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52話 俺、アスタロトの目的を掴みます。


【災禍の竜】(アスタロト)が空中都市に登って来てる可能性がある」

『そうなるよね。どこから登ってくるかな……』

「多分だが……空中都市の北側──未開発地帯だ。今は俺達のいる場所なんだが、何かの音と衝撃が近づいてくるのが分かる」

『もしかして……!?』

「ああ、多分な」


 この音と衝撃、並の物じゃない。

 

「何かあったのですか?」

「はい。竜の巣から【災禍の竜】(アスタロト)が逃げ出したそうです」

「っ!? そう、なのです?」

「咲からの情報によれば、学園長達が突撃した時には既に逃げ出ていたらしい」

「もしやこの地震は!?」


 二人も気付いたのか、顔を青くする。


「すぐにこの場から撤退しましょう! 二重の弱体化効果が掛かっているとはいえ、私達で【災禍の竜】(アスタロト)を倒せる保証はありません!」


 ミーシャさんの言う通りだ。

 だが俺には一つ、気になる点があった。


「何故……今になって【災禍の竜】(アスタロト)は空中都市を登って来たんだ?」


 【災禍の竜】(アスタロト)が学園長の襲撃を何処かで耳にし、逃げ出したとは考えにくい。

 ドラゴンゾンビ達の知能は限りなく低いし、とても意思の疎通が取れるとは思わないからな。


 【災禍の竜】(アスタロト)は竜界襲撃事件の際に待ち伏せしたり、普通に喋ったりしている。

 間違いなく普通の魔物より頭が良い。


 だからこそ、このタイミングで空中都市を登って来た事に意味を感じてしまう。


「俺の気のせいなのか?」

「夜殿?」

「いや……」


 俺が考えている間に襲って来たドラゴンゾンビを、ミーシャさんが一刀で沈め、燃焼玉を放り込む。


戦闘終了(ゲームセット)です♪ こうも簡単に終わってしまうと、改めて【神域】(サンクチュアリ)がすごいと感じますね。逆に魔物達が【神域(サンクチュアリ)】のような広範囲弱体化魔法を使ってきたら、私達も簡単に倒されてしまうのかもしれませんね……」

「………………っ! そういう事か……!」


 ミーシャさんの言葉を聞いて、【災禍の竜】(アスタロト)の考えが分かった。


「何がなのです?」

「……【災禍の竜】(アスタロト)狙いは【(やしろ)】だ」

「社? …………っ!?」


 俺の意図した事が分かったんだろう。

 ただでさえ青かった顔を、更に顔を青くするラウラ。


 【社】

 巫女達が【神域(サンクチュアリ)】を展開する為に集まる場所の通称だ。

 社は空中都市の中心部分からやや北側に存在する。

 つまり──


【災禍の竜】(アスタロト)が自身の弱体化に気付き、原因である【神域】(サンクチュアリ)を張り巡らせる社を発見。魔力を感知して、その出処を掴む能力。確か──」

「魔力感知ですか? 魔物だけが持つとされている能力の」

「そうそれです。魔力感知で社を見つけて、それを壊すために北側から登ってきたのなら、一連の行動に辻褄が合う」


 昨夜に【神域(サンクチュアリ)】を強化したのも、【災禍の竜】(アスタロト)が自身の弱化に気付いた原因の一つだろう。


「入れ違いでマイル様達が竜の巣を襲撃した訳ですね……運が悪い」

「確証がある訳では無いですが、可能性は高いと思います……咲!」

『全部聞いてたから大丈夫! シャルさん達に伝えて、社まで何分で着くか聞いておくよ!』


 別の電話でシャルに掛け、すぐに答えを聞く咲。


『竜の巣からは10分は掛かるって!』

「10分か……」


 マイルさんを持ち上げて飛んでいるらしく、普段より時間が掛かるらしい。


「分かった。あと、社付近の人達を社に集めておいてくれ。巫女が襲われたら【神域】(サンクチュアリ)の効果が無くなって俺達の負けだ」

『了解! すぐに連絡しておくね!』


 電話を切る。

 すると──


「夜様、ラウラ様、ここをお離れください」


 すぐにミーシャさんが言ってくる。


「マイル様が社に来るまで10分。間違いなく、【災禍の竜】(アスタロト)が社に着くまでの方が早いでしょう。つまり足止めが必要になる。その足止めを御二方にさせる訳にはいきません」


 ミーシャさんの言っている事は正しい。

 立派な大人としての意見だ。

 だが──


「嫌なのです」

「ラウラ様!」

「もう、誰かを置いて逃げるのは嫌なのです」

「…………!」

「俺も残りますよ」

「夜様まで……!」

「俺には絶対的な火力がありませんが、最初から倒す気が無ければ時間稼ぎくらいは出来ます。戦力にはなれるかと」

「……………」


 ミーシャさんが考える様な素振りを見せたその瞬間──


『刃』


 声が、聞こえた。


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