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計画のこと

おまたせしました!!

少し余裕ができたので一気に最新話書き上げました!!

「ん?」


 翌朝は、僕のそんな変な一言から始まった。

 それはどうしてか。視点が異様に低いのだ。いつもならヴィクテージを下に見れるほど視点が高い僕が、今日に限って何故かその視点が低いんだ。

 当のヴィクテージを見てみると、彼女は腹を抱えて笑っているのだ。


「ね、ねぇヴィクテージ……なんで笑ってるのか教えてほしいんだけど」

「いやだって、あんたさ……ふふっ……んふふ……」


 ますます笑っている理由が分からない僕は、自分の手を見てみる。

 それでようやく気が付いた。

 ()()()()()()()()()()。僕は嫌な予感がして、ベッドのすぐ右横にに立てかけられている鏡に自分の姿を通してみた。


「嘘やん」

「あっはっはっはっは!」


 あろうことか、僕はこのフランスに来る前の姿……いわゆる、『獣』の姿に戻っていたのである。


 ***


「ほぉ……こりゃかわいい姿だ。それがあんたの本来の姿だなんてねぇ」


 エティエンヌさんがにやけながらそう言ったことに対し、「いや! 笑い事じゃないですから!」と僕は怒りをあらわにする。


「かわいいですよねほんとかわいい」

「ヴィクテージもいい加減離してよ! 僕も子供じゃないんだからさぁ!」

「嫌よ、かわいいんだもん離さない」

『がろー……もう諦めなさい』

「やだ! 僕はこの姿が大嫌いなんだぁ!」


 と、言うのも。僕はこの姿が大嫌いなのだ。どうしてかって、「人間の時の顔はイケメンなのに、どうしてケモノになった瞬間そんなにほわほわした顔つきになるの?」と毎回言われるからだ。

 僕達の世界である魔法界は、大体がそんな人ばかりなのだ。人間になった姿はかっこいいのに、どうしてかケモノになった瞬間にほころんだ顔になったり、ギャップというものが存在してしまう。

 ピンと立った耳、左目にはいつもの眼帯、赤い瞳、犬のような前足。服装は男性用着物ではなく、フード付きの前でリボン縛りにして留められる黒いマント一枚だ。

 全体的に薄い蒼の毛色をしており、身長はヴィクテージの膝までしかない。日本で言う「ケモナー」が大歓喜するような容姿をしているのだ。


「もう……僕お婿に行けない……」


 ヴィクテージに抱かれていることがたまらなく恥ずかしくて、僕は両手で顔を覆って左右にブンブン振る。

 それを見たヴィクテージがニヤニヤしながら「もういっその事さ、一生このままでいたら?あんた」と意地悪そうに言ってきた。


「だから嫌なんだってば!僕のプライドがそれを許さない!」

『ププッ……』

「ねぇ!コルも笑ってないで何か言ってよ!」


 パタパタと飛びながら笑いを堪えているコルに向かって訴えるように言うと、


『い、いやぁ……あなたがそのような姿だったとは、私……ぶふっ』

「がろー、もうダメなのよこのドラゴンは」


 呆れたようにヴィクテージが呟く。


『ダメなんかじゃないでぶふっ』

「ダメじゃん」


 言葉の途中で吹き出したコルに、僕はすかさずツッコミを入れる。

 しかしどういう事なのか。

 僕は顔を覆うのをやめ、両手を見ながら考える。

 このフランスに来た時には、僕は既に人間の姿になっていた。そのはずなのに、何故今更獣に戻るんだ?

