表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

お手合せのこと

母が引越し先に行っている間に更新!

良かった……更新できて…………

「やり合うってつまり、僕達とですよね?」


 杖を構えながら僕は言う。

 突然のことに当然ながら頭は回っていないが、まずは状況確認程度にあたりを見渡す。

 数はさほど多くはない。かと言って、少ない訳でもない。目で見ただけで五○人は軽く超えているだろう。


「そういう事さ。それを見積もってここに来たんだろー?」


 けらけらと愉快に笑いながらエティエンヌさんは返答してくる。

 こちらから攻撃するのをわざわざ待ってくれているようだ。なんともありがたいこと。

 その待ってくれている間で、僕はあらかた状況の整理、戦闘方法を整理した。

 ()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()

 そう思った。何故なら、相手は皆剣や盾を持っている。

 魔法は遠距離にも近距離にも使える。だが基本的には遠距離の攻撃が多い。

 そうなれば、近接戦に魔法を持ってくることは、あまり良くないと考えたのだ。

 ん、いやでも待てよ……?

 思いついた。最善の方法を。

 ヴィクテージとコルを物陰に誘導すると、『私も戦いましょうか?』と、コルが言ってきた。


「いいや、その必要は無いさ」


 ヴィクテージに杖を渡し、微笑んで僕は言う。

 ヴィクテージは『それだけの自信があると言うの?』なんて言いたかったのだろう。

 そんな訝しげな目をしていたから。

 立ち上がって、僕は各々の持つ武器を構える軍勢を見る。


「ちょ、ちょっと……! 杖はどうするのよ!?」

「いらない。この戦闘には必要ないよ」

「じゃあどうやって……」


 左胸付近に右手をかける。

 そこには、一本の木刀があった。

 母、綿藻わたもから貰った大切な木刀、『玉龍刀ぎょくりゅうとう』だ。中にはちゃんと、鋭く光る刀が仕込まれている。

 今日は一つだけ驚かせてあげようか、と思い、鞘から刀を抜く。軍人とはいえ流石に殺したら犯罪だし、気絶程度に済ませよう。


「おや? 魔法は使わないのかい、つまらんねぇ。見てみたかったんだけど……」


 エティエンヌさんの言葉を聞きながら、僕は玉龍刀を構える。

 こうして見ると、魔法大戦争を思い出す。あの時もこんな風に、大量の他校の生徒が押し寄せてきて、僕とメイル、シュリー、名草の四人で止めたっけか。

 でも、今はその三人はいない。僕一人で二人を守らなければいけない。

 能力や魔法が当たり前に飛び交う僕の世界では、この刀は極めて攻撃力が高かった。

 メイルも玉龍刀と同じ素材でできた『翼龍刀よくりゅうとう』という木刀を持っていて、僕のと同じような木の鞘に収められている。

 この刀と翼龍刀の他に『朱龍刀しゅりゅうとう』、『白龍刀はくりゅうとう』があるけれど、それはまた別の人が持っていると、母から聞いた。


「……一つ約束してほしい」


 夜の月光で輝く玉龍刀が、仄かな青い光を纏う。


「後ろの二人に手を出さないで欲しい。もし出したら、僕は何をするか分からない」

「んむ、分かった。それは約束しよう!」


 それは良かった、と言いたかったが、集中するために淡い微笑みを返した。

 僕は一人一人対等にやり合うつもりは無い。

 というか、ここから動く気すらない。


「『Fliegen(飛ばせ)』」


 僕が唱えると、刀に纏う青い光がより一層強くなる。


「かかれ!!」


 そんなエティエンヌさんの声とともに、五〇を超える軍勢が一気に正面へ進み出す。

 だが、それも遅い。

 軍勢が通る前辺りに、僕は刀を左から右へと半円を描くように軽く振る。

 次に刀を上に上げた途端、巻き起こった強風により軍勢は一つにまとめられ、上から下へ振り下ろした刀の動きと合わせて一気に落とされた。

 風を操る魔法だ。

 普通、魔法は自分の魔力を杖に通して、魔力を魔法に変換して発動する。

 しかし魔力を通す物の対象は、杖だけとは限らない。それはステッキでも、丸太でも、氷でも、炎でも、なんでも対象になる。

 杖で今の魔法を発動し、持ち上げられる人数は最低でも一〇人。

 杖よりも大きい物に魔力を通せば、対象の人数はもちろん増える。

 面倒くさがりな僕の性格且つ相手はこの大人数だ。それなら、杖よりも大きな刀に魔力を通して風魔法を発動した方が一気に持ち上げられるし、効率がいいじゃんって話だ。


「な……!? 使わないんじゃなかったのか!?」

「いやぁ、君は言ったけどさ、()()()()()()()()()()。無駄な勘違いは困るなぁ」


 刀を軽く斜めに振りながら、僕は笑い混じりに答える。


「どうする? まだやる? やるって言うなら抜くけど」

「……いや、私のお手上げさ。こーさん、こーさん!」


 エティエンヌさんは両手を上げて降参の意を示していた。

 それにホッと胸を撫で下ろして、刀を鞘に収めた。


「さて、用は済んだし中に戻ろうかな……あぁ、仲間なら大丈夫だよ。気絶程度に落としただけだから。明日になったら回復してるって」


 ニコニコしながら、エティエンヌさんにそう言った。

「ヒィェ……」と彼女の怯え声が聞こえたのを背中で受け取り、僕は二人のもとへ向かい「中に戻ろ、僕疲れた」といつも通りの口調で話しかけてみた。

 怯えないかな……大丈夫かな。


