第14話 外では、しない
外に出ようと言ったのは、マイケルだった。
「今日は、デート」
あっさり言う。
「……デート、か」
「うん。デート」
確認するように、もう一度。
否定しなかった俺を見て、
マイケルは満足そうだった。
近所の通りを歩く。
人通りはそこそこある。
俺は、マイケルの半歩前を歩いた。
横には並ばない。
それが、無意識の距離だ。
「ケンジ」
名前を呼ばれる。
「外だと、
ちょっと固い」
指摘は正確だ。
「……外では」
俺は歩きながら言う。
「手、つながない」
「うん」
即答。
否定も驚きもない。
「ハグもしない」
「OK」
あまりにあっさりしていて、
逆に拍子抜けする。
「……いいのか」
「もちろん」
マイケルは、少し笑う。
「ケンジが、
外は嫌なら」
そこで言葉を切る。
「外じゃなかったら、
OKって意味でしょ?」
図星だった。
俺は、
少し間を置いて答える。
「……ああ」
マイケルの表情が、
一気に明るくなる。
「グレイトゥー!」
正直だ。
「……それ、
すごく嬉しい」
声が低い。
静かな本音だ。
帰り道。
建物の影に入る。
人が少ない。
でも、
俺は歩く速度を変えない。
触れない選択を、
続ける。
玄関前に着く。
鍵を出す。
マイケルが、
立ち止まる。
「じゃあ」
少し間を置いて。
「次は」
にやっと笑う。
「ボクの家で、
デート」
即断だった。
「……お前」
「外じゃなかったら、
OKなんでしょ?」
さっきの言葉を、
そのまま返される。
俺は、
否定しなかった。
「……考えとく」
そう言うと、
マイケルは満足そうにうなずく。
「OK」
「ニンジャは、
作戦立てる時間が必要」
真顔だ。
思わず、
息を吐く。
「……忍者、便利だな」
「Very」
即答だった。
ドアを開ける。
中に入る前に、
マイケルが言う。
「今日は、
ちゃんとデートだった」
「ああ」
それは、
否定しない。
触れていない。
でも、
ちゃんと一緒だった。
外では、しない。
その代わり、
次がある。
それが、
今の俺たちの進み方だった。




