13 リーランへいざ出発!
「それじゃあ早速これからの私たち二人のパーティの方針を発表します」
「了解したよ主人様」
「だからご主人様呼びは...まぁいいや。
とりあえず、これから私たちはハルファス北に飛んで行った黒竜討伐を目標とするよ。
そのために。まずは次の都市で情報を集める。
今の段階でわかっていることは竜はここから二つ先の都市では目撃情報がない。けどあの大きさの竜なら必ず手がかりは見つかる。はず....
それに、私達が移動している間に新しい情報も得られるかもしれないからね」
「わかった。とりあえず北の都市に向かうってこと?」
「正解。まずはリーランに向かう。ここから馬で三日くらいかな。行商人の積荷にでも乗せてもらうか、途中の村で馬を買えたらそれで向かうよ」
「わかった。でもあの竜見つかるかな?」
「....わからない。それでも、少しの手がかりがあるかもしれないリーランに行くよ。仮になんの情報がなくても後のことはそれから考えよう」
グラウスさんはリーランより先は竜の目撃情報はないと言っていた。
おそらく都市間で魔力鳩のやり取りを行った上での情報だろう。
今は唯一の目撃情報があるリーランへ向かい、黒竜の手がかりを見つけよう。全てはそれからだ。
「とりあえず、朝になるまで休んでそれから出発しようか。私が先に周囲を見張っているからラナレイは寝ていて。交代のタイミングで起こすけど、それでいい?
「ん、問題なし。了解したご主人様」
もうご主人様呼び治らないかもな…
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朝それなりにに早く起きてから軽く朝食をとってリーランへと出発した。
行商人に出会うか途中の村で馬を買えれば移動手段は確保できる。路銀も暫くは問題ないだろう。
「そういえばラナレイ、あなたどこから来たの?強い冒険者ならそれなりに名前は知っているけど、あなたの名前は聞いたことがなかったから」
あれほどの強さで今まで目立っていないはずがない。必ず名前を聞く機会があったはずだがラナレイの名前は耳にしたことがなかった気がする。最近冒険者になった新人なのか?
「私の冒険者じゃないよ?」
「え?」
「私は人助けをしながら旅をしてきただけだよ。冒険者ていうのも最近知ったしね」
「そうなの!?」
驚いた。どおりで名前を聞いたことがないはずだ。
そもそも冒険者ですらなかったとは。
「それならどこか特別な場所で鍛えていたとか?あなた凄く強いし」
すると、ラナレイは困ったような顔をしている
「もしかして、あんまり聞かない方がいい?大丈夫、無理にとは言わないから」
「いや、違うのご主人様。私、わからないの」
「わからないって?」
「私記憶がないの」
「…え?」
記憶が、ない?
「目が覚めたのが今から大体一ヶ月前くらい。
気がついたらその場に立っていて、持っていたのはこの剣だけ。
自分の名前も思い出せなかったけど、服に入っていた袋があって、そこに〈ラナレイ〉と書いてあったから、直感で私の名前だと思ったの」
そうしてラナレイは服にあるポッケから小さな袋を取り出す。するとそこには、確かにラナレイと書いてある。
「目が覚めてからは目の前にあったガランドールっていう場所に行ったの」
「ガランドール?もしかしてあの消えたガランドール大樹があった?」
大樹が消えた日に豪華な剣を持った女が来たと話していた冒険者達がいたが、その女の正体がまさかラナレイなのか?
時期と場所、それに特徴が一致しているのでほぼ間違い無さそうだが...
