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日本人のこと

お待たせしました!!!

更新です!!!!!!!!!

「ほら、ワンって鳴いてみなさいよ」

「ワン」

『ぶふっ……』

「もう!僕だってやりたくてやってる訳じゃないんだぞぅ!」


 エズの黒ずんだ中心街で、僕は小声でツッコミを入れる。

 魔法界でも犬のネタで弄られたのに、まさか時代を越えた戦後のフランスでもネタにされるとは……しかもフランス語で。

 なんなんだよもう……。


「いやぁしっかし面白いわね!あんたがそんな姿を隠し持ってたなんて!」

「違うってば、これが魔法界での姿なんだってば!」

「あら、人間じゃないの?」

「魔法界に来たらけもけもしちゃうのぉ!」


 いや、本来僕がなるべき姿は人間なんだけど。

 僕が普段住んでいる魔法界はみんなケモノの姿をしている。それが外の世界から来た人間でも、自動的にケモノの姿に変わってしまうというのだから、これまた不思議な話だ。

 魔法学校の校長先生、ガリシアさんでもこの原理は分からないという。だから、魔法界のことを研究しているお偉いさん達がこの原因を突き止めようと努力しているみたい。


「さてさて、どこから行きましょうか」

『まずは腹ごしらえですね』


 ヴィクテージの頭に乗っているコルは呑気そうに言う。


「シカトされたし。というか僕もお腹空いた……」

「その姿で人間のご飯食べれるの?」

「食べれるわ!失礼な!」

『ちゃっかり小声なところがまた……』


 僕の応答を聞いたヴィクテージは「じゃ、どこか食べれるところに向かいましょうか」と、歩きながら僕を抱き上げ直す。

 その振動で、僕の身体が乱雑に揺れる。酔いそうだからどうにかして欲しいと心から願う。


「あらぁ可愛い子犬ちゃんねぇ!」


 ふと、そう声をかけられ、ヴィクテージが声の方向へと振り向く。

 知らない女性だ。どうやら本当に僕のことを犬だと思っているらしい。


「お名前はなんて言うのかな?」

「……?」


 いや待て。僕は今、俗に言う「ペット」のような扱いだぞ。名前を聞くのにどうして飼い主であるヴィクテージの方を向かない?

 喋らない動物に話しかけても通じないだろう、と僕は咄嗟にそう思った。

 なんだか怖くなって、僕はヴィクテージに更にくっついた。

 そんな僕に驚いたのか、僕をまた抱き直して「すみませんね、この子人見知りなもので」とヴィクテージは笑い混じりに呟いた。


「あらそうなのかい?でも可愛いわねぇ……」


 一方コルはというと、ヴィクテージの背中に隠れるようにしてパタパタと飛んでいる。死角を利用して見えないように工夫しているんだろう。

 その女性は程なくして時計を気にし始め、「あらそろそろ行かないと。それじゃあね!」と()()手を振って人混みの中に紛れていった。


「……あの人、絶対怪しいわよね」


 小声でヴィクテージが僕に問いかけてくる。


「……おかしいし怪しいし、ちょっと気持ち悪い」

「あんたのシャイな所が発動してちょうど良かったわね」


 からかい混じりで言うヴィクテージに「もう、また!」と呆れ半分で僕は言う。


「とりあえず、ご飯食べられるとこ探しましょうか」

「そうだねぇ……あそことか?」


 僕がひっそりと指をさしたところには、日本食の専門店がある。

 所謂、寿司とか、海鮮丼とか、味噌汁とか、そういう類のものだ。僕は食べ慣れてるし、コルはお肉か何かを食べさせれば問題ないけれど、日本食を食べた事のなさそうなヴィクテージが心配だ。


「あらいいわね、行きましょうか」

「あっいいんだ」

「興味あるし」

「興味あるんだ……」


 そういう理由だったか。

 この時代のフランスはペット同伴でも良かったんだっけか。

 僕は戻ろうにも戻れないし、コルはコルで危険動物扱いされそうだし……。


「……ねぇコル、僕ら大丈夫かな」

『大丈夫です、私のつぶらな瞳は入店を許してしまう程ですから』


 なんだそりゃ、口説き文句か!

