19 未来への案内状
やりたいことは、最初から決まっている人ばかりじゃない。 分からないなら、見てみればいい。 触れてみればいい。 一歩踏み出した先で、初めて見つかるものもあるのだから。
―世界を旅する少女の物語―
街を歩きながら、イリスはさっき言われたことを思い出していた。
――イリスがやりたいことを見つけてほしい。
ノエルの言葉は、今も胸の中に残っている。
自分の人生。やりたいこと。
考えても、まだ答えは見つからない。
だからこそ、まずはいろいろなものを見てみよう。
そんなことを考えながら歩いていると、広場の掲示板の前に人が集まっているのが目に入った。
「……?」
何かあったのだろうか。
少し気になり、人だかりの間から掲示板を覗き込む。
そこには1枚の大きなポスターが貼られていた。
『職業体験ツアー参加者募集!初心者大歓迎!一週間で様々な職業を体験!商人、ものづくり、料理人、司書、農家、研究者、冒険者。自分に合う仕事を見つけてみませんか?参加希望者は商業ギルドまで。』
イリスは思わず足を止める。
「職業体験……。」
イリスはその場でしばらくポスターを見つめていた。
この職業体験は、やりたいことを見つけるきっかけになるかもしれない。
けれど、1人で決めてしまっていいのだろうか。
イリスはもう1度ポスターへ目を向ける。
開催は3日後。まだ時間はある。
「……ノエルに相談してみましょう。」
そう呟き、ライラへの帰り道を歩き始めた。
「ただいま戻りました。」
「おかえり。早かったね。」
アトリエからノエルの声が聞こえる。工具を片手に魔道具を組み立てているようだった。
イリスはアトリエへ向かう。
「ノエル。」
「ん?」
「少し相談してもいいですか?」
「もちろん。」
ノエルは工具を置き、イリスの方へ向き直る。
イリスは街で見つけた職業体験ツアーのことを話した。
1週間かけて様々な職業を体験できること。3日後から始まること。そして、自分も参加してみたいこと。
話を聞き終えたノエルは、少しだけ笑った。
「いいじゃん。」
「え……?」
「さっきも言ったでしょ。いろんなものを見て、知って。その中で自分のやりたいことを見つければいいって。」
「はい。」
「この職業体験は、その第一歩になると思うよ。」
イリスは少しだけ俯く。
「でも……私なんかが参加しても大丈夫でしょうか。」
「大丈夫。初心者向けなんでしょ?」
「そう書いてありました。」
「だったら気にすることないよ。」
ノエルは微笑む。
「分からないから体験するんだ。」
その言葉を聞いて、イリスの胸の中の迷いが少しずつ消えていく。
「……参加してみたいです。」
「うん。行っておいで。」
ノエルは嬉しそうに頷いた。
その一言が、イリスの背中を押してくれた。
イリスは商業ギルドへと向かった。商業ギルドへ来るのは初めてだったが、大通り沿いに建っていたため迷うことはなかった。
「職業体験ツアーの受付はこちらです。」
受付の女性が笑顔で迎える。
「参加したいのですが……。」
「ありがとうございます。それでは、こちらに必要事項の記入をお願いします。」
女性は一枚の用紙を取り出した。
イリスは言われたとおり記入し、提出した。
「こちらが参加証になります。当日はこちらをお持ちください。」
「ありがとうございます。」
イリスは渡された参加証を受け取った。
開催まで、あと三日。
参加証を見つめながら、小さく息を吐く。
不安はある。
けれど、それ以上に楽しみだった。
自分のやりたいことを見つけるための、一歩が始まろうとしていた。
「職業は転生です!」第19話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。毎週日曜日20時頃に更新しているので、また読んでいただけると嬉しいです。Xでも作品の告知などをしているので、もしよければフォローお願いします。
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