ヴィクテージの魔法のこと
お待たせしました!更新ですー!!
下に降りてきた僕は、まずヴィクテージに魔法のことについて説明した。歴史……という程ではないが、魔法はここから始まった、何をどうしたら魔法が出る、とか、簡易的なものだ。
ヴィクテージは珍しく真面目に聞いており、時々相槌を打ちながら僕に質問してくる。それがなんというか、とても可愛くて……。友達や仲間としてではなく、どこか違う気持ちを抱いていた。
「じゃあ、まずは『シャルロ』をしてみようか」
「しゃるろ……? なにそれ?」
シャルロは、魔力を持っていれば誰でも必ず出来る魔法だ。逆に出来ないと、魔法使いとしてやっていけない。
「好きな飴を頭の中でイメージしてみて」
「どうして?」
「魔法は基本的に、イメージした通りに発動するんだ。僕がこの前出していた風の魔法も、僕が頭の中でイメージしたものを具現化したようなものなんだ。シャルロは好きな飴を出す魔法だから、好きな飴をイメージしないと変な飴が出来上がっちゃうよ?」
僕が言うと、「なるほど……」と納得したようにひとつ頷き、目を閉じてイメージをしているようだ。
「思い浮かべた? じゃあ唱えてみよう」
「……しゃ、シャルロ!」
恐る恐るヴィクテージが唱えると、たちまちポンッと可愛い音を響かせながら、どこかで見たことのあるような塩飴がひとつ出てくる。初めてやる後輩は大体三回程失敗してようやく出るような子達ばかりだったのに、ヴィクテージは一発で出るとは……。
なるほど、ヴィクテージは塩飴好きなのか……?
「す、すごいっ! 出た!! 出たわよが……」
「?」
「……い、いいから次行きましょ!」
顔を真っ赤にして、叫ぶようにヴィクテージは言う。
一瞬、僕の名前を呼んだような気がするけれど、気のせいかな?
まぁ聞き間違いか。ヴィクテージもまだ僕の事を信じ切ってないみたいだし、名前を呼ばないのは仕方がない。そこは僕も了承していた。
「えーっと、次は属性の適正さを調べるよ」
「属性? 適正?」
ちんぷんかんぷんと言わんばかりにヴィクテージが首を傾げるので、僕は少し説明を挟みながら魔法を使うことにした。
「属性って言うのは、主に炎、水、風、氷、混っていう五つの属性に分けられていて、その属性の中でどの属性がヴィクテージに合っているかってのを調べるのが適正さ。見たところヴィクテージは風っぽいような気もするけど……」
「……それ、見ただけで分かるものなの?」
「大体は分かるさ。僕は氷属性だし、コルもコルで魔力を持ったら、水なんじゃないかな? って、大体勘でわかるんだよ」
『凄いですがろー、私炎系の技全く使えないんですよ!』
ドヤ顔で誇らしげに言うコル。「ね?」とヴィクテージの方を見ると、大層驚いた顔をしていた。
「本当は超能力者なんじゃ……」
「魔法使ってる時点で超能力者なんじゃ……」
現代のフランスで、魔法に憧れる者など子供しかいないだろう。それだけ後世に伝えられている魔法なのだから、今この場所で使えるとなったらそりゃあ喜びもするだろう。一つ下のヴィクテージが、なんだか妹のように思える。妹いないけど。
「ま、まぁいくよ。杖持って」
「はいっ」
『わくわくっ……』
息を吸って、僕が唱えようとした瞬間だった。
けたたましい爆音と共に、周辺全体が大きく揺れる。バランスを崩したヴィクテージがその場に尻餅をつき、コルは何が起こっているかが分からないと言わんばかりの顔をしていた。
「わっつはぷん?」
「呑気ねあんた!」
『私、様子見てきます!』
ブワッと風が吹いたかと思うと、既にコルの姿は小さくなっている。
あのちっちゃな姿でも早く飛ぶことができるのか……。
「僕らも見に行こうか」
「え、えぇ……」
少々不安げにヴィクテージが答えたのを見て、僕は彼女の走るペースに合わせて現場へと向かった。
***
見えてきた光景は、それはもう凄まじいもので、一瞬何が起こっているのか理解が出来なかった。
他国の軍人の集団だろうか。フランス軍とは違う軍服を着た者達が、ここ軍の駐屯地の門を爆弾かなにかで吹き飛ばしたのでは無いかと、先に着いていたコルは言う。
プチ戦争と言ったところだろう。魔法界では日常茶飯事だが、ここは戦後のフランスだ。全く持って普通なわけがない。
というか、僕が知っているフランス史にこんなの無かったぞ。一体どうなっているんだ?
