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20話 俺、技の使いどころを間違えてピンチです。




 ガイア自身は一歩も動いていないはずだ。

 にも関わらず、地面に刺さった槍は俺を襲い、ガイアの手元に戻った。

 ガイアが魔法の詠唱をしていたようにも見えなかったし、武器自体に特殊能力が付与(エンチャント)されている可能性が高い。



特殊能力(アビリティ)付与(エンチャント)状態】とは、何らかの形で、武器に特殊能力が付与されている状態を指す。

 主に魔素の多い場所に長年放置された武器が特殊能力付与状態になるが、詳しい事は未だに分かっていない。

 本人から聞いてはいないが、多分シャルの大剣もこの状態にある。

 


 ともかく、あの槍は特殊能力が付与されているのだろう。

 戦闘前は近接戦になると思っていたが、相手に遠距離攻撃の手段がある以上、その考えは改めざるをえない。

 なら──


「次は俺から行かせてもらう!」


 駆け出す俺に対し、例の槍を構えて受けの体勢に入るガイア。

 だが、俺は受けに徹した相手を崩せる天霧の技を何度も練習し、そして完璧に扱えるまでになった。

 その技を使うには丁度良い状況だ。

 まずは──


「【変更(チェンジ)】」


 俺の状態を広範囲を感覚で捉える【感覚拡張(スプレッドセンス)】から、視覚以外の五感を代償に、狭い範囲での集中力を爆発させる【集眼(ゾーンアイ)】に変える。

 多角的な攻撃には弱くなるが、相手が完全な受けの体勢の場合、その可能性は低い。


 鞘に収められた刀に手を掛け突撃。

 もう互いの殺傷範囲内だが、俺はまだ刀を抜かない。

 それに対し、槍を突き出すガイア。

 その突き出しは鋭く、まともに受けていてはキリがない。

 それに剣にリーチで勝る槍は、対剣の戦闘において先手を取りやすい。

 だからこその突き出しだったのだろうが──


「それは読んでいる!」

「なっ!?」


 手をかけた刀はフェイントだ。

 俺は突き出された槍を回避し、槍の柄を横から掴む。


「ふっ!」


 そこからガイアの右手──槍の持ち手を蹴り上げる。


 槍の能力が分からない以上、槍を弾き飛ばし、その間に接近戦で決着をつけるのが最善だろう。


「!? 槍が!」


 完璧な軌道で入った蹴りは、ガイアの槍を宙に舞わせる。

 その瞬間を見逃さず、抜いた刀でガイアに斬り掛かる。

 だが──


「【風の弾丸(ウィンドショット)】!」

「届、かない!」


 至近距離で放たれた風魔法は、俺に回避を許さない。

 やむを得ず、刀身で風魔法を受ける。


 風魔法は対象にダメージを与えるより、吹き飛ばす事に重きを置いた魔法。

 近接戦しか出来ない俺にとって、強引に距離を開く風魔法は厄介極まりない。


 距離を再び詰めようとした所で、俺は思い出した。


 ──蹴り飛ばしたガイアの槍に、()()()()()()()()()()()事実に。


集眼(ゾーンアイ)】状態の俺は、対象を視覚に捉えていなければ無力だ。

 その状況を理解し、飛ばした方向に目を向ける。

 が──


「うっ!?」


 気付いた時には、もう遅かった。

 目の前には槍が迫り、咄嗟に刀身で受けようと身体を動かすが、間に合いそうにない。

 このままじゃ刺さる──


「【物理防御(フィジカルバリア)】!」


 はずだったが、俺の目の前に防御魔法が展開される。


集眼(ゾーンアイ)】を解除し、ふと試験官の方を見ると、こちらに手を向けていた。

 この防御魔法は試験官が展開したものなのだろう。

 試験官に一礼し、両手を上げで敗北を認める。


「勝者、2337番(ガイア)!」

「「「うぉぉぉぉおおお!!!!」」」


 観客席から声援が送られる。

 勝負には負けたが自分の弱点も再確認できたし、試合運びも途中までは上手く出来ていた。

 自惚れかもしれないけど、良い試合だったと思う。


「お疲れさん。今回俺が勝てたのはこの槍のおかげだ。試合中は翻弄されっぱなしだったからな。良い勝負が出来た事、感謝する。」


 ガイアが俺に手を差し伸べる。

 人間の俺に手を伸ばすとは……ガイアは根っからの武人タイプらしい。

 俺は差し伸べられた手を握って──


「こちらこそありがとう。楽しかった」


 こちらも感謝の意を示す。

 先程よりも大きな歓声が、観客席から響き渡った。

最後まで読んでくれてありがとな。

そういえば、この作品のPV数が2000を突破したらしいぜ。

いつも読んでくれて、本当にありがとうな。(ガイア)

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