43話 私、戦闘慣れしてるので反撃のスキなんて与えてあげません。
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「本当にすぐ見つかりますね……一体、空中都市全体に何匹いるのでしょうか?」
あれから数分。
月夜が疲れていた為、一旦歩くのをやめて立ち止まっていたが、今度はドラゴンゾンビの方から現れた。
種類は先程と同じエースドラゴンゾンビ、A級の魔物だ。
「では、約束通り私がお相手を」
「oooooooo!」
エースドラゴンゾンビが突進してくるが、ミーシャさんが何かをする様子はない。
このままじゃもろに当たる──
「ミーシャさん!」
「ご安心を。私、強いので♪」
「oooo……!?」
「なっ!?」
はずが、突進してきたエースドラゴンゾンビが急に転ぶ。
「あそこに何があるのです!」
「あれは……糸か?」
エースドラゴンゾンビが転んだ所に、月の光を反射する糸のようなものがあった。
強度を上げる為に金属を仕込んでいるのだろう。
にしても──
「いつ仕掛けたんだ……?」
「仕掛ける素振りなんてなかったじゃない……」
ワイヤートラップを仕掛ける余裕なんて無かったはずだ。
いつの間に……?
「【土の杭】」
転んだエースドラゴンゾンビに合わせ、すかさず地面から土の杭を打ち込むミーシャさん。
だが魔法に耐性のあるエースドラゴンゾンビの体表は硬く、それを貫くには至らない。
ただしその身体は杭の打ち込みによる衝撃で空を舞い、エースドラゴンゾンビは空中で暴れている。
「やっぱり魔法は効きませんか……【土の街道】」
すかさず空中に土の道を創るミーシャさん。
その道を駆け上がり、エースドラゴンゾンビに肉薄する。
そして──
「おしまいです♪」
どこからか取り出した短剣が紫に光り、エースドラゴンゾンビの心臓部に、その短剣を突き立てたミーシャさん。
「oooo……」
だが確かに鋭い一撃ではあったが、まだ息はあるようだ。
思っていると──
「o……oooooo!?」
「滅茶苦茶だわ……」
いつの間にか張り巡らされていた例の糸と、魔法によって創られた【土の街道】が、一直線にエースドラゴンゾンビの心臓部へと集合する。
「o………」
案の定、心臓部から血を吹き出しながら、エースドラゴンゾンビは絶命した。
「戦闘終了です♪」
「凄すぎるのです……」
「完璧すぎるわ……」
見ていた俺達が全く気付かなかったワイヤートラップ、単純な技量、そして最後まで相手に反撃のスキを与えない、もはや芸術的な試合運び。
どれも圧倒的な戦闘経験を彷彿とさせる動きだった。
「ちなみに、今のはほんの一部です。私の技のレパートリーは千を軽く超えますよ♪」
「すごいですね……」
人間が竜族と戦う時、竜装を使われたらダメージを与える事ができない。
だがそこに舞旋衝のような防御貫通技があれば、竜族と戦う事も出来なくはない。
というように、技の多さは相手に出来る敵の数を増やす事ができる。
つまり、千を超える技を持つミーシャさんは、相性の悪い敵がほぼ存在しないと思って良い。
しかもその一つ一つが先程のレベルだとしたら、戦争で各界を回ってこうして生きているのも納得だ。
一つ気になった事を聞いてみる。
「その短剣、魔石で?」
「はい♪ 皆様、雪はご存知ですか?」
頷く俺達。
人間界では四季が存在する為、当然俺は知っている。
魔界は年中暑く雪は降らないが、シャルも人間界に数年いたからかその存在を知っている。
獣界は殆どの地域が年中暑い上に雨も全く振らないが、一部の地域──主に狐の獣人が住んでいる所には四季が存在するらしい。
そして竜界は地域による温度差が最も激しく、北は氷点下、南は40℃を超える。
ラウラは北の出身らしく、雪は一年中降っているそうだ。
「この魔石は、北の竜界の更に北に位置する大陸で見つけたものです。吹雪が常に吹き続ける、全てが凍る絶氷の世界。魔法を使って身体を温めてはいましたが、それでも大変でしたね。フフフ、あの場所にはもう二度と行きたくありません♪」
笑い事……?
「ともかくその場所を旅している時、紫色の雪が積もっていた場所を見つけたのです。後から知ったのですが、雪は魔力を込めると紫色になるそうですね。当時は知りませんでしたから、ただの興味本位で近くに行ってみました。そしたら、そこに魔石があったのです」
この短剣に使われている魔石ですね♪ と言って、軽く刀身を撫でるミーシャさん。
「そんな場所で採れたから魔石だからでしょうか。この短剣──【イクエル】には氷を生成、操作する能力があります。でもそれだけじゃなかった。何故かは分かりませんが、私が斬りつけた対象に、私の魔力を込めた物を引き寄せる効果があったのです」
まあ便利なので良いんですけどね♪ と、軽く舌を出しながらウインクするミーシャさん。
「さ、まだまだ夜は長いです。この調子でどんどん倒して行きましょう♪」
次なるドラゴンゾンビを求めて走っていくミーシャさん。
元気だなぁ……
だが負けてはいられない。
俺達も走ってその後を追った。
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