 僕は不安なまま、ヴィクテージに抱かれて店の中に入っていく。


「いらっしゃいませ……あらま、可愛いお客さんが来たもんだねぇ」


 店の中に入るなり、そんなフランス語が聞こえてくる。

 視点が下すぎて顔は見えないけれど、どうやら声からして店員さんは年老いた女性のようだ。


「ペット二匹連れてきてるんだけど、いいかしら?」

「えぇ構わんよ、好きな席に座りなさいな」


 良かった、と僕は心底思う。

 ヴィクテージの隣の席に座らされて、店員さんの顔がようやく見えた。

 優しそうな瞳をしており、顔にはシワがいくつもある。長年働いているのだろう。もう定年でもおかしくはない。


「……あ、日本人」

「なんで分かるのよ?」

「そりゃあ日本人見慣れてたら分かるよ。あと話し方の癖とか」

「訛りがあるから私の出身の地域ではないとは思ってたけど……よくそこまで見れるわよね」


 実質、日本語、イギリス英語、フランス語を使い分けている僕の母を見ているから分かるだけのことであって、僕自身そんなに言語の勉強はしていない。ただ母にそう教えられたし、聞いていれば何となくわかるものだ。

 僕が聞いてきた中で特に訛りの差が酷かったのは、中国語とロシア語。中国は北と南、特に上海と南の地域では以ての外だ。

 ロシアはメイルが出身地だし、度々教えられていたから分かるけれど、ロシアもロシアで地域によって訛りが酷いところもあると聞いた。

 言語とは不思議なものだなぁ……と僕は思いながら、前に出されたコップを両手で持ち、中に入っている水を少しずつ飲む。


「あんた、何食べるの?メニューあるけど」

「何があるの?メニュー見えないんだけど」

「めんどくさいワンちゃんねぇ……」


 また犬って言われた!しかも可愛くワンちゃんだって!

 そんな僕の反応を見るかのようにニヤニヤするヴィクテージ。


「……僕もう(この姿じゃ)お婿に行けない」


 テーブルに頭をぶつけて項垂れる。この姿じゃお婿に行けない。絶対に。

 それどころか元の姿に戻っても恥ずかしくてお婿に行けない。あぁ恥ずかしい。


「で?何食べるのよ。というか私日本食なんて食べたことないから、どれが美味しいのか分からないんだけど」

「あ、じゃあ僕からオススメするのは〜……」


 寿司、海鮮丼、味噌汁など色々なバリエーションがある日本食を一つ一つ指さしながら、僕はヴィクテージにどんな味がするかを説明していく。

 その間に、店員さんが気を遣ってくれたのか、コルに生肉をプレゼントしてくれたようで、ご機嫌そうにもしゃもしゃと食べる姿が横目で映っていた。


「じゃあ私は海鮮丼にする〜」

「僕は味噌汁だけでいいや。この身体だとそれくらいしか入らないし」

『ここのお肉っ!とても美味しいですっ!!』


 相変わらずもしゃもしゃ食べているコルに苦笑いを送り、僕は呼び出しボタンを押そうと手を伸ばす。

 しかし届かない。手が短い。だからこの姿で飲食店って入りたくないんだよ!

