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5 街の風景

知らない場所。知らない人たち。

それまで当たり前だったものが、何一つ通じない世界。

そんな場所で、自分はちゃんとやっていけるのか。

それでも――少しだけ、楽しみだと思えた。

―世界を旅する少女の物語―

扉を開けた瞬間、空気が変わった。

人々の話し声。行き交う足音。それまで室内にこもっていた音とは違う、外の世界のざわめき。

「これが、ファキリスの街。」

ノエルが軽く振り返って言う。

「……すごい」

イリスは思わず呟いた。

視界いっぱいに広がるのは、石造りの建物と、人の流れ。見たことのない服装。すべてが新鮮だった。

「この街はシクレッツァっていうんだ。街を案内してあげるね。」

(いろいろやらないと。服買って、家具買って、あと連れていきたいところもあるし。)

ノエルはそう言って、歩き出す。

イリスは少し遅れて、その隣に並んだ。

通りに出ると、両脇には店が並んでいた。

「まずは服かな。」

ノエルが軽く言う。

「え……?」

「そのままだとちょっと浮くし。」

ちらりとイリスの服装を見る。

「あ……。」

言われて、ようやく気づいたように自分の服を見る。周囲の人とは、どこか雰囲気が違っていた。

「ほら、こっち。」

ノエルに促され、店の中へと入る。中には、柔らかい色合いの服が並んでいた。

「ファキリスはこういうのが多いよ。」

「……かわいい。」

イリスは小さく呟く。

手に取ってみると軽くて、やわらかかった。

「とりあえずこれと、これと……あとこれ。」

次々とイリスに渡していく。

「え、こんなに……?」

思わず目を丸くする。

「いいから試してみて。」

軽く言われて、イリスは戸惑いながらも頷いた。

しばらくして。

「……どう、ですか。」

少し遠慮がちに姿を見せる。

「かわいい〜。やっぱり私の目に間違いはなかったね。」

「…ありがとうございます。」

どこか落ち着かない様子で裾をつまむ。

「次はこっち。」

ノエルは次の服を差し出した。

「え、まだあるんですか……?」

「あるよ。」

即答だった。

何度か着替えたあと。

「……どうでしょう。」

ノエルは腕を組んで、じっと見た。

「うん、これもすごくいい。」

「“も”……?」

「さっきのも、これも似合ってる。」

あっさりと告げる。

「え……。」

イリスは少しだけ戸惑う。

「どれがいいとか、あるんですか……?」

「んー、全部。イリスはもともとかわいいからどれも似合うんだよね。」

イリスはどこか照れたように視線を逸らす。

「試着したやつ全部買っちゃお。どうせ着るし。イリスは何か気に入った服とかある?」

「え……。」

突然振られて、イリスは少しだけ戸惑う。

渡された服を思い返す。どれも似たように見えて、少しずつ違っていた。

色合い、形、動きやすさ。

「……最初の服が。」

小さく言う。

「あれが、一番落ち着く感じがしました。」

「最初のね。」

ノエルは軽く頷く。

「じゃあそれは2着買っておこうか。」

そう言って、迷いなく数着をまとめる。

ノエルはそのまま会計へと向かった。

「あの……こんなに、大丈夫なんですか?」

イリスは小さな声で尋ねる。

「大丈夫大丈夫。」

ノエルは軽く手を振る。

「必要なものだし。」

あまりにもあっさりとした言い方だった。

「それに――」

少しだけ振り返る。

「せっかくなんだから、楽しんだほうがいいでしょ。」

「……」

イリスは、その言葉を静かに受け止める。

まだ慣れない世界。けれど、こうして少しずつ、自分のものになっていく。

「……はい」

小さく頷いた。

店を出ると、通りのざわめきが再び耳に戻ってくる。

「次は家具かな。」

ノエルが軽く言う。

生活に必要なもの。

この世界で生きていくための準備。

「まだまだやること、たくさんあるからね。」

ノエルはそう言って、歩き出した。

イリスはその背中を追いながら、もう一度だけ街を見渡す。

知らないものばかりの世界。

けれど――

少しずつ、ここに居場所ができていく気がした。

「職業は転生です!」第5話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今回はファキリスでの生活の準備を中心に描きました。このあとの内容は次回に分けて書こうと思います。毎週日曜日20時頃更新するのでまた読んでいただけると嬉しいです。Xでも作品の告知などをしているので、もしよければフォローお願いします。

https://x.com/yoizuki_nvl

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