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69話 俺、ホテルの道を走ります。


 それから再び海プールに戻り、遠泳、ビーチバレー、砂遊び……海ならではの遊びを皆と楽しんだ。

 

 そして──


「もう五時を過ぎたわね……そろそろホテルに向かいましょうか」


 時間はあっという間に過ぎ、時間になってしまう。

 俺達はすぐに着替え、海プールを後にした。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「すぐに気付いて良かったな……」


 シャル達とホテルまでの道中を共にしていた俺だが、途中で財布を忘れた事に気付き、海プールへ引き返した。


『一緒に取りに行きましょう?』


 そう提案されたが、流石に私情でシャル達を時間ギリギリにするのは悪い。

 俺はその提案を断った。



「17:54か……」


 財布を見つけて、俺も急いで帰路につく。


(表道じゃかなりギリギリになりそうだ。裏道を通ろう)


 海プールに来る前から、この辺りの地理は把握済みだ。

 少し複雑な道だが、道を知っていればこちらの方が早い。


 海プールとホテルを繋ぐ裏道は未だ開発区域で、人はほとんどおらず、不気味な雰囲気を漂わせている。

 学園長曰く、この辺りには今後、どんどん新しい住宅地を建てていくらしい。


 そんな裏道を小走りしていると──


「リンネ?」

「夜!? よかった……」


 前からリンネが走ってきた。


「何か忘れ物でもしたのか?」

「ううん、気になるものを追い掛けてたら迷っちゃって」

「気になるもの……?」

「うん、何か黒い靄みたいなのが沢山。皆には見えてなかったみたいだけど」

「黒い、靄……」


『【手】』


「…………」


 思い出したくもない事を思い出してしまった。

 ……忘れよう。


「それを追ってここまで走ってきたんだけど、いつの間にか見失っちゃって……気がついたらここで迷ってたね! アハハ!」

「笑ってる場合か…………っと、時間が無い。リンネ、行くぞ」

「あれ、夜も迷ったんじゃ──」

「いや、この辺りの地理は把握している。ホテルに行くなら表道よりこっちの方が早い」

「流石夜!」

「17:57……余裕は無さそうだな。リンネ、走るぞ!」

「いえっさー! 【強化(ブースト):脚力】」


 俺と自身に強化魔法を付与するリンネ。

 距離もそう無いし、これならなんとか間に合いそうだ。


「先行する、ついてきてくれ」


 黒い靄のことも気になるが、それは後で聞けばいい。

 今は遅れないことが優先だ。

 俺達はホテルに向かって、全速力で駆け出した。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「危なかったー!」

「ああ、ギリギリだった」


 時刻は18:30。

 何とかホテルへ駆け込み、各々で色々と整理をした後、食堂で合流して現在に至る。


 正直少し遅れたくらいで学園長は怒らないだろう。

 だが信用は失いたくない。

 時間通りに来るのが一番いいのは明確だからな。


 にしても──


「うめー!」

「はい、美味しいです!」

「はぐはぐはぐはぐ」

「……咲」

「ごっくん……だってこれ滅茶苦茶美味しいから!」

「落ち着いて食べて下さいよ咲ちゃん……」

「それを言うなら月夜さんの器の中も落ち着いてくださいよ!」


 月夜のきつねうどんの中に入っている、9枚の油揚げを指さして言う咲。


「これは狐の獣人としての私の本能がそうさせるんです。許して下さい……」


 ちなみに皇先生もそうらしい。

 どうやら本当に、狐の獣人は本能的に油揚げが好きな様だ。


 にしてもここのホテル、外見からして敷居の高い所だと思っていたが、中もしっかりその通りだった。

 料理が美味いだけでなく、どのフロアにも埃一つ見当たらない。

 天霧邸(ウチ)も似たようなものだが、こちらは機械が仕事をしてくれているからな。

 人力でここまで行き届いた整備ができるのは相当だ。


 後で学園長から聞いた話だが──


『ここは空中都市の中にあるホテルの中で、最高級のホテルだよ。おえらいさんが来てるからね、最高級のおもてなしは当然だよ! あ、でもVIPフロアは入ってきちゃ駄目だよ? ボク()()の傭兵君に警備させてるから、強引に入ろうとしたら殺されかねないからね!』


 だそうだ。

 最高級ホテルなのも頷ける。

 にしても、そんな所に俺達が止まって良かったのだろうか。

 まあVIPフロアはかなり離されているようだし、学園長が専属に指名する程の人が警備をしているのなら問題無いだろう。

 VIPルームはどうでも良いが、その人には会ってみたい所だ。

 当然そんな事はしないが。


「ご馳走さまー!」

「お粗末様でした」

「バクバクモグモグ」

「……そろそろ食い終われよ?」

「ふぁい!」


 咲が食べ終わったのを確認して、四人で食堂を出た。


もう少ししたら四章がしっかり始まります。

是非お楽しみに!

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