あの時のこと
お久しぶりです更新でーす!!!!
挿絵はまた描き次第入れますんでよろしくお願いします((●゜ν゜)
「あっちょっとシュリー! 僕がじゃんけんに買ったんだけど!?」
「へっへーん! こういうのは早いもん勝ちなのよんっ」
十二月二十五日。
給食がクリスマスケーキで、友達のシュリーと争奪戦を繰り広げていた日だ。印象に残りすぎていて、今でも日付が忘れられない。
あまりにも唐突にして突然の出来事。いつも通り学校に行って、いつも通りの授業を受けている時に……他校の生徒が、雷魔法で上から奇襲を仕掛けてきたのだ。
一〇歳以下の生徒達は、すぐに全員安全なところへと避難させられた。
「急ぎなさい、死ぬわよ!!」
「こっちですよ〜!!!」
僕、メイル、シュリー、名草の四人はその避難の誘導をしていた。
その時に避難しそこねて、戦争に『巻き込まれた』のだ。
「ねぇ、何人いるのよあれ……」
メイルが、押しかけてくる他校の軍勢を見据えて呟く。
メイル=ガーマイア。
外国人の国籍を持つ、人間の女の子。
『混属性』の持ち主で、成績も優良な僕の友達だ。
魔法界は基本的に人間しかいない。たまに異世界からやって来たという人がポツポツ現れて、大体は魔法学校に通って元の世界に戻る……そんなことが当たり前のように起こる世界だ。
だから、異世界転生や異世界転移は信じている方だった。
「分からない……でも、止めなきゃいけないのは確実だよ」
「それは分かってるよ。でもがろー、あんたあまり魔法得意じゃないでしょ。入ったばっかなんだし、使い方も分かってないんじゃないの?」
「そりゃまぁ、そうだけど」
この時の僕はまだ魔法学校に入って一年も経っていない未熟者。それでもメイルやシュリー、名草のお陰でなんとか中級魔法使いまで階級を上げることが出来た。
先生も皆驚いており、『才能がある』と僕を褒めたたえてくれた。
でも、この時の僕は魔法を使う感覚がいまいち分からない。それ故に、人を傷つけられない内面的な性格だった。
「でも、やれないなりになんとかやってみる」
しかし、メンタルだけは鋼の持ち主であり、これまでに昇級試験を幾度も受けて落ちても弱音を吐かずに、逆に見返してやろうと言うくらい負けず嫌いの性格でもあった。
「メイルー、がろー! 応戦に来たよーん!」
「お二人共無事ですか!?」
シュリー、名草も同時に到着して、いつもの四人が集まる。
五〇を超える他校の生徒が僕達の目の前に立ちはだかり、宣戦布告を受けていた。
「……死んだらごめんね」
片手を前に差し出し、歯を見せてメイルは笑っていた。
この時のメイルの目が、何処か儚く寂しげで。
違和感を持ったことを言う余裕もなく、メイルは他校の人々へと走って突っ込んで行った。
「『Fliegen』!!」
刀を振り、風魔法で次々と吹き飛ばしていく。
エティエンヌさんと戦った時に放った魔法は、この時のメイルから目で見て盗んで使えるようになったのだ。
僕は魔法が苦手な代わりに、母から剣術を習っていた。
木刀を持ち、合気道や武術技なども使って、僕が見た限りでは全員殺さずに気絶させていたのだった。
「ちょっと!! これ何人いんのよ!?」
シュリーや名草も珍しく苦戦しているらしく、魔法を使いながら息を切らしている。
このままだとやられる。
そう思った矢先だった。
突如、プツンッという音と共に、まるでテレビの消えたような視界が左目を襲う。
左側が真っ暗になる。同時に鋭い痛みが頬を走った。
斬られたのだ。しかし僕が戦っていた相手は剣を持っていない。
そうなると、杖に魔法をかけて先を鋭くし、僕に向けて振りかざしたとしか思えなかった。
そんな負傷をしたのにも関わらず、僕はその相手すらも殺さなかった。殺せなかった。
『人殺しは手を汚す』。それだけは絶対にしたくなかったんだ。
相手の魔法使いだって、将来はいい婿さんや嫁さんになるかも知れないのに、奪ってどうするつもりかと。
そう思うと、木刀の鞘に収められた玉龍刀を抜くことが出来なかった。
「あと何人くらい!?」
メイルが僕の前にやって来て、彼女は僕に問いかけてくる。
「分からない……あと二十はきったと思うんだ」
未だ相手をしている名草の背中を見ながら、僕は不安そうに呟く。
全ての始まりは僕の学校の生徒が殺された事だ。
そんな一人の人から、こんな大規模に発展する戦争があって良いものなのだろうか。
これが、魔法の使えぬ一般人の住む世界ではなくて本当に良かったと思う。
犠牲になるのは僕達だけで充分だ。
そんなことを思っていた時だ。
「……!? 危ないぞメイル!!」
メイルの後ろから、不意打ちをかまそうとしていた他校の生徒が見えたのだ。
僕が咄嗟に気づけたのが幸いだった。同時に彼女を押して、僕が代わりにそばの崖に転落したのも、僕にとってまた幸いであった。
