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契約の大剣  作者: ハま松
序章 胎動編

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8 報告


〈お知らせ〉

7話の内容を少し変更したため、2026年1月28日以前に7話を閲覧してくださった方はお手数ですが、もう一度7話を読んでいただけると幸いです。

大変申し訳ございませんでした。



〈本編〉



 救援部隊が来てから半日がたった。


既に日は沈み、至る所が破壊されているため街中は暗い。

私も三人の遺体を他の慰霊者を祀る所に移動させた後は引き続き都市の生存者の捜索を続けた。


やはりラナレイの言った通り地上には生きている人々はいなかった。しかし、地下にはそれなりの市民が見つかり、現在は追加できた救援部隊のもとで保護されている。


「エリナリーゼ君。少しいいか?」


声の主へ振り向くとグラウスがいた。

おそらく生存者の捜索が一区切りついたのだろう。


「グラウスさん。救援活動の方はいいのですか?」


「ああ。この後も引き続き救助活動は続けるが今はひとまず君にも話をしておきたいと思ってな」


そうしてグラウスは私に都市の現状を伝える。


現状都市内に竜や混乱に乗じて侵入した魔物はいないということ。

生存者は都市の約4割、都市の住民がほとんどだったが一部の冒険者や行商人もいたようだ。


竜による襲撃時に城主は即座にギルドと協力して冒険者を筆頭に市民の地下への避難を行ったらしい。

地下への入り口はそれなりの数が都市内にあったお陰で市民が助かったらしい。

ガイスや一部の冒険者、都市の衛兵は避難する人々を守るために戦い命を落としたのだという。


(三人も地下に逃げていれば...)


彼らは冒険者であって国の騎士や街の兵士ではない。本来は自分の命を優先してもいいはずだったのだ。

しかし彼らは冒険者であったが誰かを見捨てるほどまで心が冷えきった性分でもない。他者の命も大切にできた優しい人達だった。


仲間のおかげで助かった人達も多くいたはずなのだ。

あれほど大きな竜もいた中で生きている人々がいたのは地下施設の存在だけでなく、竜に対して衛兵や他の冒険者と共に私の仲間対抗したからこそだ。

仲間の選択をその場にいなかった私が責める権利など最初から持ち合わせていないのだ。


「幾つか質問させてくれ。ハルファス内では地下に避難していたもの達以外の生存者はいなかった。どうして君は無事だったんだ?」


「私は元々ハルファスに数日前から仲間と共にいましたが、昨日はレスランに以前から頼んでいた杖を取りに行っていたんです。昨日はレスランに滞在してたので今日ハルファスに戻ってきました。

ですが、私が戻ってきた時には都市は竜に襲われていました」


「なるほど。確かにレスランは有名な杖職人がいたな。ではあの都市の半分()()()土地について何か知っていることはあるか」


「いえ、私は戻ってすぐに竜に襲われて迎撃にあたりました。その後で仲間を探すために都市を走りまわっている時に私もハルファスが半分なくなっていることに気づきました」


「そうか...あの土地は地下までなくなっているのを確認した。そこにいた人々の生存は絶望的だ。消えた都市の部分は市民の住む家が多くあったと聞く。当然地下に避難した住民の数もな....」


険しい表情でグラウスはそう告げる。

こちらも話の中でいくつか気になったことを尋ねる。


「やっぱりな都市の半分が消えたのは竜の攻撃によるものなんでしょうか?」


「わからない。竜の被害で街が破壊されることは珍しくないが、あれほどの被害は見るのも聞くのも初めてだ。

竜の息吹(ブレス)によるものだとしても魔力の痕跡が残っているのが普通だ。しかし、消えた土地からはその魔力が一切感じられない。

生き残った人々にも話を聞いたが何があったかまではわからなかった。あれほどの攻撃があったのなら大きな音も聴こえるのかと思ったのだが、どうやらその音すら聞こえてはいなかったらしい。

それに加えて、なぜ()()()()()()()()()()しか消えていないのか。竜の息吹ではあり得ない現象だ」


グラウスの話ぶりからするに幾度か竜との戦闘か、あるいはそれを見たことがあるのだとわかる。

その彼ですらあんな惨劇は初めてだというのだから何かとんでもないことが起きているらしい。


「今王都にいる魔法使い達に調査を頼んでハルファスに来てもらっている。彼らの調査が始まるまでは詳しいことはわからないのが現状だ」


「飛び去っていった竜の方はどうなっていますか?」


「それが...こちらも不思議なのだが、ハルファス北東方面に飛んで行った黒竜についてだが、確かに冒険者や行商人達から竜を見たという証言は幾つか取れたのだが、ハルファス北にある都市リーランより先では確認されていないらしい」


