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魔力のこと

お待たせしました!!!!更新です!!!!!

「ねぇヴィクテージ、まだなのー?」

 

 呆れ口調で僕は言うが、彼女は一向に動こうともしない。

 それはどこかって、ホームの券売機前。昨日パリ行きの電車や料金を調べようとうきうきしてたヴィクテージだ、そりゃあ長く見ていてもおかしくはないだろう。

 しかし、だ。かれこれ一時間はずーっと見ている。特に何か変わった様子も無く、ただ張り付くように見据えているだけ。

 

『がろー、ヴィクテージは何を悩んでるのでしょう?』

「あい、あむ、ジャパニーズ」

 

 知らないふりをして、僕は片言の英語で言う。本当は日本出身じゃないけれど。

 第一、僕はフランス語が理解できて、読み書きができる。ただそれだけのことであって、フランスのことなんて全く持って分からない。だから、フランスの知識は彼女に任せるしか方法がないのだ。


「ねぇあんた、電車詳しい?」

 

 唐突にヴィクテージが聞いてきたものだから、僕は「へぁ?」と変な声を上げてしまった。

 

「えっ電車……? そりゃあね、僕電車好きだし」

「じゃあ、ここからパリまで行く時の最短ルートと最安値ルートを教えて。ずっと考えてるけど分からないのよ」

「待って、それで一時間も券売機の前で待たされた僕の気持ちも考えて?」

 

 とは言えど、路線図を見てもエズからパリまでは、普通に行けば日本円で言うと大体二万円もかからない。これで最短で最安値なルートかぁ……。

 

「鈍行は?」

「やだ」

「即答なの……。じゃあこの駅で乗り換えて…………」

 路線図を見る限り、最安値なルートは見いだせないけど、最短ルートなら見いだせそうだ。日本の路線図よりも遥かに複雑だし、東京のような感覚だ。

 

「なるほど! ありがとう役に立ったわ!」

「役に立ったならいいや、良かった」

『帰りますか?』

「帰りましょ! 私早く魔法を使いたくてしょうがないの!」

 

 目を輝かせながら言うヴィクテージが眩しすぎて、目元を腕で覆う仕草をしながら「じゃ、じゃあ帰ろっか……」と僕は口にする。

 旅のことはヴィクテージに聞いた方が本当に早い気がする。持つものを質問すればすぐに答えてくれるし、計算だって早い。歩いていった距離、分数、時間数を言えばすぐに計算してくれるのだから、普段箒で飛びながら出かける僕よりも遥かに賢い。

 年下って凄いなあと実感する所でもあった。

 

 ***

 

 軍基地に帰り、僕らは部屋に戻る。ここでヴィクテージに魔力を与えるんだけども……。


「方法が一つしかない?」

『それはどういうことなのですか、がろー?』

 

 そう、ヴィクテージの言う通り、魔力を分け与える方法が一つしかない。

 人に触れずに魔力を分け与えることは到底不可能。そんなのメイルでも出来やしない。天才魔法使いと呼ばれている洋子さんだったら出来なくもないけれど、今いるのかどうかなんて僕には分からない。

 

「え、で、その方法は?」

「……」

 

 ダメだ、僕恥ずかしくて言えない!

 膝から崩れ落ち、僕は撃沈する。

「だ、大丈夫……? あんた……」と僕を呼ぶヴィクテージの言葉でさえも聞こえず、僕は顔を手で覆ったまま数分固まっていた。

 一方コルは察したようで、『ははーん……そういうことですか……がろーもまだまだお子ちゃまなんですねぇふふふ』とにやけながら意地悪そうに呟く。

 

「だってその方法しかないんだぞ!? 僕だって友達といろんな魔力の与え方を実験してみたけど、出来るのがそれしかないんだよ!」

「それってなんなのよ」

『ヴィクテージ、ベッドに行けば分かりますよ』

「余計なことを指示するなぁぁあ!」

 

 そんな僕の言葉もお構い無しに、ヴィクテージは平気そうな顔でベッドに寝っ転がる。これでいいの? と言わんばかりに僕を見つめてくるものだから、僕はさらに撃沈してしまう。

 だってこんな可愛い女の子の……いや言えない、僕のプライドがここで言うことを許さない……。

 それなら言わなければいいのかと開き直った僕は立ち上がり、ヴィクテージの目元を隠すように左手手を置く。

 

「え? なによあんた───」

 

 ヴィクテージの言葉はそこで止まる。

 だって、僕が口を封じているから。

 もうお気づきだろう。魔力を人に分け与える方法は、口付け……つまり、キスしかないのだ。それが異性でも、同性でも。

 だからする人は滅多にいない。するなら、本当に緊急事態って時だけだと思う。

 その時間は短かったのに、あまりにも長いように感じた。まだ昼頃なのに、夜のようなひんやりした空気が部屋を包み込む。

 口を離して、僕は彼女から離れた。


『がろー、顔が真っ赤……』

「そういう事は言わなくていいの! 分かった!?」

『は、はいっ!?』

 

 驚いたコルが飛びながらピシッと固まり、僕は隣のベッドに顔を埋める。

 やっちまった。絶対ヴィクテージ怒ってるよね……。

 なんて思いながら片目だけ見てみると、彼女も顔が真っ赤であった。口元に手を置き、目を見開いて驚いている様子だった。

 いくら僕でもキスは恥ずかしい。でも魔力を分け与える方法はこれしかないのだから、しょうがない。

 

「はぁぁぁ、恥ずかしい……」

「あぁぁぁ、恥ずかしい……」

 

 二人同時に声を上げた今日この頃。明日は彼女に魔法を教えなきゃ行けない。

 魔法を出す時もコツがあるものだから、最初僕が試した時は何ヶ月も出来なくて焦ったものだ。今ではいい思い出だけど。


「……まぁ、いいや。とりあえず魔法教えるから、下に行こうか」

 

 いつも通り話しかけた僕に、ヴィクテージはさらに顔を真っ赤にして俯き、無言で頷く。

 僕としては気まずいわけじゃないけど、女の子からしたらそうだよなぁと納得してしまう。これまたお母さんやメイルの気持ちが分かるからこそなのだ。


 そんなヴィクテージがどんな魔法を見せてくれるのか、内心僕は少し期待していた。

 

物凄いどろどろした展開になってごめんなさい()

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