表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

4 やりたいとこ

本の中には、たくさんの世界がある。知識として知ることはできても、そこに触れることはできない。

だからこそ――

実際に触れて、確かめてみたいと思った。

―世界を旅する少女の物語―

「『本で読んだことを、自分の目で確かめてみたい』かぁ。すてきな目標だね。」

ノエルは少しだけ笑ってから、言葉を続ける。

「でも、元いた世界と今の世界じゃ、あるものも違うよ。」

世界はいくつもある。そして、世界が違えば常識も違う。数多ある世界の中で、まったく同じものなど一つとして存在しない。

「わかってます。」

イリスは小さく頷く。

「でも、ファキリスに来る前に、神様からこの世界のことを少し聞いたんです。」

少しだけ視線を上げて、言葉を探すように続ける。

「この世界には、前の世界では物語の中にしかなかったものや……すごく珍しかったものが、普通にあるって。」

ノエルは、興味深そうに目を細めた。

「……想像でしかなかったものを、実際に体験してみたいってこと?」

「はい。」

迷いのない返事だった。

「境界で、魔道具のお店をやってるって聞いたとき、私すごく驚きました。」

イリスは、アトリエで見た光景を思い出す。

「この世界では当たり前みたいですけど……前にいた世界では、国が一つ買えるくらいの価値があったんです。」

「え、そんなに!?」

ノエルは目を丸くする。

「同じ魔道具でも、世界が違うとそこまで変わるんだね。」

ノエルはそう言って、少しだけ考えるように視線を落とした。

「見てみるだけじゃなくて、やってみる?」

「……え?」

思わず、イリスは聞き返した。

「魔道具。作ってみるってこと。」

あまりにもあっさりと言われて、イリスは言葉を失う。

「いや、でも私……何もできないですし……。」

「最初からできる人なんていないよ。」

ノエルは即答した。

「知ってるんでしょ?いろいろ。」

「それは、本で読んだだけで……。」

「十分。」

かぶせるように言う。

「知らないより、ずっといい。」

ノエルは軽く笑うと、くるりと背を向けた。

「ちょっと来て。」

そう言って、アトリエの方へと歩き出す。

戸惑いながらも、イリスはその後を追った。

ノエルは机の上を軽く探ると、小さな魔石といくつかの簡単な器具を取り出した。

「ほんとに簡単なのだけね。」

振り返って、イリスを見る。

「“作る”ってどんな感じか、ちょっと体験するくらい。」

「……はい。」

緊張したように頷き、イリスは机に近づく。

「ここに手を置いて。」

ノエルに言われるまま、そっと手を添える。

「で、体のなかにある魔力を意識して流す感じ。」

「意識して……。」

本で読んだ記述を思い出しながら、ゆっくりと息を整える。目の前にあるのは、知識の中でしか知らなかったもの。けれど今は、触れられる距離にある。

わずかに、指先に熱が集まる。

次の瞬間。

ふわりと、魔石の中に淡い光が灯った。

「……!」

思わず息を呑む。

「お、できてるじゃん。」

ノエルが軽く覗き込んで言った。

「初めてにしては上出来。」

イリスは、目を離せずにその光を見つめる。本で読んだもの。想像していたもの。それが今、自分の手の中で動いている。

「すごい…」

小さく、思わずこぼれた言葉だった。

「面白いでしょ。」

ノエルは少し楽しそうに笑う。イリスは、ゆっくりと頷いた。

「はい。知ってるだけじゃ、全然違いました。」

その声には、確かな実感があった。ノエルは満足そうに一度頷くと、手を伸ばして魔石を受け取る。

「ま、今日はこのくらいでいいかな。」

あっさりと言って、机の上に戻した。

「最初からやりすぎても疲れるし。」

少しだけ肩越しに振り返る。

「街も見てみない?ここにいるだけじゃ得られることも少ないし。」

そう言って、アトリエを出ていった。イリスは一瞬だけ、その場に立ち尽くる。手の中に残る、かすかな熱。扉の前で足を止め、振り返る。作りかけの魔道具、散らばった工具、さっきまで触れていた場所。まだ知らないものばかりの空間。

けれど――

「……はい」

小さく頷いて、前を向く。今はまだ、全部じゃなくていい。一つずつ、確かめていけばいい。ノエルの背中を追いながら、イリスはそう思った。扉の向こうには、賑やかな街の音が広がっている。知らない世界。けれどもう、ただ怖いだけではなかった。

「職業は転生です!」を最後まで読んでいただきありがとうございました。初めて書いた小説のシリーズだったのですがどうでしたか?気に入ってくれたら嬉しいです。4話では魔道具作りの体験シーンがあったのでいつもよりも長くなってしまいました。毎週日曜日20時頃更新するのでまた読んでいただけると嬉しいです。Xにて作品の告知などをしているのでもしよかったらフォローお願いします。https://x.com/yoizuki_nvl

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