〈第27話〉『剣聖の資質』
クロフォード学園―――1年A組寮・217号室 【決闘】当日
「……」
【決闘】当日を迎えた朝、前日から戦略を考えながら床に就いていたエルザは、いつの間にか眠れない朝を迎え、日が差し込む自室から空を眺めていた。
窓から視線を外し、ベッドの近くにある花瓶の添えられているインテリアの小さい丸テーブルに目を向ける。
そのテーブルの上にはきれいに選択されぴっちりと畳まれた純白の布があった。
それは数日前にティファがエルザの手のひらを治療した際に”ティファのリボン”だった。
エルザはティファのリボンを大切そうに手に取り胸に抱く。
「大丈夫……。大丈夫……。私は1人じゃないあの子も一緒にいてくれる……。たとえ負けたとしても……」
エルザはブツブツと手を震えさせながら不安を払拭するように呟く。
(この10日間、厳密には7日間できることはやった……。あとはその"結果"をお兄様相手に見せるだけ……!)
エルザは先程までとは目つきを変え、壁に立て掛けてある両手杖に目を向けティファのリボンを目の付く箇所へ結わう。
「行くわよ!エルザ・クロフォード!」
覚悟を決めたエルザは寮を出て闘技場に向かう。
クロフォード学園―――学生食堂・教官喫食席
「ふぅ……」
1年剣術科教官のオーガストが教官用の喫食席で朝食後のコーヒーを啜りながら頭を抱え、大きなため息をついていた。
「また、豪い【決闘】の審判になりましたね。今年は血気盛んな生徒がいるようでご愁傷様です。新入生が入ってこれだけ短期間で2回も【決闘】が行われるのも珍しいんじゃないですか?」
声を掛けられ顔を上げると、3年剣術科のハーマンが憐れむような表情で立っていた。
「ハーマンか……。できることなら代わってくれ」
「そうして差し上げたいのは山々ですが。【決闘】”規定”がありますので。相席いいですか?」
オーガストは返事の代わりに空いている対面の席を手で刺し占め、無言で同席を了承され対面の席にハーマンが一礼して腰を降ろす。
【決闘】規定(教官側)
①【決闘】の審判選出は、申請側と受託手側の教官での2名態勢で行うこと。
・同学年、同科の生徒同士の【決闘】の場合、原則申請側の教官1名と他学年の教官から1名選抜し行うこと。
・【2組決闘】申請側の教官が行うこと。
今回の場合の【2組決闘】特例であるため剣術科側の審判はオーガスト(申請:ティファニア・アッシュフィールド→受託:レオス・エリオット)
3年魔術科教官(申請:クラウス・クロフォード→受託:エルスクロフォード)
となるためオーガストと3年魔術科教官の2名となる。
②目まぐるしく状況が変わる【決闘】において、何時いかなる時も、生徒側の【決闘クリスタル】の破壊の有無を確認するため、生徒側に手渡した【決闘クリスタル】と受けたダメージを”共有”することのできる【レゾナンス・クリスタル】を所持し厳正な勝敗を下すこと。
③【決闘】は王国内で神聖視されているため、出自・身分に関係なく公平な勝敗を判定すること。
④もし公平な判断を怠った審判は後日罰則とされ、聞き取りの後職務をはく奪される。
「この【決闘】次第では今年の”優秀”なツートップを失う可能性が高いですからね、先輩のお気持ちお察しします」
ハーマンはコーヒーを1啜りし、目を伏せる。
「そう…だな。全く残念だよ……」
オーガストは【決闘】後の結果を想像し、学園を去るティファとエルザの居なくなったことを思い浮かべる。
「やぁ、アルドリット君、リックウッド君、もしよければ相席よろしいかな?」
オーガストとハーマンが醸し出す雰囲気をかき消すように、クロフォード学園の学園長アレクシス・クロフォードの姿があり「いいかな?」と同席を毛入れてもらえるような仕草をする。
オーガストとハーマンは席から立ち上がり、一礼して同席了承の意を表す。
「あ、あぁ、すまない悪かった2人とも気にせず、さぁ座って」
急に現れた自らの存在に謝罪しながら、2人に着席するよう愛児する。




