第2話 本日も大忙しですわ!
『えぇ!?なんで~、今の割り込みキャンセル投げはチートよね!?あぁ!もうゲージが!うぇ~、ランクまたさがった~』
「あははは!もう!フィーネ様おもろ~。なんで勝ち確歯ぐきからあんな綺麗に逆転負けできますの!?あはははは!」
画面の中では雑談をしながら格闘ゲーム配信をしているフィーネ様が本日もランクを落としていた。
でも配信を始める時にはまた戻ってらっしゃるから、裏では集中してやってらっしゃるのね
…それかゴースト。。
いやいや、フィーネ様に限って不正行為なんていたしませんわ!なんていったってわたくしの推しなんですもの!
可愛らしいお声に可愛らしい仕草。
ときおり出す歌ってみたではグループで歌っていてもわたくしは聞き取れてしまいますわ!
推しですもの!
それに異世界にいたころの数少ない友人であり、宿敵でもあった魔王と呼ばれたあの子にそっくりなんですもの
は!また感傷に浸ってしまいましたわ!
鑑賞しながら感傷!
…脳内で韻を踏んでいる場合ではないですわね…
「メリー会長、お疲れ様です」
「あら、セバスチャン、ずいぶん早く戻れたのですわね」
わたくしの執務室の自動扉が開かれ(音もなく開くタイプの最新型ですわ!無駄にハイテク!)瀬波が戻ってきた。
わたくしが戻ってフィーネ様の配信を観始めて3時間ほどになりますわ。
先ほどの現場からは車で1時間はかかるから現場の後処理は都合2時間程度で済んだってこと。
ホントに優秀ですわね。わたくしだったら丸々半日はかかりますわ
「えぇ、どこかのお嬢様かぶれさんのおかげで後処理を押し付けられるのも慣れてますからね。それに私の名前は瀬波です」
「あら、それは大変喜ばしいことですわ。執事の成長を促すことができるなんてお嬢様冥利につきますわ」
瀬波の嫌味にもなれたもの。
わたくしはフィーネ様の配信を眺めながら軽くあしらってさしあげますの。
瀬波の嫌味!冥利に料理!
…今日はおかしなテンションですわね…
「私が労働に勤しんでいるあいだ、お嬢様は動画感傷ですか。いい御身分ですね」
「えぇ、わたくしはこの世界を守護する探索者協会の会長様ですもの。雑務はお任せしますわ」
まったく、減らないお口ですわね。
あんまり言いすぎるとジャングルの奥地に転移させますわよ
奥地でお口!チャックに…
思いつきませんわ…
「それでは会長、本日の業務報告や関係各所からの書類、処理地域からの苦情をまとめた署名。首相官邸からの『お手紙』など、こちらに置いておきますので明日の定例会見および国会までに目を通しておいてくださいね」
「あら、わたくし、まだこの世界に来てから日が浅いので難しい言葉はわかりませんわ。まとめて要約したうえでペラ一枚にまとめておいてくださいな」
電子化が進んでるこの世界でも紙媒体の書類はこんなにもあるんですのね。
まぁそれを作っては提出して、差し戻されて修正して…
なんてものを元居た現実世界では寝る時間すら取れずにやっていたのですからよくわかっているのですが…
「そう言われると思いましてすでに用意してあります。明日の定刻にまたお呼びしますので、くれぐれも不用意に出歩かないでくださいね」
「まるで放蕩貴族のように言われますのね。わたくし産まれてこのかた約束を破ったことはないのですわよ。世界の常識や倫理はやぶりますけれど」
異世界では無双しましたわ。
前世知識をふんだんに使って幼少期から基本魔素許容量を増やしたり、
シャンプーやリンス、製本技術に活版印刷。
死なないように実力をあげて、
貴族としての地位をあげ、
ただひたすらにお嬢様を目指しましたわ。
その結果、妬みを買って大空洞に落とされたのですが…
「あなたほど自由な方はいないですよ。それになんでもできますしね。それこそ、この世界の常識なんてものからは逸脱して」
「えぇ、そうですわね。わたくしにできないことの方が少ないと思いますわ。なのでもっと自由に、わがままに、僕は君だけを傷つけないのですわ」
お嬢様ジョークに瀬波は冷ややかな反応
…というか無視ですわね!なんて嘆かわしい!
おっと…世代がバレますわ…
というかパラレルワールドであるこの世界はわたくしが紗理奈だった時より時間軸的には少し前。
まだあのお方達がデビューされてないかもしれませんわ!
そしたらただのわけわからないことを口走ってるやべーやつですわ!
…それならなぜVTuber文化なんて浸透してるんですの??わけわかめですわ
「それでは、また明日」
「はい、おやすみなさいませ~」
わたくしは瀬波が置いていった書類に目もくれずフィーネ様の配信を観ながら適当に流してやりましたわ
…まぁ結局あとで書類には目を通して色々と処理してしまうのですが…
社畜魂も沁みついてしまっていますわ
『あ~!また!!すり抜けからのコンボはなしだって!!うぇ!?ミリゲージからのS2とか!舐めプすな~!!』
今日もフィーネ様はお元気ですわね
…そうですわ!
わたくしも財力と権力をふんだんに使ってフィーネ様と同じ事務所でVtuberとしてデビューすれば!
…いや、中の人と交流するより、虚像は虚像として楽しむのが真のファンですわ
…いや、でも…う~ん、会いたいし話したい。
わたくし、この世界でも人から距離を置かれてますの
そりゃそーですわよね。
未知の力を使う、人とは違うような
バケモノ
ですものね…
今夜もお紅茶が塩辛いですわ…




