33話 この世界は──
翌日。
学園で授業を受け終え、エイルと図書館で本を読んでいた時──
『えーテステス……大丈夫そうだね! 2年生の天霧夜君とエイル・ユースティアちゃん。もしまだ学校にいたら、学園長室に来てね』
学園長からのお呼び出しがあった。
隣にいたエイルと顔を見合わせ──
「何の用だろうな?」
「私用なら寮でもいいし、『もし』と付けるくらいだし急用では無いんだろう。取り敢えず行こう、夜君」
取り敢えず向かう事にした。
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コンコンと学園長室の扉をノックする。
「入って入って!」
「失礼します」
そうして学園長室に入ると、そこには学園長の他に、皇先生と昨日の少女──リンネがWGAの制服を着て座っていた。
「して……用とは?」
エイルが二人に問う。
「その前に、彼女はリンネ・クロノス。記憶は無いが、種族は見た目通り人間だ」
エイルは昨日の事を聞いていたのか、記憶喪失について、さして驚く様子もない。
「彼女には2つの理由でこの学園に入って貰う事になった。寮もクラスもお前達と同じだ」
「理由……聞いても?」
「うん、1つ目の理由は──」
学園長から次の言葉は、人間の常識を覆す、とんでもないものだった。
「リンネちゃんの身体の中に魔臓があるからだよ」
「「なっ!?」」
「魔法を使っている所を偶然見ちゃってね。それで分かったよ」
人間は魔法が使えない。
それは空気中の魔素を魔力に変える魔臓が、そもそも身体の中に存在しないからだ。
だが、目の前の少女には魔臓があるらしい。
何とも信じがたい話だ。
「……人間に似た新しい種族とか、そういう事ですか?」
「いや、それは違う」
「どうしてそれが分かるんです?」
「…………ごめんね、それは言えない」
「…………」
学園長達がリンネを知っているのは、昨日の発言から何となく察していた。
気にはなるが、余計な詮索もする必要も無いか。
「では、2つ目の理由は?」
「すまんがそれも言えん。言ったところで誰も信じないだろうし、こっちは人間だけじゃなく、世界の常識を変えかねない。こちらから気になるような事を言ってしまってすまないな……」
どうやらこの状況に、学園長と皇先生も戸惑っているようだ。
何とも言えない表情で顔を見合わせて苦笑いを浮かべている。
「まあともかく、いろんな事情があってこの学園に転入する事になった。寮が特待生寮なのは両方の理由が原因だ。リンネは私達の保護下に入らないとマズイからな」
理由に関しては釈然としないが、これを俺達に話したのは、何か理由があってリンネをここに置いているというのを、他の生徒に暗に伝える為だろう。
他の生徒の前で公表した際──
『彼女は特待生寮に入る事になった、理由は言えない』
なんて言ったら、成績上位を頑張ってとった他生徒の面目が無いし、リンネが人間と言うこともあり、余計な僻みを買う可能性がある。
仕方のない処置だろう。
「それで、俺達が呼び出された理由は?」
「あぁ、二人にはリンネの学園と寮の案内して欲しい」
「あぁ、なるほど」
俺は自分が呼び出された理由を察した。
だが、エイルはまだ分かっていないようだ。
まあエイルはエルフだし、こういう事は実感が無いだろう。
「……失礼ですが、それは先生方がやれば良いのでは?」
普通の生徒ならそうするんだけどなと苦笑いし、俺を見る皇先生。
「リンネは人間だからな。いち早くクラスに馴染めるように、クラスのリーダーであるエイルと、人間の俺に声を掛けたんだろう。……違いました?」
「うん、まさしくそのとーりだよ! 早速お願いしても良いかな?」
「俺は大丈夫です。エイルは?」
「あぁ、今日は生徒会も無いし、私も構わない」
「じゃあリンネちゃん、そういう事だから……リンネちゃん?」
「すぅ……すぅ……」
目を開けて、棒立ちしているリンネ。
さっきから何も喋ってないと思ったが──
「寝てるのか……?」
「すぅ……すぅ……」
うさぎかな?
「起きろー!!!」
「ひゃい! 起きます!」
あ、起きた。
「はぁ……とにかく、こいつらが学園と寮を案内してくれるからな」
「私はリンネ! どうやら人間? という種族みたいですね。他に何の種族がいるのかも分かりませんが。ハハハハ!」
記憶喪失なのに随分と明るいな。
「お、おう。俺は天霧夜だ」
「私はエイル・ユースティアだ。よろしくリンネ」
「夜にエイル、よろしくぅ!」
俺達は学園長室を出て、リンネの学園案内に向かった。
AnotherView:???
「行った、ね」
「あぁ……あいつらは釈然としてないだろうが、あんな理由、話せる訳がねぇからな」
「白と黒のオッドアイ、人間なのに魔法が使える。間違いないよね」
「あぁ。しかも、出会い方までアイツの言ってた通りだった。もう確定的だろうな」
「でも、この世界にリンネちゃんがいるとなると、あの子はどうなったのかな?」
「さあな……ともかく、私達はリンネを守らないといけない。次の世界を良い方向に向かわせる為にも、リンネの存在は鍵になる筈だ」
「リンネちゃんの事は、一応ミーシャちゃんにも話しておくね?」
「あぁミーシャか。そういやミーシャも知ってるか」
「うん、その事は私から話しておくよ」
「おう、じゃあ私はリンネの部屋の準備でもしておくぜ」
「いつもありがとね輝夜ちゃん」
「気にすんなって、これも仕事だ」
リンネの存在に関して触れるのはだいぶ後になりますが、それまで気長にお待ち頂けると嬉しいです!
エイルの人見知りがだいぶ軽減されている感じになってますが、夜以外と話している時は心臓バックバクです。
共通の趣味について喋ってる内に、夜はエイルにとって安心できる相手になりました。
そういえば、兎って寝ている時も半目を開いているらしいですね。例えとして使わせてもらいました。





