14 冒険者入門
リーランは以前は武器の制作都市として栄えていた都市だが、3年ほど前にだ未だに完全攻略ができていない迷宮が現れたことで、冒険者達が多く集まり、迷宮からのアイテムやモンスターの素材などの交易からここ数年で更に発展した都市だ。
リーランへ到着してから私達は冒険者ギルドへと向かった。
ギルドで行うのはラナレイの冒険者登録と〈悪酒〉の仲間達の死亡報告だ。
いつどこで死んでもおかしくない冒険者という職業の性質上、素材換金の履歴や依頼の達成報告が一定期間行われなければ生死不明という形になるが、今回はハルファスに遺体があり、あちらのギルドからも情報が後々入ってくるはずなので、正確な報告になる。
〈悪酒〉は解散という形になり、私とラナレイは新しいパーティを結成することになる。
「パーティを作るためにも黒竜討伐に参加するためにも暫くは私とラナレイの冒険者ランクが足りないから暫くは冒険者ランクを上げることに専念しようか」
グラウスさんは一緒に戦おうと言ってくれたけど、ランクが低すぎて無理矢理止められる可能性も出てきてしまうからな。
「冒険者ランク?パーティはすぐには組めないの?」
可愛らしく首を傾げるラナレイ。
仕方ない、なにもわからない迷える新人冒険者になったラナレイに先輩冒険者としていろいろ教えてあげよう。
「そうだね、まず冒険者ランクっていうのは…」
「冒険者ランクは受けられるクエストの難易度を示すもの、けれどパーティを組めば自分のランクより高いランクのクエストを受けることができて、早くランクを上げる事もできるのよ」
背後からの声に私の説明は持っていかれてしまった。
「あなた誰?」
ラナレイが首を傾げて声の主に尋ねる。
私も振り返って見ると身長が2mはあるギルドの制服を身につけた屈強な筋肉が目立つ男がそこにはいた。
「いきなりごめんなさい新人冒険者ちゃんと最高の魔力の持ち主ちゃん。
私はリーラン冒険者ギルドの副ギルド長のアンサールよ」
「……」
その見た目に思わず固まってしまた。
「はっ…!えっと代わりに説明してくださってありがとうございます?」
なぜか感謝を伝えてしまった。
ダメだ。まだ目の前の人物についての情報が完結していない。
ギルドの制服は着ているが胸元は開いていて逞しい筋肉が露出しており、左右で緑と紫の二色のツンツンした髪型に、細長い突起?が2本生えている。
そしてなぜか給仕のようなエプロンをつけている。
もう一度冷静にアンサールを見る。
うん、やっぱりなんか個性的な人だ。
「驚かせてごめんなさい。私の姿を見ると皆んなびっくりするものね。でもいいのよ。もっと私を見てっ!感じてっ!そうすればそのうち慣れるようになるわっ!」
慣れるかなぁ?リーランには他にもこういった人がいるのかなぁ?
