68話 俺、先生の言葉が理解不能で困惑です。
それから俺達は泳ぎまくり、少し休憩する事に。
今は各自で自由に休憩中だ。
とはいえ各界の環境で海を見る機会が無かった一部の女子達は、海(あくまで擬似的なものだが)に興奮しっぱなしで未だにはしゃいでいる。
はしゃぐ女子達の中には咲の姿もある。
俺は実際に海を見た事もあるが、咲は立場上外に出る機会は少なく、当然海を直接見た事は無い。
咲には色々と我慢させていたからな……
兄としては、折角のこの機会を楽しんで欲しい。
そんな事を考えながら、水場全体を見回せる崖の上で、咲達のはしゃぐ姿を見ていると──
「……先約がいたか」
「皇先生」
俺の後ろには水着姿の皇先生が居た。
白ビキニのシンプルなデザインが、スタイルの良い皇先生によく似合っている。
にしても──
「先生、確か学園長と一緒に、偉い人が集まる会議に参加してたんじゃ……」
「ん、あぁ……」
ここに来る前、寮で海プールの先行公開の事を知り、行く事になった後──
『でもボク達、遊ぶ前にちょっとした会議があるんだよね……その会議には月夜ちゃんとミーシャちゃんも、ボクの付き添いとして参加してもらう予定になってる。面倒くさいけど会議をすっぽかす訳にもいかないしね!』
『尚の事なんで水着なのよ……スーツか何か着るべきじゃない?』
『気分だよ気分! 後で着替えるからいーの! ……まあともかく、ボク達が会議してる間、海プールは君達専用だから、いっぱい楽しんでね!』
『良いんですか?』
『うん! 君達だって、いっぱい遊びたいでしょ? 子供は遊んで学んでゆっくり寝る!』
『私達、もう子供って歳じゃ──』
『うるせい! (胸揉む)』
『( ๑º言º) (腹パン)』
『ぐぼぇ』
こんな話を二人としていた。
……学園長が懲りずにシャルの胸を揉むのは、もはや日常になっている。
にしても、なんでシャルは学園長からの胸揉みを避けないのか……
以前、気になって聞いてみたんだが──
『母さまからの攻撃、気配を消してるのかしらね? 触れられるまで全く気付かないのよ……』
だそうだ。
だが傍から見ている俺には、学園長の気配がしっかり感じられる。
……謎だ。
っと、今は学園長の事は置いておくとして、皇先生がここにいる理由だ。
もう会議は終わったのか?
「今は休憩中だ。少し気が滅入ったから、気分をリフレッシュする為に潮風に当たりたくてな。外に出てきた訳だ」
「……なるほど」
今の先生の言葉、嘘は言ってない。
だが──
目線、筋肉の動き、瞬きの回数。
精通している訳じゃないが、実は俺には少しだけ心理学に心得がある。
簡単な仕草から行動を読む事は、そんなに難しい事でもない。
それらを用いて先生を観察した俺は──
(…………)
先生が俺に対して、何か申し訳なく思っている事があると分かった。
……まあ、休憩中にわざわざ水着に着替えてここに来るのもおかしな話だからな。
会議用の服でも潮風に当たる事は出来る。
心理学を使いまいが、目ざとい者ならすぐに違和感に気付くだろう。
(一体何を……)
先生には普段からお世話になっているし、あの【災禍の竜】事件では、俺達を命懸けで助けてくれた恩人だ。
申し訳なくなるような事をされた覚えも全くない。
……まあ、聞く必要もないか。
皇先生が、とても俺達の害になるような事をするとは思えない。
だが──
(……一応、頭の片隅には置いておこう)
何かが起こる可能性が万が一にでもある場合、警戒せざるを得ない。
「隣、良いか?」
「勿論です」
俺の隣に立ち、崖の外の海プールを遠い目で見る皇先生。
「……………………」
「……………………」
俺達の間で沈黙が流れる。
だがまあ、悪い雰囲気じゃない。
すると──
「……【紅の月】に気を付けろ」
「……は?」
「私はそろそろ行く。じゃあな、天霧兄」
そう言って、元の道へと引き返す皇先生。
「紅の、月?」
全く聞いたことのない単語だ。
俺は不思議な感情を抱いたまま、俺は皇先生の行き先を目で追った。
※作者は重度の中二病患者ですが、ただカッコいい響きだからって理由で付けてないのでご安心を〜