「竜が見当たらないということですか!?」


慌てて身を乗り出す。

あんなものが討伐されず行方不明になれば

それこそ第二、第三の被害が出るどころか下手をすればアスラン王国そのものの危機だ。

だがグラウスは冷静に話を続ける。


「残念ながら、な。今も竜の情報は国内全土で引き続き調査中だ。今の所は他の都市や小さな村での被害などは確認されていないのが不幸中の幸いだな。

だが、それもいつまで続くかはわからない」


困ったものだ...とグラウスも頭を悩ませている。


「ともかく、これからの竜への対策は王都からの指示を待つしかない。それまでは手の打ちようがない。悔しいことにな」


「そうですか...」


竜が野放しになっている王国はどうなってしまうのか。国内の民はこれからその不安に晒され続けるかもしない。


そんな不安が顔に出ていたのか、グラウスは笑って私に声をかける。


「安心しろ、とは口が避けても言える状況ではない。しかし、すぐに竜を見つけだして俺たち聖騎士団が総力を挙げて討伐することを約束しよう」


落ち着いた、それでいて力強い言葉だった。

私の不安を取り除くために彼は騎士としての姿を私に見せてくれた。その心遣いはもういない仲間と同じで、どこか安心できる言葉だった。


「ありがとうございます。ですが、私も冒険者です。

仲間の命を奪われたものとして竜を倒します」


そうだ。私は冒険者なんだ。

ただ守られるだけの市民ではない。


一度はあの黒竜を見ただけで戦意を失ってしまった身だが、今は失った仲間のためにも、私はあの竜を倒さなければならないのだ。


「...そうか。けれど無茶だけはするなよ。冒険者も騎士団も一人でどうしようもないことの方が多いんだからな」


重たい言葉だった。

私は既に頼れる仲間はいない。これからはより一層気を引き締めていかなければ竜を倒す前に命を落としかねない。


「肝に命じます」


「それで、エリナリーゼ君。これから君はどうする?」


グラウスに尋ねられて、少し考えてから答える。


「私は竜の捜索をしようと思います。それと冒険者として活動するためにも新しいパーティにでも入ろうかと思います」



「そうか、俺たちは暫くハルファス市民の復興のために残る。縁があればまた会おう」


そう言って再び救援活動に向かっていく。


「待ってください。そういえば、どうして私のことを知っていたんですか?

有名な冒険者ならそれこそもっと多くいますよね?」


どうして守護聖騎士レベル人物が私のことを知っていたのか気になる。


「ああ、そのことか。以前同僚の魔法使いから君のことを聞いたんだ。

よほど興味を持っていたのか任務を放り投げて君に接触しようと王都を抜け出そうとしていてね。それを止めるために殺し合いに発展したから記憶に残っていたんだろう」


「そ、そうですか...」


しれっと凄いことを言っていたがとりあえず無視しておこう。

しかし、私のことを興味を持つ王都の魔法使いがいるということはやはり私の魔力は珍しいらしい。


「そうだ、俺からも最後に一ついいか?」


「なんでしょう?」


なにか他に聞きたいことでもあったのか。

私に答えられることなんてもうないと思うが...


「都市の中に一体だけ赤い竜の死体があったが何か知っているか?」


吸い込んだ息を、吐くタイミング一瞬を見失う。

別に隠すことではないかもしれないが、一応命の恩人の頼みなのでラナレイのことは言わないでおく。


「わかりません。私も赤い竜を見ましたが既に誰かに倒された後でした。

もしかしたらた私の仲間が倒したのか、もしれません。仲間のうち一人は個人でBランクに到達した冒険者でしたから。」


「.....そうか、それなら納得だ。

Bランクの冒険者なら赤竜も倒せるだろうしな」


よかった。納得してくれたようだ。


「では今度こそ。俺に連絡したいことが騎士団にこれを見せるといい。そうすれば門前払いされることは無いと思う」


そう言ってかは小さな黄色い石板のようなものを渡された。


「これは?」


「これは守護聖騎士が信頼した者に与える証のようなものだ。これを見せればどの都市の騎士団施設内からでも俺に直接魔力鳩を飛ばしてくれるだろう。

そうでもしないと地方都市の騎士団から俺たち(守護聖騎士)の連絡は幾つか工程を挟まないといけないからな。それでは時間が掛かる」


「そんな凄いものを私なんかに渡していいんですか!?」


「ああ、その若さで仲間を失った後でも冷静に話せる人間は稀だからな。君なら正しい情報を伝えてくれると期待している。

それに、竜を倒す冒険者としての実力もある。

今から将来が楽しみだ。」


「あ、ありがとうございます」


気にするな、と片手を挙げて今度こそ本当に去って行った。

守護聖騎士にあれ程のことを言われると少し気恥ずかしいが、私を育ててくれた仲間の影響だろう。

もう一度仲間達に感謝する。


「私も行かなきゃ...」


仲間の仇をとるためにあの竜を倒す。

それが私が冒険者として目指す新たな目標だ。

そして、それを為すには...


そうして、私もラナレイのいる森に向けて出発した。







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