⑨
耳の奥に残っているのは、血を吐くような魂の叫びだ。
『これは、遊戯ではない!!刃を向ける覚悟は出来ていても、貫く覚悟が出来ていなければ意味が無いッ!!!だから、貴方はいつも奪われるんだ!!!』
真っすぐに、射貫くような……苛烈を極める視線を向けられて、身体が竦んだ。
そして、向けられたのは祈るような言葉。
『俺たちには、この世界がどうなろうと、知ったことではないのです。大兄……貴方が、今度は選ぶんだ……後悔のない道を……』
誰かが言ってた。
「戦争とか、争いとか……そう言ったものは、お互いの“正義”がぶつかり合って起こるんだって、言うけど……ホントにそうなのかな?」
——そんな馬鹿な……
そう思ってた。
だって、可笑しいだろ?
みんなが正義感を持ってたら、世界って平和になるんじゃないの?って……
欲張ったり
奪おうとしたり
嫌な奴を消したいとか、怖いこと思ったり……
そう言った、イヤな感情を持つ奴らがいるから、闘いが起こるんだって思ってた。
でも、違うのかもしれない……
だからって、俺にだって譲れないものがある。
きっと、時がグルッと戻っても、俺にとって大切なものを守ったり、取り戻したりするために戦う道を選ぶんだと思う。
——それでも……
「もしもさ、相手に信じる“正義”があって、持ってる“信念”があって……それで、戦ったんなら……ただ、“悪”って決め付けるんじゃなくて、その理由をちゃんと受け止めて、前に進みたい」
※※※※※
—— ああ……
璃庵は、そっと目を閉じて記憶の彼方にいる同朋達に語りかける。
(彼の心根は、どれだけの時を経ても変わらないようだ……其方らが愛し、慕った“大兄”は……其方らの想いを受け止めて進もうとしている)
懐かしい匂いがした気がした
懐かしい声が耳を掠めた気がした
懐かしい温もりに触れた気がした
—— それは、叶わぬ夢想だと、璃庵自身が一番良く判っているというのに。
ふと苛んだ胸の痛みにそっと蓋をして、璃庵は懐かしむように遠くへと視線を馳せながら徐に口を開いた。
「忌部は、決して“忌むべき一族”ではございません。元々は、“祈りを捧げる一族”……“祈部一族”……彼らは、そう名乗っておりました」
「祈りを、捧げる……?って!!!それってッ……」
驚きの声をあげたのは、緋岐だ。
「そうです……主様の前世にあたります……韋駄天 雄飛様の信念であり、最初の里の名の由来です」




