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第4話  星マークのTシャツ


 マイケルが持ってきた袋を、

 俺は最初から警戒していた。


「ギフト!」


 明るい声と一緒に、

 テーブルの上へ置かれる。


 嫌な予感は、だいたい当たる。


 袋の中から出てきたのは、

 Tシャツだった。


 青地に、胸の中央に星のマーク。


 ――マイケルが今日着ているものと同じだ。


「お揃い!」


 即答。


 百合が目を丸くする。


「……私も?」


「もちろん!」


 白地のTシャツが出てくる。

 星の位置は、同じ。


 俺の中で、

 過去の場面が重なった。


「似てるね」

「双子だね」


 そのあとに続く言葉を、

 俺は知っている。


 どちらかが本命で、

 どちらかが代わりになる。


 百合は、

 それを一番嫌がる。


「……俺のは?」


 聞きたくなかったが、

 聞かずにいられなかった。


 マイケルは、

 迷いなくもう一枚出す。


 黒地。


「ケンジも!」


 声は明るい。


 百合が俺を見る。


 ほんの一瞬、

 戸惑う目。


 ――やっぱり、だめだ。


「百合」


 俺は、静かに言った。


「それ、今は着なくていい」


 百合は少し驚いた顔をしたが、

 すぐにうなずいた。


「……うん」


 理由を聞かれなかったのが、

 助かった。


 俺が受け取る。


「……ありがとう」


 百合に着せる前提に、

 させたくなかった。


 “代わり”になる空気を、

 作りたくなかった。


 その日のうちに、

 俺はTシャツを着た。


 ただし、

 上からシャツを羽織る。


 ボタンは留めない。


 星が、

 ぎりぎり見える位置。


「おお!」


 マイケルが声を上げる。


「グレイトゥー!」


 何がいいのかは、

 説明されない。


 百合が横から言う。


「兄さん、似合ってる」


 その言い方が、

 「似ている」じゃないことに、

 少しだけ安心する。


 マイケルの視線が、

 俺の髪に向く。


 耳を隠しているのは、

 すぐにわかる距離だ。


「耳、隠してる?」


 直球だった。


 一瞬、

 喉が詰まる。


「……まあな」


「ケンジの耳、いい」


 百合の方を見ない。


 比較もしない。


 その一点だけで、

 場の空気が変わる。


 百合が、

 少しだけ肩の力を抜いたのが、

 わかった。


 その日は、

 それ以上、服の話は出なかった。


 マイケルが帰ったあと、

 百合がぽつりと言う。


「……兄さん」


「ん?」


「ありがとう」


 何に対しての礼か、

 聞かなかった。


 聞かなくても、

 わかったからだ。


 風呂場で、

 シャツを脱ぐ。


 星が、

 胸の中央にある。


 鏡を見るのを、

 やめる。


 “似ている”と言われない位置に、

 自分を置いた。


 百合を、

 “代わり”にしないために。


 それが、

 俺にできる最善だと思っていた。


 この距離で、

 このまま。


 少なくとも、

 今は。


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