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お嬢様は本日も現実を無双する  作者: シロネル


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3/4

第3話 お会見の準備をいたしますわ!

『――それでは本日のニュースです。探索者協会会長、“深紅の聖女”ことメリー・アストレア氏による昨日の単独殲滅作戦について――』


「うわ、またやってますわねぇ」


翌朝。

わたくしは執務室のソファで毛布にくるまりながらニュース番組を眺めていましたの。


大型モニターには昨日の惨状がこれでもかと映し出されておりますわ。


地面を抉る巨大なクレーター。

吹き飛んだ高架道路。

半壊した物流センター。

そして中央に立つ、髪をなびかせたわたくし。


なんですのこのラスボスみたいな映像。


『なお被害総額は現在試算中ですが、専門家は数十億規模になる可能性も――』


「人命救助の功績をもっと前面に出しなさいませ!!」


『一方SNSでは、“助かった”“ありがとう会長”という声のほか、“被害の八割は会長本人では?”との意見も――』


「ぐぬぬぬぬ……」


ソファの上で毛布を噛みしめていると、自動扉が開きましたわ。


「おはようございます、破壊神」

「朝の挨拶が失礼すぎませんこと!?」


瀬波ですわ。


今日も無駄に整ったスーツ姿。

髪もきっちり。

ネクタイも曲がってない。

くたびれた顔だけが唯一の人間味ですわね。


「定例会見まであと一時間です。そろそろ準備を」

「いやですわ」

「子供ですか」

「会見って嫌いなんですのよねぇ……記者の方々、すぐ“今回の被害についてどう思いますか”とか“自衛隊との連携は”とか“国際的影響は”とか聞いてきますでしょう?」

「実際重要ですからね」

「もっとこう、“本日の紅茶はいかがでしたか?”とか、“そのドレスのブランドは?”とか聞くべきですわ!」

「探索者協会会長に求められてるのはお嬢様雑誌の取材じゃないんですよ」


瀬波は慣れた様子でタブレットを操作しながら続けます。


「それと本日、新規探索者育成プログラムの件で海外代表団が来日します」

「海外」

「はい。アメリカ、イギリス、フランス、韓国、その他数か国ですね」

「めんどくさいですわねぇ……」


魔素という概念が存在し始めてから約二年。


世界は急速に変化しましたわ。


従来兵器では対処困難な魔物。

突如覚醒する超常能力。

各国で乱立する探索者組織。

利権。

陰謀。

政治。

軍事。


人類は一致団結どころか、めちゃくちゃ揉めておりますの。


そしてその中心にいるのが――


「わたくし、なんですのよねぇ……」


世界で唯一。

魔素理論を体系化し、

安全運用し、

量産教育し、

さらに空間転移まで扱える人類。


それがわたくし。


「……本当に、なんでこうなりましたの」


前世では毎日上司に怒鳴られながらExcelと格闘していた普通の社畜でしたのに。


異世界転生して、

悪役令嬢になって、

世界最強になって、

現代帰還したら、

いつの間にか世界の重要人物。


人生ってわかりませんわね。


「ちなみに本日の海外代表団ですが」

「はい」

「全員、“メリー・アストレア本人による実演指導”を希望しています」

「嫌ですわ」

「却下済みです」

「仕事が早い」


瀬波、有能すぎませんこと?


「代わりに模擬演習だけ了承しておきました」

「模擬……」


その瞬間。


協会全体に警報が鳴り響きました。


『――緊急警報。東京都第三層地下区画にてゲート反応確認。危険度判定、AAA。繰り返します――』


「あら」


瀬波が舌打ちします。


「最悪のタイミングですね」

「フィーネ様の朝活配信までには終わります?」

「そこを基準にしないでください」


モニターへ映し出されたのは地下鉄跡地。


現在は封鎖区域となっている旧地下インフラ。

そこに巨大な魔素反応。


しかも。


「……へぇ」


わたくしは少しだけ目を細めました。


「これはまた、ずいぶん懐かしい感じの魔素ですわね」


空気が違う。


この世界の魔物とは微妙に質が違う。


もっと濃密で。

もっと古くて。

もっと――


異世界寄り。


瀬波がこちらを見る。


「何かわかるんですか?」

「えぇ。たぶんですけれど」


わたくしは立ち上がり、窓の外を見ました。


東京の空。

高層ビル。

行き交う人々。

平和な朝。


その地下で、わたくしは知っている“何か”が蠢いている。


「もしかすると――」


胸が少しだけざわつきますわ。


嫌な予感。

そして。


ほんの少しの期待。


「わたくしのいた世界と、この世界が本格的につながり始めているのかもしれませんわね」


瀬波の顔つきが変わる。


「……冗談ですよね?」

「残念ながら、わたくしはこういう時に限って勘が鋭いんですの」


わたくしはデスクに置いてあった紅茶を一息に飲み干しました。


優雅さの欠片もありませんわね。


でも。


もし本当に繋がっているのなら。


あの世界の誰かが。

勇者が。

魔王のあの子が。

あるいは――


わたくしを陥れた王女が。


こちらへ来る可能性もある。


「……ふふ」


自然と笑みが浮かんでしまいましたわ。


「なんです?」

「いえ?」


わたくしは髪をかきあげ、外套を翻します。


「もし王女がこちらへ来たなら――今度こそ格の違いというものを教えて差し上げませんとね?」


瀬波が深いため息。


「頼むので東京を戦場にしないでください」

「善処はしますわ!」

「絶対しない人の返答なんですよそれ」


警報が鳴り続ける中。


わたくしはいつものように笑っていました。


だって。


たとえ世界が滅びかけようとも。


異世界が繋がろうとも。


推しの配信時間までには全部終わらせますもの!


それが真のお嬢様というものですわ!!

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