第55話 戦争を続ける理由は
感想を頂きました。ありがとうございます。
別の作品でのことなのですが、感想への返信コメントがネタバレになっているとの指摘を受けたので、感想への返信コメントは今後は前書きに書くのを控えようと思います。感想欄には書かせて頂いているので、そちらを御参照下さい。御理解のほど、宜しくお願い致します。
建国記念祭は歌って踊って馬鹿騒ぎをする祭である。
城では食べて飲むだけで終わるのかと思っていたら、祭らしく催し物もあった。
ミュージカル調の演劇で、タイトルを『アラグレア建国物語』という、そのまんまな催し物だった。
建国記念祭の時に決まって行われる演劇なのだ、とリベロが教えてくれた。
内容は、タイトルが表す通り。魔族の国アラグレアが建国された時の話だ。
その昔──アラグレアがまだ存在しなかった時代。人間と魔族は、共に手を取り合いながらクロエミナ国で暮らしていた。
人間は魔族に料理を教え。魔族は人間に魔法を教え。
共存の道を歩みながら、長き時を過ごしていた。
このまま両者は共に繁栄の道を歩んでいくのであろうと、この時の人々は明るい未来の訪れを信じて疑っていなかった。
だが、ある時、転機が訪れる。
人間が、魔族を裏切り迫害を始めたのだ。
魔族は自分たちが教えた魔法の力によって国を追われ、遠くの地へと追いやられた。
魔族は長き旅の末に辿り着いた土地に、自分たちの国を作るべく立ち上がる。
そうして誕生したのが、アラグレア国だ。
己らの国を作り、そこを永住の地と定めて新たな暮らしを始めた魔族は、一人の魔族を国王に選出する。
それが、現在の魔王である。
魔王は自分たちを裏切り迫害した人間に復讐するべく、力のある者を募って軍隊を作り上げ、クロエミナ国に──人間に宣戦布告をした。
そして、千年が過ぎ。
未だ続く両者の闘争に終止符を打つべく、人間は新たな力を戦場に投入した。
それが、召喚勇者。異世界から呼び寄せた戦士である。
召喚勇者という楔が戦に打ち込まれたことによって、戦況は動きを見せ始めている。
人間が勝つのか、魔族が勝つのか、それはまだ分からない。
だが、いつかは終焉が訪れる。それを信じて、戦士たちは今日も戦い続けるのだ──
人間と魔族って、元は一緒に暮らす仲だったんだな。
まるで、今の俺と厨房の連中のような関係じゃないか。
今こうして繰り広げられている人間と魔族との戦争は、人間の裏切りが発端になって引き起こされたのか。
どうして、人間は魔族を裏切ったんだ?
それさえなかったら、今の戦争が起きることもなかっただろうに。
その疑問をリベロにそれとなくぶつけると、彼は少し考えた後にこんな風に答えた。
「人間は……魔族に嫉妬したのかもしれないね」
嫉妬……か。
人間は自分にないものを持つ存在を羨み妬む醜さを持つ生き物だから、魔族を迫害したのかもしれない。
俺は人間だから、人間たちが魔族を迫害した心理は何となくだけど理解はできる。
理解はできるけど──それを肯定しようとは、思わない。
変えなくちゃ駄目だ。人間と魔族は相容れないという現代の常識を。
それができるのは、召喚勇者である俺だけなのかもしれない。
「何で、戦争してるんだろうな……みんな」
俺の呟きは誰にも拾われることなく、賑わいに吸い込まれるように消えていった。




