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8. 捜索

 運河に流れ込む水路から小さな滝の様に流れ込む水を見上げて、レレが水面から顔を出して顔を揺らす。

「ここ、この水路を進めば良いの?」

「きゅきゅきゅきゅ」

鳴きながら身体を左右に揺らすレレ。何を言いたいの?


 私を降ろしたゼファー王子と、やはり空中飛行でついて来た男女の従者の北方向から馬の蹄の音がする。やって来たのは騎乗したアレッサンドロ・マリーノ司教だった。

「捜査にご協力いただき、ありがとうございます。馬の上から失礼します」


 捜査?


 何を言っているか分からない私の代わりにゼファー王子がマリーノ司教と話し合う。

「あいつはやはり、魔力増強剤を追ってるんだな?」

「少なくとも私どもはそれを追っております」

「あいつにはそれが分かるんだな?」

「ガブリエーレの進む方向にある可能性が高いと考えております」

「もう、それは答えだろう」


 その間に、イルカのレレは顔を水面上に上げて体を左右に揺り続けていた。

「どうしたいの?」

「きゅきゅっ」

身体を水面上に上下に揺らしながら鳴くレレ。それを見たゼファー王子が言う。

「水路に登りたいんじゃないのか?」


 水路から音を立てて落ちていく水…これを登るって滝登りだよね?

「イルカの滝登りって聞いた事が無いんですけど?」

「やらないだろうな。出来ないんだろう」

「じゃあ、何故?」

「だから、上に運んでくれと言っているんだろう」

「きゅきゅ」

顔を前後に揺らすレレ。


 ちょっと見10ft近くあるイルカ。これを運ぶと言っても私は水魔法師。だから、水に乗せて運ぶ事になる。いや、ウェーブの魔法でばしゃーん、って水路に乗せれば良い、それは分かるよ?その水量、質量を運ぶ魔力があると思われてる?平民の魔法師で、これから学院で学ぶ入学前の人間だよ?


 ゼファー王子とマリーノ司教が私を見つめる。いや、出来るけど、通常魔法で出来るよ?伝家の魔法を使わなくても。二人に加えイルカのレレも私を見つめる。当然の様にやる事ではない気がするけど…


「その、水路が狭い気がするんですけど。イルカが泳ぐには」

「その点の対処もお願いします」

マリーノ司教、そこまで丸投げかい!


「じゃ、レレ、上げるから大人しくしていてね」

「きゅ」

二人と一頭の圧力に負けた私は、レレを運ぶ事にした。


「ウェーブ」

運河からざばーんと湧きあがる波が、水路の高さまで盛り上がり、その水をそのまま水路の上に乗せる…やっぱりイルカの胸ビレがぶつかりそうな幅の水路だ。

仕方なく、そのまま水路の上の空間に大きなウォーターボールとして浮かべる。

「それで、この先なの?」

「きゅ」

小さく頷くレレ。


「このままウォーターボールとして運びます。皆さんはどうするんです?」

「小走りで進むさ」

「馬なら充分付いて行けますので、進んでください」


 水路を西に向かう途中、修道兵が合流した。

「その、速度を落とした方が良いですか?」

一部の修道兵の息が上がっているんだ。

「急がないと現場に踏み込めない可能性があります。急いでください」

「マーガレット、急ごう」

部下に気を使わないマリーノ司教。直径15ftのウォーターボールを維持する私に気を使ってくれないゼファー王子。鬼が二人いる。


 西に伸びて行った水路に直交して南北に伸びる水路がある。

「きゅきゅ」

レレが顔を右…北側に振る。

「北…こっちで良いのね?」

「きゅ」


 そうして私達は水路寄りに倉庫が立てられている場所に進んで行く。

「きゅきゅ」

「ここみたい」

「司教、我々はイルカを守る。逮捕はそちらで出来るな?」

「その役割分担でお願いします」

ゼファー王子とマリーノ司教の間で簡単な取り決めをした後、司教達は倉庫に押し入って行った。

 一応シリアス寄りの話なのに…コント臭い絵面。

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