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才能のこと

更新です!

果たしてがろー君を育ててくれた者とは……?

「待ったヴィクテージ。僕らは確かにパリに行く予定だよ? でもこのままだと、君も僕も軍人になってしまう。僕はそれだけは避けたいんだ」

 

 なんとか説得をしようと、僕は十分弱彼女と話をしている。第一、僕は軍人はあまり好きではない。それどころか嫌いな方だ。今回は仕方なくという形だったが、この話は絶対に呑み込めない。

 というのも、僕も少しだけフランスを観光したいというか……なんというか……。

 

「じゃあお断りして、他の街を観光する?」

「僕はそれがいいと思う……」

「じゃ、そうしましょ」

「決めるの早いな」

 

 話し合った結果を言うと、「いつでもお待ちしております故!」と変な敬語を使われて、軍人達は駐屯地をあとにした。

 とりあえず……何とかなった、のか?

 

「さて、と。魔法、また教えてくれる?」

「この状況で!? まずはあの門を直そう!?」

 

 僕が慌てると、「あら、私も手伝っていい?」とヴィクテージは僕の杖を持つ。

 

「それ僕の杖! まぁいいけど、できるなら……」

「やった!」


ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶヴィクテージを見て、大丈夫かなぁと心底心配な僕。コルはコルで『良かったですね、ヴィクテージ』と小さな手で拍手を送っている。

 ほんと、大丈夫かなぁ。

 

 ***

 

「じゃあ直すから、言った通りに唱えてね?」

「分かってるわよ!」

 

 ヴィクテージに杖を貸しているため、僕は杖無しで魔法を発動しなければならない。本来は杖があったら本望なのだけれど。

 

Rectan()gulaire()

Rectan()gulaire()


 二人同時に唱えると、段々と門は直っていき、次第に大きな石造りを作り始める。

 やはり二人分の魔力は、一人よりも格段と楽だ。数分も経たないうちに、門は立派に直っていた。

 

「やるじゃんヴィクテージ、君魔法の才能あると思うよ」

「ほんと!? えへへ……」

 

 いつもよりも感情が豊かなヴィクテージに、僕も安心した。

 部屋に戻り、荷造りをしながらこれからどこへ行こうかと三人で相談。まずはニースというところまで一旦バスで出て、それから飛行機でパリに行こうという話になった。

 出る時間帯は明日の朝七時半。日本の時間で言うと真夜中に出ることになるが、時差は八時間なために、僕は寝ないかが心配で仕方が無かった。

 

「まぁ、大丈夫でしょ!」

「どこが大丈夫か根拠言える?」

 

 そんなボケとツッコミを交わしながら、僕らは夕食を食べに行こうかと言うことになり、駐屯地を出た。

 時間は午後十八時頃。今日は何を食べようかと話をしながら、僕らは街中に出た。

 

 ***

 

 ヴィクテージがせっかくだからと、僕らは下見程度にニースまで行ってみることにした。ニースは第二次世界大戦前までは、ヨーロッパ中からお偉いさん貴族が寒さを凌ぐために訪れる高級社交場だったとヴィクテージから聞いた。城跡がある丘があり、「天使の湾」と呼ばれる綺麗な海岸を見下ろすのが彼女の目的だったという。

 

「ニースは一回訪れたことがあるんだけど、その時もこの丘から海岸を見下ろしたの。当時はフランスのことなんて微塵も知らなくて、見た時に感動して泣いた覚えがあるわ」

「そっか、ヴィクテージは旅人なんだもんね。凄いなぁ、僕も一度でいいから旅をしてみたくて、お母さんに何度かお願いしたことがあるよ」

「そっか、じゃあ今回が初めての旅なのね」

 

 魔法界と言っても、僕が住んでいた所は、強いて言うならエズよりも少し大きいくらいの街だ。それ以外は島として遠く離れており、フェリーか水上鉄道と呼ばれる公共機関を使わなければ、他のところに行くことは出来ない。

 だから、少し肩身の狭い思いをしていたような気がする。

 

「内心ワクワクしてるよ。僕は鉄道が好きだから、見たことない電車が沢山走ってるし、ご飯も美味しいし、こういう鉄道旅が夢だったんだ」

『私の国は雲よりもはるか上ですからね。たまたま地上に降りてきたら、がろー達に見つかって……いやぁ大人気ないことをしたものです』

「大人って……その姿だけ見たら子供のドラゴンとしか思えないわよ」

『なにおう!?』

 

 三人して笑い、僕は心地よい風に煽られる。

 魔法界の海もとても綺麗だけど、ニースの海はもっと綺麗だ。広く続き、青が途切れることの無いように思える。

 外国の海は、どうしてこんなにも青いものなのか。日本の海はマナーが悪く、薄汚い所が多いけれど……。

 

「がろー」

「!?」


 不意にヴィクテージに呼ばれて、僕は慌てふためく。ヴィクテージは既に、手すりに腕をかけて顔を埋め、恥ずかしそうに言った。

 

「……その、ありがと。私、やっぱり女の子だから、小さな頃は魔法とか、魔女とかに憧れてて……こういうことするのが夢だったから。叶えられてよかった。

 夜にさ、どうしても話したい事があるんだけど……いい?」

 

 埋めていた腕から片目だけ覗かせ、僕を見据えてくる。淡いオレンジの瞳は、さっきまで見ていたニースの海よりも、何よりも綺麗な色をしていた。

 

「ヴィクテージの話すことなら、僕は聞くよ」

「……ん」

 

 少しだけ微笑んだ彼女は、偽りの仮面を被ったヴィクテージではなく、ようやく本当の顔が見られた気がした。それと同時に、名前を呼んでくれたことの嬉しさに、僕も思わず笑い返す。

 また一つ、ヴィクテージを知ることが出来た。最初は本当に分からないことだらけだったけれど、ヴィクテージとの差が少し縮まったような気がして、僕は内心ではあるが嬉しかった。

 

「さて、お腹空いたね。どこか食べに行こうか」

「そうね、何処にする? あっこっちに地図あるわよ! ほら早く!」

 

 袖を掴まれ連れていかれる。

 そう言えば、ヴィクテージの後ろ姿をまともに見たのは、これが初めてではないか? 今思えば、僕が後ろ姿を見せてばかりだったからか、彼女の後ろ姿が何よりも大きく見える。とても頼もしく、儚く、どこか誰かを思い出させてくれるような、見ていて安心する背中だ。

 ……あぁ、そうだ。自分を育ててくれた───。

 

「がろー?」

 

 その声でハッと我に返る。足を止めたヴィクテージが心配そうな顔で僕を見つめていた。

 

「どうしたの? お腹空きすぎてボーッとしてんの?」

「あはは、多分そうかもしれないね」

『がろーは食いしん坊ですねぇ』

 

 夜、彼女がどんな話をしてくれるのか……僕はなんとなくだが想像はついている。

 きっと自分の過去のことだろう。ちゃんと僕を信用したら話すと、この前言っていたことを思い出した。

 僕も内心気になってはいた。どうして旅に出たのか、父母は、友達は、学校は……色々と聞きたい事が多すぎる。

 

「ヴィクテージ、君の地元はどこなんだい?」

 

 展望台のエレベーターの中で、僕はそう聞いた。

 

「あぁ、私の地元? それはね───」

御一読お疲れ様でした!

ヴィクテージちゃんの知られざる過去とは一体……!!

宜しければブクマ以下略お待ちしております!


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あの日、私はあなたの栞だった。も是非、御一読お願いします。
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