53話 俺、死にそうなので、まだ見ぬ技を使います。
「夜様!」
俺を地面に押し倒すミーシャさん。
その上を赤い輪のような物が飛んでいき、その輪は斜線上にあった木を切り裂く。
あれは話に聞いていた──
「まさか……もうここに……?」
輪が飛んできた方向を見る。
「【災禍の竜】……!」
【災禍の竜】を確認したと同時に、【感覚拡張】を発動。
周囲の音や気配が感じられるのを確認し、再び災厄に向き直る。
「さっきはありがとうございます」
「いえ。はぁ、もう逃げる逃げないなどと言っている場合ではございませんね」
「目的は足止め。無茶はしません!」
しょうがないですね、と苦笑いを浮かべ──
「あの赤い輪は防御してはいけません! 必ず避けるように!」
ミーシャさんの注意勧告を受け、俺達の命懸けの足止めが始まった。
『死統』
【災禍の竜】が何かを呟く。
すると、地面から大量のエースドラゴンゾンビが湧き、俺達に襲い掛かる。
「【災禍の竜】は私が! 夜様、ラウラ様は周りの雑魚を倒して下さい!」
「了解!」「なのです!」
出来るなら三人で戦いたい所だが、周りに湧いたエースドラゴンゾンビを放置する訳にもいかない。
「oooooooooo!!!」
「はぁっ!」「なのです!」
「ooo……」
俺達は一匹一匹、確実に仕留めていく。
最初は苦戦したが、流石にもう何十と倒した相手だ。
倒し方は心得ているし、【神域】の影響で、その時よりも弱くなっている。
だが、取り巻きの討伐が安定してきた時──
例の赤い輪がラウラの方向へと飛んでくる。
だが、赤い輪はエースドラゴンゾンビの後ろから迫っている為、ラウラには赤い輪が見えていないはずだ。
「ラウラ様、右へ!」
「です!?」
ミーシャさんが輪に気付き声を掛けるが、ラウラは緊張しているのか、咄嗟に反応出来てない。
それを確認した俺は、【感覚拡張】を【集眼】へと変更。
そして──
天之叢雲の鞘を腰から抜き、それをラウラのおでこへ投擲する。
目的はラウラの重心の移動。
頭部の重さは、全体重のおよそ1/10。
そこに衝撃を加えれば、重心をずらすことが可能。
それなりの重さがある鞘を頭部にぶつけるのだ。
当然痛いだろうが、ラウラの頭が真っ二つになるよりよほどマシだ。
(届けっっっ!!!)
結果は──
──ブゥォォォォォンンンンンン!
「痛いのです!」
赤い輪はラウラの頭部があった場所を通過し、何処かへ消えた。
──ラウラは無事だ。
代わりに鞘が軌道上に入り、真っ二つになってしまった。
天之叢雲はともかく、鞘は代わりが効く。
ラウラが無事ならそれで良い。
にしても……弱化していてこの威力か。
鞘とて相当硬く出来ている為、生半可の威力でここまで綺麗に真っ二つにはならない。
「ラウラ、早く立て!」
後ろから迫っていたエースドラゴンゾンビを振り向きざまに殴り付け、直ぐに切り替えるラウラ。
もう大丈夫そうだな。
それを見て【感覚拡張】を使用し、あらゆる感覚を取り戻す。
だがその瞬間、俺は戦慄する。
──左から迫る死の音に。
「夜殿っ!!!」
ラウラの声が耳に入るが、赤い輪は完全に俺を捉えている。
周囲の時間が遅くなる。
この感覚……懐かしいな、六年前と同じだ。
あの時は偶然上手く行ったが、今回はそう都合よくはいかないだろう。
なら、与えられた僅かな時間で生きる道を見出し、それを実行に移すしかない。
考えろ、考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!!!!!!!!!
考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考え抜いて──
──見つけた。
この技は練習で成功した事がないどころか、歴代天霧の当主でさえ、殆どが使えなかったそうだ。
だが今、やるしかない。
やらねば死ぬ。
生き残る為に、それしか手段が無いのなら──
(今ここで、決めてみせる!!!)
俺は刀を逆手で抜き──
「【神技・八咫鏡】!!!」
この世の摂理を、反転させた。
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※ここから2日に1回ペースの更新になります。流石に二作品毎日投稿はキツかったので許してください……!