それからのことは、よく覚えていない。
上級魔法をもろに受け止めて助かる身体を持つ人間なんて、この魔法界には存在しない。
ただただ、地面の冷たい感触が記憶に残っていた。
意識が薄れかけた時、彼女が僕の身体を抱き上げて微かに呟いていた言葉を、僕はしっかりと聞いていた。
「『возрождать』」
その言語は、彼女の故郷であるロシア語から来ていた。
ロシア語が分かる先生に、後で意味を調べてもらった時、その先生がぼやいていた。
この魔法界には使ってはいけない禁忌の魔法があると。
それは、『人を甦らせること』と『運命を変えること』……『蘇生魔法』と『運命魔法』だった。
蘇生魔法は、その人の息を吹き返す代わりに、代償として自分の命を捧げなければいけない。
そして、蘇生魔法を使用した者はこの世から消え去ってしまい、やがてその者に関する記憶も薄れてしまう。
だから、忘れないようにと屋上の石碑にメイルの名前が刻まれてあるんだ。
運命魔法は、その時の運命を魔法で覆してしまう恐ろしい魔法。いつ誰が、どこで使っているかすら分かりえない、危険な魔法。
この世は等価交換の法則で成り立っている。何かを得る代わりには、それなりの代償を支払わなければならない。
人を生き返らせるのにも大きな代償が必要になることを、僕は知っていた。
だからこそ、そんな禁忌を犯そうとしている友人を、僕は精一杯手を伸ばして止めようとしたんだ。
でもそれも虚しい限りで、僕は意識を手放してしまった。
次に目が覚めた時には、もう戦場は静かになっていた。
近くにはシュリーや名草もいて、僕の意識の回復を待っていてくれていた。
虫の息寸前だった僕の意識ははっきりとしていたが、なにがあったのかすぐには把握できずにいた。
なにをしていたんだっけ。そうだ、戦争で、僕が重傷を負って……。
そこまで考えたところで、僕は一人の人を思い出した。
メイルだ。
そうだ、メイルは。あの子はどうなった? あの子は確か、僕に蘇生魔法を使ったはず。
「ねぇ、メイルは!? どうなったの!?」
「……それが……」
シュリーの言葉が止まる。
僕が疑問に思っていると、彼女は震えた声で何かを呟く。
「がろーが生き返った代わりに……」
「え?」
「……」
聞き返してもそれ以上何も答えてはくれず、ただ俯いて黙り込むばかり。
生き返った、代わりに。
復唱して次に出る言葉を予想してみた。
答えなんて、一つしかないのに。一つしか導き出せないのに。
「……嘘だ、嘘だよそんなこと」
「本当なんです……私達が来た時には、もうメイルさんはいなくて、このリボンしか……」
僕の隣でそう言った名草の手には、メイルが巻いていたリボンが縛られた状態のまま握りしめられていた。
自覚していても、とてもじゃないけれど受け止められなかった。メイルが自分の命を使って僕を生き返らせたなんて。
「……ごめん、僕があの時……」
「がろーさんは悪くないです、メイルさんももちろん悪くないんです。どっちも……どっちも悪くないんですよ……」
「やめてよそんな、嘘だって言ってよ……」
静かになった戦場の最中で、僕は名草の持つリボンをじっと見つめていた。
後悔しかなかった。あの時庇っていなければメイルは死んでいた。でも、僕が庇えば、こういう運命が待っている。
どうすることも出来なかったんだ────。
***
真夜中の月が窓から仄かな光を凝らし、ヴィクテージの顔が見えにくくなる。
一瞬だけメイルに見えて、自然と悲しくなってしまった。
「そんなことが……」
「そ。僕が必要以上に君を守るのは、僕みたいな運命を辿らせたくないからなんだよ」
スヤスヤと寝息を立てて眠っているコルを静かに撫でながら僕は言う。
『女の子は傷つきやすいの。だからデリケートに接しないと離れていっちゃうのよ?』と母さんが言っていたけれど、こうして女の子と一緒に生活を共にすると本当の事なんだなぁと実感させられる。
いつもの仲良し四人組は、僕以外の三人は全員女の子だったからある意味良かったと思う。
「ヴィクテージの過去は、話したくなかったら別に話さなくてもいいさ。僕が勝手に話したことなんだから、もう少し信用してからの方がいいだろう?」
「まぁ、そうね。……もっと、あんたのことを信用出来るようになったら、その時に話すわ」
「うん、待ってるよ」
今のあの子には、信用を理解させる必要がある。
前に聞いた時に、ずっと一人で旅をしていたと言っていたから、尚更だ。それが遅かろうと早かろうと、僕はヴィクテージ本人に任せることにしている。
彼女はやがて背中を向けて「おやすみ。起きたら頑張りましょうね」と口にし、それ以上言葉を発することは無かった。
御一読お疲れ様でした!!
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