「大樹?…あぁ、そう言えばそんなこと言ってた気がする。私が来た方向と別に大きな木が消えたって聞いたような…」
話から察するに偶然大樹が消えた日に居合わせただけなのか。
「ちなみに、お腹が空いていたのでご飯を食べたはいいものの、その時私はお金を持っていなかったから捕まりそうにになって....」
あ、間違いない。大樹が消えた日に現れた豪華そうな剣を持った女とはラナレイのことだろう。
食い逃げしたと言っていたし。
「それで逃げ回っているうちに緑色の大きな帽子を被った男の人に助けてもらって、その人が代わりにお金を払ってくれた」
「よかったね…」
食い逃げ犯の代金を代わりに払ってあげるなんて親切な人もいるものだ。
「それから、その人に色々なことを教えてらった。
今いる場所の名前やアスラン王国のこと、大陸のこと、あと三大厄災?というのも教えてもらった」
「三大厄災のことまで教えてもらったんだね」
三大厄災
帝国の白竜、アスランの大猪、エルフの里の毒蛇
かつてそれぞれの地で封印された世界を脅かす三つの巨大な災い。
魔物を発生させた原因とされており、この世界を作った女神の体の一部を取り込んだと言われている原初の魔物。
帝国は北、エルフの里は南、そしてアスラン王国では東に向かう程この3体の封印地に近くなるため、徘徊している魔物が凶悪になっていくと言われている。
「ちなみに、魔力が減る体質のことを教えてくれたのもその人なの」
「そうなの?名前はなんでいう人?」
もしかしたら有名な魔法使いかもしれない。
しかし、ラナレイは首を横に振る。
「わからない。『自分はただの旅人さ!覚えるほどの名前なんて忘れてしまったからね!』て言っていた」
「そ、そうなんだ…」
随分と不思議な人らしい。
「その旅人さん曰く、
『君はとても強いから人を助ける旅をオススメする。それでお金を稼いで魔力ポーションを買うといい。
その旅の思い出はきっと、とてもかけがえのないものになる。
それがきっと、新しい君を作るパーツになる』 と言っていた。」
「そうなんだ」
なんとも旅人らしい言葉だ。
「因みに、
『どうしても困ったら他の人の口から魔力を直接貰うのも手段だよ!できれば女の人にしておくといい。見栄えがなんだか美しいからね!』
とも言っていた」
「へぇ〜!そうなんだ〜!」
よし、緑の大きな帽子を被った男だな?もし出会ったら私のファーストキスを奪った原因として一発かましてやろう。
「ち、ちなみに他の人からも直接魔力を貰ったことがあるの?」
「?ご主人様が初めてだよ?」
「そ、そう」
よかった。なんだかよくわからないが私だけ一方的に初めてだった訳ではないようなのでよかった。
「わからないことだらけだけど、旅をしていて良かったよ。そのお陰でご主人様と出会えたから。
だからもう一度会えたらぜひ御礼を言いたい」
むぅ…いい笑顔でそう言われると許してやらないこともないか…
「でもいいの?元の記憶がないと不安になったりしない?記憶を取り戻したいとかはないの?」
記憶がない、という状態はどんなものかはわからないが、大きな不安が常にあるのではないか心配になる
「全然大丈夫。自分の元の記憶に興味はある。それでも別に記憶を取り戻したいとかは思ってないかな。それに…」
「それに?」
「この剣さえあれば私は大丈夫だっていう気持ちになるの。だから記憶が無いなんて不安もどうでもよく感じるんだ」
優しい笑みを浮かべながら、ラナレイは剣を撫でる。
記憶がないため、どんな背景があったかは思い出せないだろうが、きっと体がその剣の思い出を忘れていないのだろう。
「ちなみに、今はご主人の魔力も一緒。この契約の証からくる魔力があるからより心強い」
「そ、そう…ありがとう」
なんだか少し恥ずかしい。
だが、出会ったのは昨日なのにこう言ってくれるのは仲間としてはありがたいな。
今はまだ出会ったばかりで二人の思いでや経験は無いにも等しいが、これから一緒にそれを作っていこう。
私とラナレイの二人の旅の記憶を
話ながら歩いていると、行商人達が移動しようとしているのが見えた。
「行商人だ。今から出発するみたいだから乗せてもらえるか交渉にいこうか。ダメだったらまた歩きだけど」
「わかった。けど歩くのは大変だから馬だけは貰っていこう」
「ダメに決まってるでしょ!?」
なんだか冗談に聞こえないから恐ろしい。
たぶん止めないと普通に馬だけは奪ってきそうなので注意しておこう。
それから交渉は成立し、護衛という形で乗せてもらうことに成功した。
そして三日後、魔物に襲われることも特になく、リーランへと到着した。