 そんな僕の光景をしばらくニヤニヤして見ていたヴィクテージは「押して欲しい?ねぇねぇ、押して欲しい?」と煽り口調で問いかけてくる。


「ふっ、僕には耳という長い武器があるのさっ」


 そう言って耳を上下に動かし、呼び出しボタンを器用に押す。

 ピンポーンと店内に鳴り響く音を聞き、驚いた顔で僕を見ていたヴィクテージは「あんたよくそれで押せるわよね」と呆れ混じりに呟く。


「ケモノの時しか出来ないよ、これ」

「人間で出来たらそれこそバケモノだわ」

『あはは……』


 やがてさっきの店員さんがやって来て、ヴィクテージが注文をする。

 僕は大人しくペットのフリをして待っていた。

 というか、ヴィクテージって食事と旅のことになるとちょっとウキウキしているのは気の所為だろうか……?

 呼び出しボタンの近くにはメニュー表が立てかけられており、お手拭き、割り箸にスプーンまで入っている横長の収納箱が置いてある。

 うん、日本だ。纏うこと無きジャパンだ。

 ヴィクテージも落ち着かないようでソワソワしている。

 気持ちも分かるっちゃ分かる。僕も初めてイギリスの店に行った時は驚いてソワソワしてたし。


「あんた、こんなところに外食来てるの……?」


 気になったのか、ヴィクテージが僕にそう問いかけてくる。


「うん、というか日本のお店はだいたいこんな感じだよ」

「落ち着かない……」

「フランスと違って、日本はご飯が主流の国だから、意外な味がして美味しいと思うよ」


 やがてしばらくして、味噌汁と海鮮丼がやってくる。

 お礼を言って、僕もヴィクテージも食べ始めた。

 いつもの味だ!久しぶりに食べた!

 そう思ってヴィクテージを見てみると、彼女も彼女で目を輝かせて、「何これ美味しい好き」と呟いた声のトーンが上がっていることに気がついた。


「日本食、口にあって良かった」

「いやめっちゃ美味しいこれ!あんた良いもの食べてるわね!」

「いやいや、日本人はその逆でね。外国の料理が美味しいってよく感じるんだよ」


 でも僕氷属性だから、魔法界にいる時はあまり暖かいものは食べないんだよね。溶けちゃうから。

 店の中を見渡してみると、席はちまちま空いているもののそこそこお客さんが入っているようで、繁盛しているのが分かる。

 フランスに日本食のお店を入れるのは本当にいいアイデアだと僕は思う。ぜひ日本にもフランス料理の店が来て欲しい。


「そこの青い子ちゃん、魔法界の出身でしょ?」


 不意にそう声をかけられ、味噌汁を置いて声の方向へと振り向く。

 そこにはさっきの店員さんがいた。僕をどうやって見抜いたかは分からないけれど、「どうして分かるの?」と声には出さず首を傾げる動作をする。


「どうして?って顔してるねぇ。あなたの綺麗なその紅い目がそう語っているんだよ」


 この人は確かに日本人だ。

 だけど、日本人ではない何かも感じる。それはきっと、僕のいた魔法界の住民の特徴の一つである『オーラが違う』というやつだろう。


「……魔法界のことを、どうして知っているんですか?」

「そんなの、おばちゃんの知り合いに魔法界の子がおるからさ。おばちゃんはフランス(ここ)におるし、知り合いはまだ魔法界におるし、お互い違う地域にいるけども……同じ出身の子とそうでない子の違いが見分けられるのさ」

「そうなんですか……もしかしたら僕の知り合いかもしれないですね」

「そうかい?シルヴェール・ローイエルって子なんだけど……」

「あっ……」


 バリバリ知り合いです、シュリーの姉の祖母です……。

 こんなところで縁があるとは、どうしたものか。


「そうかいそうかい。じゃあ特別にいいこと教えてあげようかね」


 そう言い、店員さんは僕と視線を合わせる。


「ここには、まだ魔法界出身の子がいることをね」

今回ちょっと長くしました!!!!!!!!

携帯が止まりました!!!!!!!

ブクマと評価と感想と是非宜しくお願いしますぁぁぁ(土下座)

以上!!!!!!

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あの日、私はあなたの栞だった。も是非、御一読お願いします。
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