「……え、えぇ……戻りましょうか」

『凄かったですがろー、あなたって凄いんですね!』

「同じ言葉を連呼してるのに気づいてないのかい?」


 戻ろうとした時、「待って!」と呼び止められる。

 振り向いた時に既に駆け寄ってきていたエティエンヌさんを見据えながら「何ですか?」と一言呟く。


「……私達じゃあ、ダンジョンを攻略できない。だから、あなた達に全てを託したい」

「そう言われても、僕達は全てが全て完璧にできる訳じゃないんですよ? 僕にも元の世界に戻るっていう目的がありますし……」


 もう目が覚めたのか、先程戦った軍人の何人かが彼女の後ろで頭を下げている。


「あなた達にしか出来ません! どうかフランスを助けてください!!」


 軍人の一人が、頭を下げながら声を張る。

 それに便乗するかのように「お願いします!」と、次々と声を上げられてしまった。


「……頼む、私からもお願いだ。父の願う『平和』と言うやつを……見てみたいんだ」


 とうとうエティエンヌさんまで頭を下げてしまった。


「だって。どうする? 僕はどっちでもいいんだけど……」


 後ろの二人に視線を移す。

 コルは『私は構いませんよ』と賛同してくれた。

 ヴィクテージはと言うと……。


「……まぁ、あんたがいるから平気でしょ。私も賛成よ、冒険は好きだし」


 少々複雑そうな表情をしながらも、賛成のようだった。

 視線をエティエンヌさん達に戻し、「分かりました、引き受けます」と言うと、顔を上げてお礼を言われた。

 そんなお礼を言われるようなことしていないと思うんだけどなぁ……なんて思っていた。

 エティエンヌさんに先に戻るように言われ、「あなたはどうするんですか?」と聞くと「全員目が覚めるまでここに居るさ」と、未だ気を失っている多くの軍人達の方を向く。


「皆が皆、荒れくれた戦場を共に駆け回った私の戦友達なんだ。先に戻るなんざ、親が子を捨てるのと同じようなものさ」


 右手をひらひらと軽く振りながら、小さな司令官はそう静かに呟いた。


 ***


「あんた、まだあんな技隠し持ってたのね」


 深夜二時過ぎ。

 ベッドの右端で、ヴィクテージは小さく口にする。


「隠していた訳じゃないさ。ただ使う機会が無かったんだ、傷つけたくなかったし」


 僕は魔法を使い始めてから、人は傷をつけずに気絶や寸止めで勝負は終わらせていた。

 魔法大戦争の時もそうだ。殺せと先輩から命じられたのにも関わらず、僕は誰一人殺さずに全員気絶させて終わらせたのだ。


「面白いことを言うのね、あんた」

「どこが面白いのさ?」


『面白い』

 その言葉を疑問に思った僕は彼女に問いかける。


「魔法を使っている時点で人を傷つけているじゃない。それがたとえ殺していなかったとしても、打撲や骨折……それだけでも『傷つける』に入らないって、そうやってあんたは言いたいの?」

「でもそれは必要最低限の『傷つける』だろう?」


 彼女は押し黙る。沈黙が続き、軽く息を吐いて僕は言葉を続ける。


「君の言っていることは正論だ。戦闘で魔法を使えば、確かに相手は傷つく。それで『魔法』という存在が怖くなり、やがて『魔法使い』までもが怖くなる」

「……」

「僕の住んでいた世界……魔法界はね、今から十年前……七歳の時に、大規模な戦争があったんだ」

「戦争?」

「そう。魔法大戦争っていうんだけどね。他校と僕の学校が、魔法で殺し合う……文字通りのそんな戦争さ」

「……」

「年に一度、中華街付近にある魔法耐性が施されたドームで『魔法大会』っていうものが開催されるんだ。その名の通り、学んだ魔法で他校の相手と階級ごとに競い合う大会さ」


 他校との交流を深めるために、魔法協会が仕立てた戦闘系の大会。

 僕の学校でも多くの生徒が、毎年魔法大会に参加しては優秀な成績を収めていた。

 選抜で選ばれて、その次に立候補という形で、クラス内から抜擢ばってきされる。


「僕や僕の友達もその参加者の一人だったんだ。皆楽しそうに競っていたんだ。でもね、一〇年前の魔法大会の時かな……僕が七歳の時、友達と観客席で試合を見ていた時にちょっとした事件が起きたんだ。なんだと思う?」

「……?」


 もぞ、と彼女の潜っている布団が僅かに動く。

 彼女の視線だけが、僕を映している。


「他校の生徒が、僕の学校の生徒を殺したんだよ」

「え……それって犯罪じゃないの、その生徒はどうなったのよ?」

「勿論捕まったさ。今も釈放はされていないと思うよ」

「そうよね……」

「……それが戦争の火種だったんだよ」

「火種?」


 完全にこちらを向いて、話を聞く体制になったヴィクテージを見て、僕は次の言葉を飲み込んでしまう。


「話そうか? 僕の小さな頃のお話」

「……信用するには、自分の過去を話さなきゃいけないし……私も話すわ。だから、話してよ。戦争がどれだけ酷いものなのか」


 戦後に産まれた彼女は戦争を知らない。

 だからこそ、知ってもらいたいと思った。


「じゃあ話そうか。あの時の、僕の『運命』を」


御一読お疲れ様でした!!

よろしければ評価、感想、レビューよろしくお願いします!!執筆の励みになります( ´⚰︎` * )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日、私はあなたの栞だった。も是非、御一読お願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