 僕が住む魔法界では、人間の姿になる時は一つだけ条件がある。

 それは、自分自身が危険だと判断した時や、緊急事態な時。

 例えば何者かにフランスに連れて来られた僕なら、この事態が緊急事態だと分かっていて人間の姿になったと推測ができる。

 じゃあ、今世界的に危険なのに、どうして獣に戻る必要がある?と、そう考えたのだ。


「……考え込んでるわね」

『えぇ、こうなるとがろーは止められません』

「なんだい、がろーは考え深いのかい?」


 エティエンヌさんは僕の顔を覗き込みながらヴィクテージに質問する。


「えぇそうですよ、この馬鹿は考え深い性格です」


 再び呆れたようにヴィクテージが呟き、コルは僕の顔を見つめている。

 それすらも気づいていないくらい、僕はこの事について考え込んでいたのだった。


 ***


「……で、なんでこんなことになってるわけ?」


『今日はなにもしなくていいからとりあえず部屋に戻れ』とエティエンヌさんに言われ部屋に戻った僕は、さっきからヴィクテージにそんなことばかり質問されている。


「知らないよ! 朝起きたらこうなってたんだから!」

「いや、それはいいんだけどね」

「良くないよ……」


 ヴィクテージの言葉にがっくりと肩を落とした僕に、コルが右手を僕の左肩に置く。

 おそらくどんまいとかそういう意味合いなんだろう。僕はさらに肩を落とした。


「今日一日あんたはまともに動けないわけでしょ? 私が抱いて運ぶからよろしくね」

「ちょっと待ってよ、なんで僕がヴィクテージに運ばれなきゃならないのさ? それに、僕が人間の言葉を喋れる獣って世間にバレたらどうすんの?」

「その辺は大丈夫よ、あんたのこと聞かれたら『あ、この子私のペットなんで』って言えば問題ないし、あんたはそれに合わせてワンとでも言えばいいじゃない」

「僕が完全に犬扱いな件について」

「なによ」

「なにさ」


 とはいえ、ヴィクテージの言うことも納得はできる。

 僕の場合、普通の獣とは違って獣の時でも人語を話せるし、さらに二足歩行という普通じゃありえない歩き方をしているから、それがフランス住民にバレたりでもしたら新種発見と騒がれてもおかしくはない。

 だから、まともに動けないっていう彼女の意見は確かに正論なのだ。


「……分かったよ。今日一日、僕は人の前ではなにも話さないし動かない。そのかわりヴィクテージの腕に抱かれて熟睡してるから」

「私が抱くのはいいけど熟睡はだめよなに考えてんのよ変態!」

「犬と変態ってかこの野郎、そんなのまっぴらごめんだわ!」

『落ち着け』


 コルが珍しくタメ口でツッコミを入れる。

 それに対して僕らは顔を見合わせ、笑いあったのであった。


「とりあえず計画を立てましょうか」

「計画?」

『計画?』


 僕とコルが同時に声をあげると、ヴィクテージは一つ頷きを見せて一つの紙と鉛筆を持ってきた。

 そしてなにかを描き始める。じっと見ていると、それはフランス全体の地図のようなものであった。


「まず私たちがいるのはエズ。この右端のところね」


 ヴィクテージはそう言い、描かれたフランスの地図の右端を鉛筆でトントンと示す。


「ここからダンジョンやらなんやらの情報収集をするために、まずパリに飛んで行くのか、それともほかの所に飛んで行くのかって所ね」

「なるほど……ヴィクテージはどうしたい?」

「私はパリに飛んで行った方がいいと思うわ。オルレアン辺りだったら色々と聞けそうだし」

「じゃあ、パリに飛んでからガーンジーの方に飛んで行くのはどう?」


 僕が地図の左側にあるガーンジー島の方を指差すと、彼女はまた一つ頷く。


「私もそこはいいと思ってた。いい線してるわねあんた」

「いい加減名前で呼んでよ……」

「コル。あんたはどう?」

『私はお二人に任せますよ』


 僕の上に乗っかりながらコルは言う。


「とりあえず今日は商店街の方を歩いてみましょうか。エティエンヌさんからは外出許可も出ているし」

「いつの間に」

「あんたが考え込んでる間によ」

『がろーは良く考える人ですねぇ』

「それが僕の悪いところでもあるんだよ……」


 準備を済ませたヴィクテージがむんずと僕を掴んで腕で抱く。


「さ、行くわよ。バレない程度に喋るのはいいけど、少しでもバレるような素振りしたらドルヒが喉元にくると思ってなさい」

「ヒィエ……」

「商店街見た後はパリ行きの切符の値段を見て……あぁ楽しくなってきた! 旅ってこれだからやめられないのよね!!」

「ヴィクテージが壊れた……」

『奇遇ですねがろー、私も同じこと思いました』


 見慣れないヴィクテージの一面が見えて、僕とコルは少しだけ身震いをした。

 ……そういえば、ヴィクテージがこうして旅に出た理由って、出会った時から詳しく聞いてないな……今度聞いてみようか。

 そう思いながら、僕は慣れない視点での一日を過ごすことになったのであった。

ご一読お疲れ様でした!

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あの日、私はあなたの栞だった。も是非、御一読お願いします。
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