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異世界剣聖記  作者: 深村美奈緒


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〈第26話〉『居場所を守るため』

 

 クロフォード学園―――魔術科修練所・夕刻【決闘】(デュエル)前日


 「【炎魔法】【炎球】(ファイア・ボール)!」

 エルザの周りを浮遊していた7つの光球が炎を帯びる。

 魔法の意識範囲を狭範囲(ミドルレンジ)からの魔法発動を行使するため、エルザは攻撃対象の100(メル)先にある訓練用ゴゥレムを十分に見据え初弾7発の【炎球】を真っ直ぐ撃ち放つ。

 7発の【炎球】が意識範囲から外れた頃合いに、再び7つの【炎球】を創造(クリエイト)し、両手杖(スタッフ)を振り間髪入れずその【炎球】もゴゥレムヘ撃ち放った。

 エルザは2弾目の【炎球】を放つと同時に、意識範囲を広範囲(ロングレンジ)に”範囲変更(レンジ・シフト)”するため、先行する初弾7発の【炎球】に意識を集中し再び制御下に置こうとする。

 その行為の理由とした、一度意識範囲を超えた術は途中で魔力供給を失い、目標に到達する前に霧散してしまう。

 それに加え、意識下から外れた魔法は攻撃目標への細かな追尾性も失ってしまう。


 「……」

 エルザは表情一つ変えずに意識領域を変えていく。

 領域を拡張する際。2弾目にはなった7発に、途中霧散しないように目標まで透徹できる最低限の魔力を追加し、意識を最先端を先行する火球にまで追いつかせる。

 だが、エルザの”意識(コンシャスネス・)拡張”(エクスパンション)が間に合わなかった初弾の数発がエルザからの追加の魔力供給が間に合わず霧散していく。

 残された数段はエルザの意識化に戻り、多種な軌道を描きごぅれむに着弾し爆炎を上げる。


 「ふぅ~……」

 (大分意識の切り替えはスムーズになってきたけど……、細かなところに雑さがある。霧散する【炎球】がその証拠)

 

 エルザは背後に御付きのドーラとは別の人物が加わっている気配を感じた。

 いつもだったら煩わしく思っていたその存在に、最近のエルザはほくそ笑み、その見守ってくれている温かさを背後に感じていた。



 「エルザの調子はどうじゃ?」

 アメリアとドーラが料理長約束した「【決闘】が終わるまでの期間遅くまで食堂を開放してもらう条件」である、夕食の片づけにアメリアが向かった

 アメリアと剣術科で別れうちはそっと魔術科の扉をくぐり2本の木剣を壁に立てかけ、自身も体の体重を壁に預け視線をエルザの背中に向けながらドーラに話しかける。


 「本人は何も言わないけど、順調そうよ。そんなことより、エルザはアンタのことを心配してたわよ。アメリアからは「問題なく」としか聞いてないし……」

 横目でうちに視線を送りながらドーラが訓練の進捗を聞いてくる。


 「ふふ~ん。まっ今は見せてはやれんな。本番に乞うご期待っちゅう奴じゃ」

 うちはバチッと片目を瞬間的に閉じてドーラに返事をした。

 

 「偉くもったいぶるじゃないか、まぁいいけどさ。下手こいてエルザの足手まといになるなよ」

 そうぶっきら棒に言ってドーラはエルザへ視線を戻す。


 「よし……」

 うちの言葉にドーラは小首をかしげる。

 

 「ちょっ!何する気!?」

 エルザが【炎球】を連射する中、立てかけていた木剣を手に持ち、訓練場に足を踏み入れるうちを見てドーラが止めようとする。

 ドーラの制止する声に反応したエルザが一瞬だけ視線を後方へ向ける。

 その刹那。

 うちは【紫電】【韋駄天】を発動させ訓練用ゴゥレムの前に立つ。

 

 「「なにしてるの!バカ!!」」

 唐突にゴゥレムの前に立つうちの行動にエルザとドーラが驚愕していた。

 うちはエルザとドーラの叱責を無視し、ゴゥレムの前へと疾走する。


 「【紫電】【高速二刀】(ファスト・ツーソード)【迅雷】(サンダー・クラップ)【漣】(れん)!」

 うちは己が神経を尖らせ意識を集中する。

 水面に葉が落ち波立つこと”漣”(さざなみ)の如く、その意識下で”波紋”を残す【炎球】のみを捉え叩き落とす。

 叩き落された【炎球】が爆煙を舞い上がらせうちの姿を覆い隠す。

 エルザは煙が晴れうちの姿が見えるまで両手杖を下し、【炎球】の連弾を固唾をのんで止める。

 

 「動きのない木偶人形相手も飽きたじゃろ?うちも最近は剣をあまり振ってなかったからなぁ……。のぅエル、あの日の【決闘】の続きをしようや!!」

 【炎球】の爆煙が晴れ始め、うちは右手の木剣の切っ先をエルザに向けそう宣言した。

 


 「”【決闘】の続き”……?」

 (あの時の撃ち合いをしよう……ってこと?)

