58話 私、幾多の名刀を召喚して災厄を討ちます。
千の世界を喚んだ……というのは少し語弊があるな。
正確には一つの世界から一つずつ、この場に何かを召喚出来るというべきか。
その内一つの世界から、私は空間そのものを召喚した。
【災禍の竜】を囲むように展開された透明な壁がそれだ。
透明な壁──空間は、別の世界の空間。
つまり透明な壁に触れた赤い輪は、別世界へと転移させられた訳だ。
そして、残り999の世界から私が召喚した物は──
「……召喚に応じてくれて感謝する」
──各世界に存在する、業物クラスの名刀。
どんなに優れた刀だろうが【災禍の竜】にダメージを与えるのは難しいかもしれない。
だがそこは空狐の力を使い、刀に風を纏わせて切れ味を増させる。
こうなると元の切れ味は関係ないと思いがちだが、そうでもない。
なぜかは知らんが、良い刀程魔法付与時の切れ味も増す。
流石に全ての剣が業物以上とはいかなかったが──
「……まさか、こんな名刀まで応じてくれるとはな」
名刀──和泉守兼定。
他の世界ではどうか知らんが、この世界では人間の刀工に作られ、最上級業物とされる名刀だ。
私の言葉に反応してか、刀身を光らせる和泉守兼定。
……作られて長くの時を経た名刀は意思を持つという。
和泉守兼定の他にも、そういう刀が何振りかいるだろう。
そんなこいつ達の期待に応えるためにも──
「斬る……!」
私は幾多の名刀と共に、【災禍の竜】を斬りつけた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そこからは、酷く一方的な戦いになった。
基本的に、幾多の名刀は私の刀とリンクして動く。
だがいくつかの名刀達は自由に飛び回り、各々で【災禍の竜】にダメージを与えていく。
名刀達には各々で性格もあるようだ。
そして、幾多の名刀から生み出される異様なまでの斬圧は──
『●●●●●●●●●●●●
!!!』
【災禍の竜】の再生スピードをとうに上回る。
そして遂に──
「これで、終いだ……!」
30mはあろうかという【災禍の竜】の身体は、幾多の名刀によって細切れになり、肉片は動きを止めた。
【災禍の竜】の死亡を確認し、地面に着地すると──
「おっと……」
思わずふらつき、その場に座り込んでしまう。
だがまあ、取り敢えずこれで【災禍の竜】は死んだ。
私ももう限界だ。
「助かった、感謝する」
空狐状態を解き、【小千世界】で召喚した名刀達は元の世界に帰っていく。
身体はもう全く動かないし、魔力もすっからかんで酷く気持ち悪い。
何となく辺りを見回すと──
「ooooooooo」
「なのです!」
エースドラゴンゾンビとラウラの姿が見えた。
交戦中らしい。
(……ん?)
その光景に、とてつもない違和感を覚える。
(何だ、私は何に疑問を持っている……?)
何かは分からないが、凄まじく嫌な予感がする。
そして──
(……っ!?!?)
違和感の正体に気付き、慌てて振り向くが──
『死』
帽子を深く被り目元を隠した女が、私に拳を振り上げていた。
いつもなら軽く避けられるであろう拳。
だが空狐状態終了後で身体がとてつもなく重い上に、それに【小千世界】の代償で、意識を保つ事さえ厳しい。
──私が感じた違和感。
それは【災禍の竜】の眷属であるエースドラゴンゾンビが消えていなかった事。
眷属は、それを呼び出したボスが死ねば存在そのものが消える。
──つまり、【災禍の竜】はまだ生きている。
この女は恐らく【災禍の竜】……いや、アスタロトだろう。
私が執拗に多く狙った左腕の先が無いからな。
どうしてあれで生きているのかは知らないが、現にこうして生きていやがる。
(クソが……!)
私に拳を避ける術はない。
黙って自分に迫る拳を見上げていると──
「先生っ!」
その拳を、一本の刀が弾き返した。
Kaguya'sview end





