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15 小さな装飾品

素材には価値がある。

希少な鉱石。 珍しい魔物の素材。 手に入りにくい道具。

けれど、その価値を決めるのは素材だけではない。

誰の手に渡るのか。 それもまた、大切なことなのだと思う。

―世界を旅する少女の物語―

次の日。

ライラのアトリエには、朝から金属音が響いていた。

アトリエの机には昨日採取した風晶石が並んでいる。

ノエルは工具を片手に魔道具を組み立てていた。

「んー……。」

小さく唸りながら回路を調整する。

風晶石を組み込み、魔力を流す。

淡い緑色の光が回路を走った。

しばらく様子を見てから、最後の部品を取り付ける。

「完成。」

温度調整器。

昨日採取した風晶石を使った注文品だ。

ノエルは完成品を棚へ置く。

そして視線を机の隅へ向けた。

そこには、小さな箱が置かれている。

中には昨日ダンジョンで見つけた星晶鉱。

淡い青白い光を放つレア素材だった。

「……。」

ノエルはしばらくそれを眺める。

そして何かを思いついたように工具を手に取った。


イリスは自室で本を読んでいた。

窓から差し込む光は暖かい。

ページをめくる音だけが静かに響く。

魔法文化の歴史。

ファキリス周辺の地理。

まだまだ知らないことばかりだった。

気づけば時間は過ぎていく。

昼になり、夕方になり。

その間、イリスは何度か一階から聞こえてくる金属音に耳を傾けていた。

ノエルは今日も何かを作っているらしい。

けれど、それ以上は気にしなかった。


夕方頃。

コンコン。

扉が軽くノックされた。

「はい。」

返事をすると、ノエルがドアを開けた。

「イリス、これ。」

そう言って、小さな箱を差し出す。

「……?」

イリスは首を傾げながら受け取った。

「開けてみて。」

言われるまま蓋を開く。

中を見た瞬間、イリスは目を見開いた。

「……綺麗。」

箱の中には銀色のネックレスが入っていた。

中心には加工された星晶鉱。

淡い青白い光が静かに揺れている。

「昨日の星晶鉱を加工してみた。」

ノエルが言う。

「昨日付き合ってもらったお礼。」

さらっとした口調だった。

まるで余った材料でも渡すような言い方だ。

「でも、こんな貴重なもの……。」

「そのまま置いといても使わないし。」

軽い返事だった。

実際には、使い道がないわけではない。

星晶鉱は希少な素材だ。

売ってもいいし、保管しておいてもいい。

けれど、箱の中で眠らせておくくらいなら、形にした方がいいと思った。

それだけだった。

イリスは再びネックレスへ視線を落とす。

「それに。」

ノエルが続ける。

「星晶鉱には持ち主を守る性質があるんだ。」

「守る?」

「うん。」

ノエルは頷く。

「持ち主に危険が迫った時、結界を張る。」

イリスは目を瞬かせた。

「結界……。」

「まだ詳しい発動条件はわかってないから運まかせでもあるけど。」

「そんなものを私が持っていていいんですか?」

「いいよ。」

ノエルは迷いなく答えた。

「イリスが持ってる方が役に立つし。」

イリスはしばらくネックレスを見つめる。

そして。

「……ありがとうございます。」

小さく頭を下げる。

ノエルは少し笑った。

「どういたしまして。」

それだけ言うと、いつもの調子で部屋を出ていく。

扉が静かに閉まった。

部屋には再び静寂が戻る。

イリスはネックレスをそっと取り出した。

窓の外では夕日が沈み始めている。

その光を受けて、星晶鉱は静かに輝いていた。

イリスはそれを胸元へ当てる。

不思議と安心する気がした。

それが星晶鉱の力なのか。

それとも別の理由なのか。

イリスにはまだ分からなかった。

ただ一つ分かるのは――

この贈り物が、とても嬉しかったということだけだった。

「職業は転生です!」第15話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。たまにアクセサリーを作ったりするのですが、そのせいか今回の星晶鉱のネックレスも「どんなデザインにしようかな」と色々考えてしまいました。ただ、頭の中にはイメージがあっても、それを小説だけで表現するのはなかなか難しいですね。毎週日曜日20時頃に更新しているので、また読んでいただけると嬉しいです。Xでも作品の告知などをしているので、もしよければフォローお願いします。

https://x.com/yoizuki_nvl

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