46話 私、地獄を皆様にお伝えします。
深夜の寮で大きな音を出した俺達だが、幸いにも起きてくる人はいなかった。
後から学園長に聞いた話だが、この寮の壁は特殊加工が施されているらしく、音をほとんど遮断するそうだ。
確かに部屋にいる時、隣人の生活音すら聞こえなかったな。
最初からイヤホンをする必要すら無かったらしい。
それはそれとして──
「…………」
「え、えっと……」
ラウラに映像を見せた事に責任を感じているのか、咲が居心地悪そうにしていた。
「咲様のせいではございません。全て──」
ラウラがこうなってしまった理由。
俺の予想が正しければ──
「……竜界襲撃事件」
「ご存知でしたか」
「私も知ってるわ。二次被害として、家を失った子供達が沢山出てきたことも」
「なるほど……確かに、シャル様にはそちらの方が馴染み深そうです」
「残念な事にね」
シャルは世界を回る孤児院長だ。
竜界襲撃事件によって出てきてしまった孤児達も、自身の孤児院で保護したんだろう。
「咲様もいるのでもう一度言わせて頂きますね。私は単一の種族に属するのが嫌で、各界を渡り歩いていました。当然、竜界も訪れた訳です」
「まさか……」
「はい。私が竜界を訪れたのは、事件の直前の事でした」
なるほど……だからラウラとの面識があったのか。
竜界の何処かでラウラと知り合ったから、発狂した理由も察しがついてる訳だ。
何となく話が見えてきたな。
「私は他界に着いたら、情報収集の為に酒場に寄るのです。酒場には沢山の情報が集まりますからね。ですが、まあいい顔はされません」
戦争中に敵対種族が入ってきて落ち着いていたら、それはそれで問題だ。
当然だろう。
「そんな中、私に話し掛けてきた猛者がいました。それがアルマ様──ラウラ様の母君です。アルマ様は私と同じように他界を旅してきた旅人で、話している内に私達は意気投合しました」
戦争中に他界を旅するような物好きが、私の他にいるとは思いませんでしたね♪
と苦笑いを浮かべるミーシャさん。
「そこから、成り行きでアルマ様の家に泊めてもらったのです。そこでラウラ様、リオン様とお知り合いになったのです。二人も最初は私の事を警戒していましたが、すぐに打ち解ける事が出来ました」
「リオン様?」
「リオン様はラウラ様の義兄に当たる存在です。血の繋がりどころか種族すら違いますが、ラウラ様達との関係は家族そのものでした。リオン様はエルフと魔族のハーフだったかと。色々と複雑な事情があったそうですが、詳しい話は聞いておりません」
そういえば、と俺の方を見るミーシャさん。
「俺が何か?」
「夜様はどことなく、リオン様に雰囲気が似ている気がします。容姿や種族は全く違うのですが……不思議ですね」
「………………」
俺がラウラの手を握った時、確かに俺をリオンさんと勘違いしている節があった。
一度会ってみたいな。
「まあともかく、私は三人と仲良く過ごさせて頂きました。ですがアルマ様と出会って一週間、奴が竜界に現れたのです」
「それが──」
「お察しの通り、【災禍の竜】です。奴は突然現れ、眷属のドラゴンゾンビを率いて大量の街と竜族を破壊しました」
「…………」
「竜界は実戦を積んだ精鋭を集め、【災禍の竜】討伐作戦を開始。事態はすぐに沈静化するはずでした」
「と言う事は──」
「竜界側は一夜で全滅。九割以上の眷属達を戦闘不能にまで追い込みましたが、肝心の【災禍の竜】に致命傷を与える事は出来ませんでした」
「………………」
「私は戦慄しました。竜族の精鋭とは戦ったことがあるので尚更です。彼らは、何百何千年と鍛えられた練磨の戦士。その上、時間制限はありますが、時間内なら他の種族の追随を許さない、圧倒的な強さを持っています」
竜族は竜化能力を持つ唯一の種族。
確かにその力は一時的な物だが、代わりに得られる力は強大だ。
それが多数、それも精鋭ならば、お互いのリカバリーをしつつ竜化を交代で使える。
「負ける筈は無かった。事実竜族の部隊は【常勝の隊】と呼ばれ、他種族から恐れられていました。それが一夜で壊滅した──つまり、竜化の上から叩き潰すだけの力が【災禍の竜】にはあったのです」
「ん……? ミーシャ殿、夜殿? ラウラは一体何を……」
「…………話は一旦終わりにしましょう」
ラウラが起きてきた為、一旦話は終わりに。
「今日の討伐はこれで終わりにしましょう。皆様お疲れ様です、後はゆっくり休んで下さい♪」
「???」
ラウラは困惑しているようだったが、ともかくこれで終わりになった。
明日の為にも、今日はゆっくり休むとしよう。
なんで終わったのです…………?????





