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48話 私、友の命を無駄にしない為にも、子供達の涙を無視して先へ進みます。


 氷の大地──北の竜界から、炎の大地──南の竜界に向かうには、強い吹雪が吹き荒れる山々を越えていかねばなりません。

 ですが、幸いな事に私達には魔法があります。

 身体を温めながら進めば、恐ろしく寒い絶氷の世界もへっちゃらです♪


 ともかく、私達はその猛吹雪の中を歩き、着々と南の竜界へと向かって行きました。

 ですが南の竜界へと渡る橋の前に──


「お母様、あの大きいのなんです?」

「あれは……!?」


 【災禍の竜】(アスタロト)がいたのです。

 しかも【災禍の竜】(アスタロト)は、私達と同じ様に移動する竜族を食い殺していたのか、口の周りには何やら赤い液体が付いていました。

 確かに見つかっていませんでしたが、まさか出入り口にいるとは……

 

「ともかく戻らないと」

 

 そんな危険な所を通ってまで、国を渡る必要はない。

 そう考え、踵を返した時でした。


『壁』

「これは……何なのです?」


 禍々しさを感じる女性の声と共に、何やら壁のようなものが出現したのです。

 まるで、私達が【災禍の竜】(アスタロト)から逃げるのを防ぐかのように。

 まさかと思い、再び【災禍の竜】(アスタロト)の方へ視線を向けると──


「……こちらを見てますね」


 八つもの目を全て向け、食物を見るかのような目でこちらを見ていました。

 【災禍の竜】(アスタロト)までは軽く100メートルは離れていたはずです。

 一体どうやって気づいたのでしょうか。

 すると突然──


『刃』


 言葉と共に、ゆっくりと赤い輪のようなものが飛んできます。

 その輪に途轍もない危険を感じた私は──


「アルマ様、何か嫌な予感がします!」


 近くにいたラウラ様とリオン様を地面に押し倒し、アルマ様には警告を促します。

 ですがアルマ様も他界を旅した経験がある猛者。

 アルマ様は赤い輪の軌道から身体を離し、その軌道上に防御魔法を展開。

 あの赤い輪の攻撃力がどの程度なのかを確かめる為のものだったのでしょうが──


 スパァァン!


「これはまずいわね……」


 防御魔法は壊れるどころか、豆腐を切るようにスパッと切れてしまいました。

 あんな物が当たればひとたまりもありません。


『刃刃刃刃刃刃刃刃』


 そんなものが大量に飛んでくるのです。

 防御は出来ない為、私達は素直に避け続けるしかありません。


 それを数分続けていると──


『即滅、我厄災』


 刃を避け続ける私達にしびれを切らしたのか、ずっと動かずに座っていた【災禍の竜】(アスタロト)が、ついに動き出しました。

 瞬間──


「……っ!? アルマ様、後ろです!」

『死与』

「っ!?」


 100メートルもの間合いを一瞬で詰め、アルマ様の背後に回り、大きく口を開けて噛み付く【災禍の竜】(アスタロト)

 それを間一髪で回避したアルマ様は、すかさず距離を取ります。


「……私達はまだ何とかなっているけど、守り切る余裕がないわね」


 そう。

 【災禍の竜】(アスタロト)が遠くにいた時は子供達を守り切れましたが、もうそんな余裕はありません。

 

 取れる作戦はニつ。

 一つは子供達をここに置いて、私達二人で今すぐ逃げる事。

 もう一つはここに私達のどちらかを残し、もう一人が子供達を連れて南の竜界へと逃げる事。

 一つ目なら私達が可能性が上がりますが、子供殺すくらいなら死んだほうがマシです。

 私が【災禍の竜】(アスタロト)に一歩踏み出した時──


「子供達は任せたわ」

「えっ……!?」


 私を子供達の方へ押しやり、アルマ様は【災禍の竜】(アスタロト)の方へと進め始めました。


「アルマ様は二人の親であらせられるんです! 二人の為にもここは私が──」

「こいつは私の大切な人の仇。だから倒したいだけよ」

「ですが……!」

「大丈夫」


 そう言って振り返ったアルマ様の表情は、満面の笑顔でした。

 それは何かの為に死ぬ人が、覚悟を決めた時にする表情。

 

「………………」

「そう簡単に死んであげるつもりはないわ、必ず後で追いつくから、先に行って待ってて」


 そんな風に思っていたら『子供達は任せた』なんて言葉が出てくるはずがありません。

 間違いなく、アルマ様は覚悟を決めてらっしゃいました。

 そんなアルマ様の親としての覚悟を、私が邪魔する訳にはいきません。


「…………分かりました」


 私はあらゆる強化魔法をアルマ様にお掛けします。

 それを見て──


「おいミーシャ! アルマはどうなるんだよ!?」


 何かを悟ったリオン様が、私に抗議してきました。

 気持ちは分かります。

 ですが──


「……行きましょう」


 その言葉を無視し、私は子供達を両脇へ抱え、南の竜界へと走り出します。

 

「おいミーシャ、離せ!」

「ミーシャ殿、お母様は!?」

「………………」


 横目でアルマ様が竜化するのを確認し、私はその場を後にしました。


最後までお読み頂きありがとうございます!

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