「何あれ、他国の……?」
「かもしれないね。危ないから一応離れておこう。そうしないと僕らまで死んでしまう」
『私もそれが最善策かと! さぁお二人共、背中に乗ってください!』
でかくなったコルの背中にヴィクテージを乗せる。エズで見た時よりは小さいが、それでも人二人分は乗れるスペースがあった。
「……?」
僕も背中に乗ろうとした時、ふと軍人が何かを言っているのが聞こえた。
それはカタコトのフランス語で、内容としては、
「変な着物の男の子と、それについてくる女の子と、小さなドラゴンがいると噂になっているからはよ出せ」
「確実に僕らの事じゃん!」
いそいそと背中に乗り、僕はコルに出発するように促した。それに気づいた軍人達が、「いたぞ!」「追えーっ!」と僕らを追いかけてくる。
「……あんた、ことごとく問題起こすわよね」
「それでも僕はやってない!」
『それ、なんの映画でしたっけ?』
飛んでくる矢を次々と避けて、コルは空高く翼を広げる。
『水上げしましょう!』
深く息を吸い込んだコルは、地上に大量の水(と言ってもかなり少量)を洪水のように降り注ぐ。水に煽られて足元を掬われた軍人達を見て、『へへっ、人がゴミのようですね』とニヤニヤしながら言った。
その腹黒さに、思わず僕とヴィクテージで二人して引いていると、たちまち水も引いていく。どうやら手加減している様子だった。
「コル、降りないの?」
ヴィクテージの言葉に、『あちらが謝るまで降りませんっ』とコルはきっぱり言い張る。
「いや、降りていいよ」
『正気ですかがろー』
「がろーは正気だよ」
最後に言った僕の言葉に、コルはため息をつきながらゆっくりと降りてくれた。
後で撫でるからと言うとすぐさま元気になり、『今撫でてください!』と僕を降ろした後に元の姿に戻り、頭を差し出してきた。
なでなでしている間に、「で、僕らを狙っていた理由とはなんでしょう?」と軍人に問いかけてみる。
「……」
彼らは武器を下ろしたまま何も答えない。
「答えないなら、僕らは戻りますよ」
「あ、いや待ってくれ!」
ようやく口を開いたかと思えば、その場でいきなり土下座をし始める始末。諭しても一向に顔をあげようとしないし、どうしたものなのか。
「俺達、パリの軍人ですっ! この度はご迷惑をおかけしてすんませんでした!」
「え、あ、パリの軍人だったの……?」
丁度僕らが次に行こうとしていた目的地の軍人だったとは。
というか、フランス内でも軍って別れているのか……?
「あなた方にお願いがあるんです、どうか聞いてくれやしませんか!」
「うん、聞くけどその田舎口調違和感しかないからやめてくれませんか」
僕が言っている後ろで「B型なのに几帳面よね……」『全くですよ、A型も入ってるんじゃないですかね……?』とひそひそ話をしているのもちゃんと聞こえている。
「で、お願いとは?」
「はい、俺達の軍に来て欲しいのです」
「無理」
「即答!?」
「いやだって、君たちがそう言っても、僕達にはなんのメリットもないし。ここだって騒ぎを起こしたお礼にって泊まらせてもらっているだけだし……」
思えばそうだ。僕達が軍にいた所で何もない。少なからずのことは出来るかもしれないが、あとは足でまといになるだけ。それならいない方がマシだと思う。
「あんた、本当に断るつもりなの?」
ヴィクテージがつかつかと歩いていて僕に質問してくる。
「別にメリットないし」
「メリットならあるじゃない」
「へ?」
ポカンとした僕に、ヴィクテージは僕の頬を両手でもちもちしながら言った。
「パリに行くって言うメリットが、ね?」
御一読お疲れ様でした!
果たしてヴィクテージちゃんは何属性なのか!?
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