↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
R.E.M. ―眠る世界へ贈る、目覚めの子守唄―  作者: 天宮夢二
はじまり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/38

第10話② 僅かに残った希望

「…………」

 

 

「何も教えてくれんのに?」

 

「うん」

 

「信じろって?」

 

「うん」

 

「…………」

 

「無茶言うなあ」

 

「僕もそう思う」

「お前が言うな!」

 

 

 スクネが。

 

 

 ほんの少しだけ、

 笑った。

 

 

 けれど。

 

 

 ケータは、

 笑えなかった。

 

 

「父ちゃんは、

 死んだ。

 

 母ちゃんも。

 

 生きとるか、

 死んどるか分からんって」

 

 

「…………」

 

 

「お前は。

 

 何か知っとるんやろ」

 

 

 スクネの笑みが、

 消えた。

 

 

 窓の外。

 

 

 夕陽は。

 

 いつの間にか、

 さっきよりも高いところまで昇っていた。

 

 

 茜は、

 少しずつ薄れ。

 

 

 空には、

 青が戻り始めている。

 

 

「……誰も、

 君のお母さんが死ぬところを、

 見てない」

 

 

「…………」

 

 

「封印された。

 

 それだけ」

 

 

「でも……」

 

 

「封印されることと、

 死ぬことは同じじゃない」

 

 

「…………」

 

 

「じゃあ」

 

 

 ケータの指が、

 布団を掴む。

 

 

「生きとると?」

 

 

「それも、

 違う」

 

 

「…………」

 

 

「お母さんが生きている方もある。

 

 死んでいる方もある。

 

 どっちも、

 ある」

 

 

「……どっちも?」

 

 

「うん」

 

 

 スクネが、

 懐中時計へ目を落とした。

 

 指先で。

 銀色の蓋を閉じる。

 

 

 ――カチッ。

 

 

「こうやって、

 蓋を閉じてしまったら。

 

 中がどうなってるか、

 外からは見えないだろ?」

 

 

「…………」

 

 

「生きているのか。

 死んでいるのか。

 どっちかが消えたわけじゃない。

 

 どっちもあるのに、

 どっちになるかは、

 まだ決まってない。

 

 蓋を開けるまではね」

 

 

「じゃあ……」

 

 

 ケータが、

 顔を上げる。

 

 

「母ちゃんがおる方に、

 できると?」

 

 

「…………」

 

 

 スクネは。

 すぐには答えなかった。

 

「今の君には、

 無理」

 

「…………」

 

「でも。

 選べるくらい、

 強くなればいい」

 

「俺が?」

 

「うん」

 

「母ちゃんが、

 生きとる方を?」

 

「そう」

 

 スクネは、

 笑わなかった。

 

 

「ただ願うだけじゃ、

 駄目だよ。

 

 世界がどんな答えを出しても。

 

 こっちだって、

 自分で選べるくらいに。

 

 強くならないと」

 

 

「…………」

 

 

「できると?」

 

「さあ」

「おい!」

 

 

「だから。

 できるかどうかを知るためにも、

 まずは知らないとね」

 

「…………」

 

「君はまだ。

 夢獣のことも。

 夢害のことも。

 寝夢のことも。

 封印のことも。

 昨日、

 自分に何が起きたのかも。

 ほとんど何も知らない。

 

 だから。

 知って。

 選んで。

 

 それから強くなればいい」

 

「…………」

 

 ケータの頭に。

 昼間に聞いた、玲子の声が浮かぶ。

 

 夢見学園。

 今より真実に、

 近づける場所。

 

「……夢見学園」

 

「…………」

 

 スクネが。

 

 ほんの少しだけ、

 目を細めた。

 

「そこに行けば。

 母ちゃんを助ける方法も、

 分かるかもしれんと?」

 

「さあね」

「おい!」

 

「でも。

 ここで何も知らないままよりは、

 ずっと近づけるんじゃない?」

 

「…………」

 

 ケータは。

 俯いた。

 

 父ちゃんは。

 もういない。

 

 どれだけ願っても。

 その事実は、

 変わらない。

 

 でも。

 母ちゃんは。

 

いる。

いない。

 

 その二つが、

 まだ残っている。

 

「…………」

 

 だったら。

「俺」

「うん?」


「行く。

 夢見学園。

 

 行って。

 全部知る。

 俺に何が起きたのかも。

 

 母ちゃんをどうしたら助けられるかも。

 

 全部知って。

 母ちゃんがおる方を、

 選ぶ」

 

「…………」

 

 スクネは。

 しばらく、

 ケータを見ていた。


 いつの間にか。

 窓の外は、

 すっかり明るくなっていた。

 

 

 夕暮れの赤は、

 もうない。

 

 

 空には、

 朝の青が広がっている。

 

 

「……あ」

 

 

「何?」

 

 

「もう、

 朝だね」

 

 

「朝?」

 

 

 ケータも、

 窓を見る。

 

「…………」

 

 今は。

 夜だったはずなのに。

 

 窓の外には、

 朝が来ていた。

 

「これからは、

 もう少し話す機会もあるから。

 

 今日は、

 ここまでにしよう」

 

「まだ聞きたいことある」

「知ってる」

 

「いっぱいある」

「それも知ってる」

 

 

「じゃあ――」

「また今度」

 

「…………」

 

 スクネが。

 懐中時計の蓋へ、

 指をかける。

 

 

「ケータ」

「ん?」

 

「急がなくていい。

 でも。

 止まらないでね」

 

「…………」

 

 ――カチッ。

 

     **

 

 ピッ。

 

 

 ピッ。

 

 

「…………」

 

 

 ケータが、

 目を開けた。

 

 

 白い天井。

 

 

 ツン、と。

 

 

 鼻をくすぐる、

 消毒液の匂い。

 

 

 頬に触れる、

 ひんやりとした朝の空気。

 

 

「…………」

 

 

 窓の外。

 カーテンの隙間から。

 

 淡い朝の光が、

 差し込んでいる。

 

 ケータは。

 しばらく、その空を見ていた。

 

 

 ピッ。

 

 

 ピッ。

 

 

 今度は。

 

 

 ちゃんと。

 

 

 現実の音が、

 鳴っていた。


本編をお読みいただきありがとうございました!


もし「面白い!」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけたら、画面をもう少しだけ下にスクロールしたところにある……

【☆☆☆☆☆】

の星マークを、お好きな数(最大5つ!)ポチッとタップして応援してもらえると、執筆のモチベーションが爆上がりします!

ブックマークでの応援も、あわせてぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。