「初めてまして、私はラナレイ、よろしく」
ラナレイ凄い。全然同じていない。私は未だに驚いている。
「えっと、それでギルドの人が何か用ですか?」
どうして急にギルドの人間が、しかも副ギルド長が声をかけて来たのか疑問のままだ。
「そうだったわ!今他の職員の子から新人冒険者の登録用紙を受け取ったから研修のために呼びに来たの」
「研修?」
ラナレイはまたも首を傾げる。
「そういえばそんなのもあったな」
新人冒険者に冒険者としての基礎的な知識、自分自身の適正や冒険者ギルドが定める禁止事項などを教えてくれる内容だったか。
場所によっては口頭説明だけで終わる所もあったが、ここ数年になって全てのギルドで徹底した基礎を叩き込むことが絶対になったとか聞いたな。
私は説明と魔法適正の検査を受けたくらいだったけど。
「そっ、新しく冒険者になった子に〈冒険者〉についてのいろんな事を教えることよ。それが新人研修。
私は副ギルド長だけど、それと同時に新人研修の担当も受け持っているのよ」
そうなのか。ここの研修内容がどんなものかは知らないが、この人が担当で大丈夫なのか?いや、流石に失礼だな。
きっとしっかりした事を教えてくれるだろう。たぶん....。
「会話に横から入ってしまったけど、このまま説明しちゃってもいいかしら?」
「は、はい。お願いします」
「お願いします」
続きの説明をしてくれるらしく、私もラナレイも同意する。
「冒険者ランクはさっき言った通り、冒険者にランクにを付けて、そのランクに応じた依頼受けさせる制度のこと。冒険者が受ける依頼に制限をかけて、無茶な依頼を受けて命を落とすのを防止するためのね。
冒険者ランクは「実戦の中で、どの程度の強さの魔物を一人で相手にできるか」の指標として機能するわ。
ランクはGからSまであって、Sランクが一番高いランクでGが一番下のランクよ。
GランクからEランクへの上げ方はギルドの課している昇級試験をクリアすることで上がっていくの。
Eランクは冒険者として最低限の強さを持っている事を認められたランクね。
Eランク以下はほとんどの場合、都市外での依頼を受けることはできないわ。だけど、昇級試験はギルド内の安全な場所で何度もチャレンジできるから命の心配はないから安心してね。
だけどDから上は話は別。
それぞれのランクに分けられた魔物の魔石をギルドに提示することでランクの昇級が認められる。
こっちはギルドの外で行う実戦だから当然命の保証はない。
ランクが高い冒険者ほど強い冒険者と覚えておけばいいわ。これが冒険者ランクの仕組みよ。だいたい理解できたかしら?
「うん、なんとなく。だけどパーティはすぐには組めないのはどうして?」
「それは簡単。ギルドの定めるパーティの結成条件は
Eランク以上の冒険者が二人以上いる場合だからよ。
最低限の強さを持たないと仮にパーティでもすぐに命を落とすかもしれないし、それを庇おうとする仲間の命も危険になってしまうからよ。
パーティを組む理由は色々あるけれど、だいたいは個の冒険者ランクだけでは測れない強さを持つ事や安全性の向上、ランクの低い冒険者が自分よりランクの高い冒険者からより多くのことを学べるようにするためにパーティを結成・加入するわ。
パーティにDランク以下の冒険者がいる場合、そのパーティの中で一番ランクの高い人の一つ下の依頼を受けることができるわ。
例えば、Bランク一人、Dランク一人、Eランク二人でパーティを組んだ場合は最高Cランクまでの依頼を受けることができる。
パーティ全員がC以上の場合は一番ランクの高い人の依頼まで受けることができるようになるわ。
これがパーティの仕組みね」
「なるほど....あれ?それだとパーティを組んで、一番ランクの高い人が強い魔物を倒して、その魔石をランクの低い人に渡させばすぐにランクを上がれる?」
「確かにそれならすぐにランクは上がる。
最初にも説明したけどパーティを組めばランクは上げやすい。
けれど他の人の力だけをかりている者は仮にランクが上がったとしても実力が伴っていないからすぐに死んでしまうことがほとんどよ。
あくまで自分の力を伸ばすためにパーティという制度が効率的であるだけで、それを怠ってしまっては意味が無くなってしまうわ。
だから絶対にやっちゃダメよ?
これはラナレイちゃんのためでもあるんだからね?」
そう言ってアンサールはもの凄い剣幕でラナレイに警告した。
そうだ、仮にランクを上げても実力が伴わなければ何の意味もない。
それに、ラナレイはそんな事をしなくてもすぐにランクを上がれる力があるから大丈夫だろう。
「わかった。絶対しない」
「フフ、いい子ねぇ。私、素直な子は嫌いじゃないわ!」
見た目からは想像できない口調で話すアンサールだが、言っていることは実に現実的で真剣な内容だ。しっかりとしたことを教えてくれる人そうで安心した。
「さて、それじゃあ早速ラナレイちゃんの今の力を試させてもらおうかしら?
もし今の時点で十分な力があると認められるなら今日中にでもEランクへ昇級よぉ!」
「うん、頑張る」
そう言ってアンサールによるラナレイの研修もとい腕試しが始まった。
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