。仮に避けなかったとしても、集中力が途切れるのは間違いないでしょうね」

「どちらにせよ、不利な状況に追い込まれる」

「極論ではありますが、これが嫌がらせの真骨頂──相手にとって嫌な状況を作り出し続ける事で、反撃の択を与えさせないという事です。良ければ私の嫌がらせを纏めたノートを貸しますが──」

「い、いえ大丈夫です……」


 実戦経験の足りない俺にとって、実戦で勝ちに行く為の方法が書かれているノートはみたいが、何故かとてつもない寒気がした。

 借りるのはまたの機会にしよう。


「そうですか……まあ気が向いた時にいつでも♪ ……さて、では次にいきましょう」


勝利を得る為なら。

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