32話 俺、オッドアイで記憶喪失な人間の少女を拾います。
新章開始っ!
あれから数カ月が経ち、WGAでの生活にも段々と慣れてきた。
依頼も何度か受けてみたが、基本的には人手が足りない区画の警備を手伝ったり、C〜E級の魔物が発生したから倒して欲しい等、実戦とはいえ簡単なものばかりだった。
魔物とは、魔素の多い所で生まれる異形の生物の事で、基本的に敵意は剥き出しであり、魔法や武器を使って攻撃してくる厄介な存在だ。
魔物は7つのランクで表されており、その強さや特徴、珍しさによってランク分けされている。
具体的には以下の通りだ。
指定災害級──世界規模での被害を出し、未だに撃破されず、姿を隠している魔物。個体別に名前がある。討伐した者、団体に多額の報奨金が与えられる。現在確認されているのは10体。
S級──甚大な被害を出すレベルの強さを持った魔物。人里に降りてくることは無い。数は少ない。
A級──街規模で被害を出すレベルの強さを持った魔物。人里に降りてくることはほとんど無い。数は少なめ。
B級──村規模で被害を出すレベルの強さを持った魔物。人里に降りてくることがある。数は普通。
C級──鍛えた兵士がなんとか倒せるレベルの魔物。時々人里に降りてくる。数は時々見かける程度には多い。
D級──一般人でも頑張れば倒せるレベルの魔物。割と人里に降りてくる。人の手が入ってない所には沢山いる。
E級──子供でも倒せるため、驚異には全くならない。特に敵意も無く、中には人間になつく種もいる。魔素の少ない人間界にもどういう訳かいる。
流石にC級の魔物となると多少手こずるが、それでも全く問題にならない程度には戦える。
1度だけB級の魔物討伐の依頼が貼られていたが、珍しくリンカが受けてすぐに終わらせて帰ってきた。
リンカ曰く──
「E級もB級も殴ったら終わるから違いがよく分かんない」
だそうだ。
相変わらず滅茶苦茶である。
それはそうと、現在時刻は5:00。
ベッドから身体を起こした俺は、日課のトレーニングを行う為に外に出る。
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WGAの外周は5km程で、朝のランニングには丁度いい長さだ。
軽めの柔軟をした後に20分程度で走り切り、寮に戻ってきた後は素振り100回。
100回でも、しっかり型を整えて打ち込むと相当疲れる。
素振りも10分程度で終え、武術の鍛錬に移ろうとした所で──
「おはよう! 君はホントに頑張り屋さんだね!」
「学園長? おはようございます」
学園長がにっこり笑って手を振っていた。
トテトテと走ってきた学園長は──
「ほいスポドリ!」
「え、いいんですか?」
「いいのいいの、じゃね!」
と言って、俺にスポーツドリンクを渡して敷地内の森に行ってしまった。
「……うし!」
その後もいつもの鍛錬を済ませて、朝風呂で汗を流し、朝食を食べて学園に向かう。
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「…………」
「えーと、取り敢えず行くのです!」
「お、おう」
いつも通り機嫌が悪いシャル、それからラウラと咲と一緒に学園に向かう。
シャルは朝が弱いからか、朝はいつも機嫌が悪い。
いつもはリンカとガイアとも一緒に向かうのだが、今日はリンカがお○○ししてしまったらしく、先に行っていてくれとの事だった。
ガイア……お疲れ様。
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同じクラスの知り合いはシャルとエイル、それから少し変わったエルフの第二王子──レイ・ノヴァくらいだ。
他の人は俺が人間だからかそもそも近付こうとすらしない。
レイは入学試験での得点が同じだった俺に興味を抱いたらしく、人間とかどうでもいいらしい。
時々変態的な発言をしているが、敬語で話されることを嫌い、一部の人(俺やシャル、エイル等)には親切で普通に気のいい友人だ。変態だけど。
WGAの授業は午前は座学、午後は模擬戦等体を動かすカリキュラムになっている。
午前は担任のヴァルナス・ハイド先生の授業を受けた。
ヴァルナス先生は竜族で、既に800歳を超えているらしいが、見た目は20代前半くらいの感じのいいお兄さんって感じだ。
凄まじいな竜族。
午後の模擬戦ではレイと戦い、なんとか勝利する事ができた。
レイとは何度か戦っているが、俺の勝率は1割も無い。
……だが、レイは負けると──
「素晴らしいぞ天霧夜ぅぅ!!!」
とか言って喜んでいる。変態だ。
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そうして一日のカリキュラムを終えて、俺はWGA内の図書館に向かう。
ここの図書館は蔵書の数が凄まじく、まだ見ぬ本が尽きなくてまるで飽きない。
特に最近は──
「この本なんか、夜君結構好きだと思うぞ」
「俺からはこの本をオススメしたい」
エイルとおすすめの本を紹介し合い、本を読み耽っている。
エイルも読書が趣味だったらしく、偶然俺が好きなシリーズの本を読んでいるところ見かけ、声を掛けた。
好きな本の傾向も似ていた為、今ではこうして、互いのおすすめの本を本を読みまくる仲になっている。
だが──
「っと……済まない、私はそろそろ」
「あぁ分かった。いつもお疲れ様」
エイルは生徒会に所属している為、図書館に長くはいられない。
エイルが生徒会室に行った少し後に、俺は図書館を出て、帰路につく。
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咲は部活に所属しているが、俺はそういう訳でもない。
早く帰って、エイルからオススメされた本でも読んでいよう。
そう思いながら急ぎ足で帰っていると──
「……人間?」
人間の少女がうつ伏せになって倒れていた。
仰向けにして体調を確認するも、脈や呼吸も問題なし、寝ているだけのようだ。
だが──
「……放っておくわけにもいかないよな」
路上で突っ伏していたものの、身なりはそれほど汚れてはいない。
それに──
「なんだ、この剣」
この少女の持ち物だろうか。
刀身が光を反射して輝いている。
いろんな武器を見てきたが、この剣は天之叢雲と同等、もしくはそれ以上の業物だ。
ともかく、寮まであと1分程度の距離だ。
俺は少女と剣を担ぎ、寮に向かった。
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事情を管理人の皇先生に話すと、空いている部屋を貸してくれた。
その部屋のベッドに少女を寝かせると、騒ぎを聞き付けたのか、シャルとラウラが部屋に入ってきた。
その後、学園長と皇先生も入って来た辺りで──
「ん……?」
少女が目を覚ました。
少女の目は左右で色が違い、右目は黒、左目は白の瞳をしていた。
その瞳を見て俺達は驚いたものの、学園長と皇先生は俺達の驚きを更に通り越して、目を見開いていた。
学園長が口を開く。
「き、君。名前は?」
「私は……リンネ」
「どこに住んでたとか分かるか? 何でも良い」
今度は皇先生が口を開く。
だが、少女の口から放たれた言葉と、その後に続く先生達の言葉は、俺達の頭をさらに混乱させた。
「…………名前しか分かんない」
「「やっぱりね(か)……」」
……やっぱりって何だ?
余計な事を喋ってしまったと言わんばかりに、二人は口をつぐみ──
「すまん三人共、ここは私達だけにしてくれ」
「うん、ボクからもお願い」
と言われ、俺達三人は部屋を追い出されてしまった。
「何だったのです?」
「さぁ……母さま達の考えている事はさっぱり読めないわ」
「…………」
その後、部屋に戻って本を読んだが、内容はさっぱり入ってこなかった。
3章はラウラがメインキャラとして置かれます。
ラウラの過去なんかも書くつもりですので、お楽しみ頂ければ!