 エルザはティファの宣言を聞き、【決闘】の勝敗を決めた場面を思い出す。


 「ふん……、いいわ!私もあの時の撃ち合いには納得していない!受けてみなさい!」

 エルザはそう言って7つの光球を発生させそこに炎属性の魔力を付与する。


 「そうこなくっちゃのぅ!勝負じゃ!エル!!」

 戦闘態勢に入ったエルザを視認して、ティファも両手の剣を構え直し、エルザの【炎球】を迎え撃つため【迅雷】【漣】の構えをとった。


 エルザは両手杖を1回転させ、初手の光球7つに炎を灯し【炎球】を放つ。

 追撃の攻撃を放つためエルザは再度両手杖を回転させ【炎球】連撃を開始した。


 (あの【迅雷】とかいう技……、私と【決闘】した時より練度と精密度が上がっている!)

 ティファはエルザ外としておとりの動作や、魔力供給が間に合わず寸前で霧散していく【炎球】には手を出さず、己に当たると思った【炎球】のみを打ち落としていた。


 (自分も技の精度を上げていっている……。そういいたいのね……。でもそうでなきゃ!!)

 この撃ち合い、ティファもエルザも手を休めることなく続いた……。


 ⚔数分後⚔


 「はぁ…はぁ…。粘りすぎじゃろ……」

 撃ち合いの結果はどちらに軍配が上がったともいえない、意地だけでどちらも引かず引き分けというような感じで終わり、うちとエルザはお互い息を切らせていた。

 うちは木剣を杖代わりにして、その場にへたり込んでいるエルザの元までフラフラと歩み寄り、エルザの隣に着くなり大の字になり仰向けで横たわり乱れた息を整える。

 

 「はぁ…はぁ…、先にけしかけてきたのはアンタでしょ……」

 エルザは息も絶え絶えに、横に仰向けで寝そべるティファに言葉をかける。


 「ふっ…ふふふ……、あははは!意地張りすぎでしょ、バカ」

 「ぷっ…あはは……、あははは!それはお前も同じじゃろ」

 うちとエルザは意地を張り合ってお互い、息を切らせてしまっていること笑いあう。


 「……」

 「……」

 ひとしきり笑いあった後、うちとエルザの間に沈黙が漂う。


 「ねぇ、なんで聞かないのよ……?」

 沈黙を破り、エルザがうちに質問してくる。


 「何を?」

 うちは(あの事か……?)と敢えてその質問が分からない体を装い質問し返す。


 「……。何時だったか私が色なしと判定されていたこと、ドーラから聞いているんでしょ?」

 先程までうちと笑いあっていたエルザが、ドーラを一瞥し表情を曇らせ言いにくそうに質問をし直す。


 「聞いたよ。でも、あれはドーラが口を滑らした事じゃったみたいじゃし、お前が話したくなかったらわざわざ話さんでえぇんじゃないか?」

 「……。聞いてくれ、とは言わないわ。ここからは私の独り言、過去語りだから……」

 そう言ってエルザは一度深呼吸をし、自身の過去をゆっくりと話し始めた。


 エルザの話だと、前当主のエリオット・クロフォードの実子は、兄クラウスと妹エルザの2人。

 ラングリッサ王国に属している爵家に生まれた子は7歳を迎えると魔力測定の儀が行われ、より優秀な魔力を持ったものが家名を受け継ぐ事になる。

 魔力の等級は虹の色と各公爵家に与えられた色に(なぞら)えてあり、上位から赤・橙・黄・緑・青・紫・白となっている。

 大抵爵家の子は緑か青といった中間の魔力帯から始まり、在学中に己の魔力を高めより高位の色へと変えてくとが通例で普通だとされるが、クラウスは齢7歳で【測定の(メジャーメント・)腕輪】(バングル)の宝珠を最高位の赤色に染めた。

 一方、妹のエルザは【測定の腕輪】に色を灯すことのできない色なしと判定された。

 そこからエルザは、父親と使用人達からも公爵家の実子とは思えない扱いを受け、父エリオットや屋敷で働く使用人達から認められるべく、公爵家に相応しい【測定の腕輪】の色に、もっと言えば兄クラウスに追いつくべく血のにじむ努力を続け10歳になるころには【測定の腕輪】を赤に染めることができた。

 「……。そんな努力をしてきたのを忘れて、色なしで入学したシンシアをいじめちょったわけか……」

 うちは仰向けのまま上空を見つめながらエルザの話に耳を傾けていた。

つまり、エリオットの実子は最強2分されたのでされたのである。

 エルザは俯き自身の過去を忘れ天狗になりシンシアにしてきたことが、父親や使用人達がしてきたことと同じだったと後悔している様子だった。


 「私がシンシアにしたことは消えないし、シンシアから恨み言を言われても、私はこれから……、人を傷つけ努力を貶しバカにするということはそういうこと背負っていく覚悟はあるわ」

 そう言ってエルザは自身がしてきたことを思い出すように目を閉じる。


 「そうじゃのぅ……でもまず贖罪する前に、学園に残り……、『居場所を守るため』の事を考えようや。

罪滅ぼしはそれからしよ」

いつも稚拙な文章にブックマーク、いいね!ありがとうございます。

更新頻度が遅いですが執筆の励みになっております。

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