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23 4日目

やりたいことは、最初から決まっている人ばかりじゃない。 分からないなら、見てみればいい。 触れてみればいい。 一歩踏み出した先で、初めて見つかるものもあるのだから。

―世界を旅する少女の物語―

朝。イリスはいつもより早く目を覚ました。

「……ん。」

窓から差し込む朝の光に目を細めながら、ゆっくりと起き上がる。

今日は職業体験ツアーの四日目。机の上に置かれた参加証へ目を向ける。そこには、今日の体験先が書かれていた。

『司書』

今日はいつもより着替えるのも早かった。髪を整え、身支度を済ませると、参加証を手に部屋を出る。

キッチンではノエルが朝ご飯を作っていた。

「おはようございます。」

「おはよう。」

「今日はいつもよりもワクワクしてるね。」

「えっ?そう見えますか?」

「見える。だって目が輝いてるんだもん。」

イリスは手に持っていた参加証を見る。

そして、少し嬉しそうに笑った。

「今日の職業体験が司書なんです。」

「ああ。図書館か。」

「はい。どんな本があるのか…じゃなくてどんな仕事なのか楽しみです。」

職業体験だから本を読んでいる場合じゃない。

「本、好きだもんね。でも、司書って本を読む仕事じゃないよ?」

「……分かってます。」

少しだけ頬を膨らませる。

「本を読める仕事だと思ってるわけじゃありません。」

「本当に?」

「本当です。」

ノエルは楽しそうに笑う。

「じゃあ、司書ってどんな仕事だと思う?」

「えっと……。」

イリスは少し考える。

「本の貸し出しをしたり、返ってきた本を整理したり……あとは、本を探している人のお手伝いをしたり。」

「うん。ちゃんと分かってるじゃん。」

「図書館にはよく行くので。」

「それもそうか。」

イリスは嬉しそうに参加証を見つめる。

「はい!」

返事がいつもより早い。

ノエルはその様子を見て、また笑った。

「そんなに楽しみなんだ。」

「……楽しみです。」

「見るのと実際にやってみるのとでは感じ方が違うところもあると思うからいっぱい体験しておいで。」

「行ってきます!」

「いってらっしゃい。」

イリスはいつもより軽い足取りで、ライラを出た。

今日向かうのは、ファキリスの中央にある大図書館。

どんな本があるのか。司書はどんな仕事をしているのか。考えるだけで胸が弾む。

やがて、大きな建物が見えてきた。

入口には、本を模した看板が掲げられている。

「ここが……大図書館。」

扉を開ける。

中へ入った瞬間、紙とインクの匂いがした。

静かな館内には、いくつもの本棚が並んでいる。

壁際にも本棚。中央にも本棚。見渡す限りの本。

「すごい……。」

思わず声が漏れる。

「おはようございます。本日の職業体験は『司書』です。」

進行役の人の隣には、落ち着いた雰囲気の女性が立っている。

「こちらは、この図書館で司書をしているセレナさんです。」

「よろしくお願いします。」

セレナは参加者たちを見渡した。

「司書と聞くと、受付で本の貸し出しをしてるだけの人と思う人も多いと思います。ですが、実際には本を管理することが主な仕事です。」

セレナは一冊の本を手に取る。

「本を分類し、決められた場所へ戻す。貸し出しや返却の手続きをする。傷んだ本を修繕する。そして、利用者が探している本を見つける手助けもします。では、まず本の整理から体験してみましょう。」

参加者たちは本棚の前へ案内された。

「返却された本を、元の場所へ戻してみてください。」

イリスも一冊の本を受け取る。背表紙には数字が書かれていた。

「この数字は……?」

「いいところに気づきましたね。これは分類番号です。同じ番号の棚を探してみてください。」

「分かりました。」

イリスは棚を見渡す。

同じような本がずらりと並んでいる。

一冊ずつ確認しながら、ようやく同じ番号の場所を見つけた。

「ここですね。」

イリスは本を棚へ戻した。

たった一冊の本を戻すだけ。けれど、正しい場所を探すだけでも意外と時間がかかる。

「本が増えれば増えるほど、大変になりそうですね。」

「だからこそ、管理する人が必要なんです。」

セレナはそう言った。

その後も、イリスは何冊もの本を整理していった。

分類を確認する、棚を探す、本を戻す。

単純な作業に見えて、間違えないように集中しなければならない。

しばらくすると、図書館を訪れた利用者が一人、受付へやってきた。

「すみません。この本を探しているんですが……。」

利用者が本の題名を伝える。

セレナは頷いた。

「確認しますね。」

「本を探すだけでも、人の役に立てるんですね。」

「司書の仕事は、本と人をつなぐことでもありますから。」

その言葉に、イリスは本棚へ目を向けた。

たくさんの本。その一冊一冊に、誰かの知識や物語が詰まっている。

そして、それを必要としている人がいる。

その後は、返却された本の状態を確認した。

「少し破れている本もありますね。」

「そういう本は修繕します。」

セレナが修繕の方法を見せる。

破れた部分を丁寧に補修し、本が再び読める状態に戻していく。

「本を守ることも司書の仕事なんですね。」

「ええ。本を長く読んでもらうために、修繕することも大切な仕事ですから。」

イリスは修繕された本を見つめる。

本を読む人。本を探す人。本を整理する人。

そして、本を守る人。

司書という仕事が、少しずつ分かってきた。

気づけば、体験終了の時間が近づいていた。

「今日はここまでです。」

進行役の声が館内に響く。

参加者たちはセレナへ向かって頭を下げる。

「ありがとうございました。」

「こちらこそ、お疲れさまでした。」

図書館を出る。

外へ出ると、明るい日差しが目に入った。

イリスは一度、振り返る。

大きな建物の中には、今もたくさんの本が並んでいる。

「司書……。」

本を読む仕事だと思っていた。

けれど、実際には違った。

本を整理し、守り、必要としている人へ届ける。

本と人をつなぐ仕事。

「……楽しかったな。」

今までの職業体験とは、少し違う感覚だった。

「商人」

「ものづくり」

「料理人」

そして、司書。

どれも知らなかった仕事だった。

けれど、司書だけは少しだけ自分に近い気がした。

「私、やっぱり本が好きだな。」

改めて、そう思う。

だけどそれが将来やりたい仕事なのかは、まだ分からない。

それでも、自分が好きだと思えるものが、少しずつ見えてきた気がした。

「職業は転生です!」第23話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今週は投稿時間が遅くなり申し訳ありません。投稿前に操作を間違えてデータが消えるというミスをしてました。毎週日曜日20時頃に更新しているので、また読んでいただけると嬉しいです。Xでも作品の告知などをしているので、もしよければフォローお願いします。

https://x.com/yoizuki_nvl

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