25話 俺、必殺技が完璧に入って嬉しいです。ラウラ、魔力欠乏症で地獄なのです。
「中々やるのです、天霧殿」
「ハァ、ハァ……そっちこそ、息が全然乱れてないな」
一進一退の攻防により、既に戦闘開始から3分が経過していた。
何度かあの技を使うタイミングを見計らっているが、やはりしっかり算段を建てないと当てられそうにないな。
俺は次からの行動を、全てその技を繋げる為の布石にする。
「ふっ!」
左下から右上に一閃。
「ここで、攻める!」
躱された所を踏み込み、再び折り返す様に右上からの袈裟斬り。
その袈裟斬りは竜腕によって防がれ、軽い金属音とともに弾かれる。
こうなることは目に見えているし、この袈裟斬りに大した力は込めていない。
今回は威力より、攻撃後のスキを減らす事に重きをおいた。
「斬撃は効かないのです!」
そしてラウラは、当たれば一撃で昏倒しかねない巨大な竜腕を俺に振るう。
──これを待っていた!
「【変更】!」
【感覚拡張】から【集眼】への変更。
それはガイアと戦った時のように、使いどころを間違えればスキを作ってしまう諸刃の刃。
だが、俺の秘策は文字通りの切り札。
警戒したラウラにこれが当たるとは思えないし、次の一撃で決着を付ける必要がある。
──すまん相棒、今日はいつもより念入りに磨く!
刀を脇に投げ、その手でラウラの襟元を。
本来刀に添える左手は、伸ばされた竜腕の先、ラウラの服の裾を捕える。
そして──
「ふっ!」
「にゃ!?」
ラウラを巻き込み、後方に宙返り。
攻撃された時の勢いを逃さないまま、服の襟元を掴んでいた右手を、ラウラの腹部に移動させる。
そして着地時──回転の外側にいたラウラは、俺の体重を加算した状態で、背を向けたまま地に落ちる。
その着地と同時に──
「はっ!」
「!?!?」
掌底を打ち込む。
着地の反動よる下からの衝撃と、掌底による上からの衝撃。
それらの板挟みになる事で、その衝撃はラウラの身体の中を暴れまわる。
これが俺の秘策──天霧の最高難易度の武術【舞旋衝】だ。
成功の為の条件が多く技の難易度も高いが、【舞旋衝】による衝撃は柔らかい身体の中で暴れまわる為、防御力が意味を成さない。
それ即ち、竜装相手でもダメージを通す。
【舞旋衝】の衝撃で土煙が舞う。
念の為【集眼】を【感覚拡張】に戻し、距離をとる。
その際に、投げた愛刀を拾うのも忘れない。
手応えもあったし、本来なら一撃で昏倒する衝撃だが──
「ケホッ、ゲホッ! ふぅ、意識が飛びかけたのです」
「……マジか」
苦渋の表情を浮かべながらも、腹部を抑えて起き上がったラウラの姿があった。
だが前と比べて呼吸が乱れていおり、足元も覚束ない。
一矢報いる事は出来たみたいだ。
やがてラウラは苦渋を隠すように笑い──
「体技で追い詰められたのは初めてなのです。前の試合を見て警戒はしていたですが、人間だからって舐めている部分があったのかもです」
そういうと、ラウラは天に手を掲げ、もう片方を心臓に当て──
「でも、もうそんな事は考えない。天霧殿に敬意を表して、ラウラの全力で相手をさせてもらうのです!」
ラウラを中心に強烈な水流が渦巻く。
その水渦はすぐに散り、ドラゴン姿を現す。
竜族はプライドが高く、自分が認めた相手にしか完全な竜化は見せない。
だが、俺にはラウラに認められた事に喜んでいられる余裕は無い。
ラウラの発する圧に臆しまいと、刀を構えて立っているので精一杯だ。
『さあ、覚悟するのです!』
そうして、ラウラは口を開け──
「…………?」
『ふにゅう……』
そのまま倒れてしまい、やがて元のラウラの姿に戻る。
「おええ、気持ち悪いのです」
そういう事か。
竜族は強大な力を持つものの、魔力が少なく、持久戦に向かない。
竜化の維持にはかなりの魔力を使うようだし、最後の完全竜化で魔力を使い果たしてしまったのだろう。
魔力が底を尽きると、とてつもない倦怠感の他、吐き気や頭痛といった症状が出てくる。
──【魔力欠乏症】だ。
こうなってしまうと、もう後は時が経つのを待つか、キュアボットに入れて置くかしかない。
魔力を持たない人間とは無縁の症状だが、二日酔いのもっと酷いバージョンだと誰かが言っていた。
……どちらにせよ、俺は未成年だから分からないのだが。
とはいえ──
「勝者! 2642番!」
俺は無事、竜族を相手に勝利を収めた。
おええ……気持ち悪い……頭痛い……お腹痛い……地獄なのです(ラウラ)





