第1話 本日もお仕事をいたしますわよ
晴れやかな空、吹き抜ける薫風、わたくしは手に持った紅茶を一口。
「なんて優雅な香り…まるで花園の朝露を閉じ込めたような芳香がふわりと…」
わたくしの足元には、うず高く積まれた大量の魔物の死骸。
「…獣臭く、血なま臭く…吹き抜ける乾いた風に、土埃…」
死骸の山の上で腰に手を当てペットボトルの紅茶(なおラベルはスポンサー契約上剝がされている)を一気飲みしながら叫んでしまいましたわ!
「…ぜんっぜん優雅じゃありませんわ!!!わたくしが目指していたお嬢様はぜったいにこんなんじゃないですのよ!!!こんなハズじゃなかったですわ!!!」
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わたくしの名前はサロメリア・ディアローザ
日本で暮らしていた時の名前は佐藤紗理奈
この世界…現代っぽいけど、ちょっと違う。ダンジョンが発生してしまった現代。
いわゆるパラレルワールドってやつですわね!
そこで名乗ったのはメリー・アストレア(芽里伊・阿須斗玲愛)
名前の由来?適当ですわ!お嬢様っぽいからですの!
いわゆる私は異世界転生者。
からの帰還者。
だと思ったらなにやらちょっと違う世界に迷い込んだ放浪者?いいえ!わたくしはただのお嬢様ですわ!!
ブラックなお企業様で一生懸命働いていたら突然のブラックアウト。
からの赤子スタートの転生を果たしましたわ。
わたくしは頑張った。
とてもとても頑張った。
努力した。
転生知識をフルに使ったチートで。
そして聖女に成り上がってやりましたわ!
…悪役令嬢として…
ただただ本物のお嬢様になりたかっただけなのに、気づいたら世界最強?になっていましたわ…
そして流されるままに王女に騙され勇者様ご一行と共にダンジョン深部へ
そこに拡がる大空洞に突き落とされましたの
最強無双の力で楽々生還してダンジョンボスを張り倒したら光に包まれて…
この世界に転送されましたわ…
最初は現代日本に帰還したと思ったらなにやら様子が違いまして
世界にダンジョンが発生してしまってましたわ…
突如として発生したゲートから溢れてきたのは魔物
人を襲い、建物を壊し、銃火器をもってしても討伐は困難
まさに世界は未曽有の危機…
でも、そのおかげ?で現地の方々では扱えていなかった魔素がこの世界には満ちていましたの
わたくしはお嬢様貴族としてノブレスオブリージュの精神で魔物を駆逐してやりましたわ!
颯爽と!
痛快に!
派手に!
どぱーん!と!
そして身に染みてしまった悪役令嬢ムーブをかましたところで自衛隊にひっとらえ
…連行
…輸送
…ご招待!されまして
あれよあれよと流れに流されて成り行きでなんやかんやしていましたら
探索者協会の会長になっていましたわ!!なんで!?!?
まぁたしかに…世界で唯一魔素を理解し視認でき活用できる人間はわたくしだけなんですもの…
後進を育て、
最強の座を譲り渡して、
築き上げた財力で悠々自適な毎日を優雅に過ごす!
それがわたくしの今の目標ですわ
そのためには血みどろになりながらも魔物を狩って捌いてぶちまけて
ぜったいに本物のお嬢様になってやるんですわ!!!
「メリー会長」
魔物の死骸の山の上で今までの回想をしながら天に向かって拳を握りしめていたわたくしにお声がかかりました
「あら、セバスチャン。本日もご機嫌麗しゅうございまして」
「私の名前は瀬波です。魔物討伐お疲れ様です。そして機嫌はよくないです。」
ぶっきらぼうで愛想の欠片もございませんわね
この男性は瀬波卓郎。
元自衛隊、現在は探索者協会の常任理事。
わたくしが執事として使って
…重宝してさしあげてますの!
「とりあえず報告された魔物の群れはわたくしが駆逐しましたわ!」
「はい、お見事です。ですが協会宛に苦情も届いてます。騒音、器物破損、その他もろもろ」
この世界を守っていますのになんで文句を言われるんでしょうか!?
「あら、多くの人命を救っていますのに結構な言い草ですわね」
「普通の人はアラートが出た瞬間に座標指定転移して、広範囲火力魔法で見境なく殲滅なんてしないんですよ」
…仕方ないじゃないですの。
もうすぐわたくしの推しのVTuber、フィーネ様の配信が始まりますのよ。
逐一来る報告に指示を出して状況判断をして、
派遣隊を指揮、
広報支援部隊の編成に、
各関連団体、
政党に連絡。
首相の判断を仰いで許可が出たらそれをまた逆の道筋で伝達連絡。
そんなことをしていてはゆっくりお紅茶を飲みながらのんべんだらりんと配信を鑑賞できないじゃない
「細かいことはよろしくてよ。さぁ、撤収いたしますから後処理は任せましたわ。セバスチャン」
「…はぁ。まぁ人命を救って世界を支えているのは紛れもない事実ですからね。やり方はどうあれ。そして私の名前は瀬波です」
わたくしはひらひらと手を振って、周囲の魔素を体内に吸収。頭上へ魔語による魔方陣を形成していきますわ。
座標指定、
構築、
安定化、
空間認識、
接続、、、
ここへ来た時と逆方向の魔方陣を形成して魔素供給。
異世界にいた時でもわたくしと魔王とよばれたあの子にしかできなかった転移術式。
この世界ではわたくしにしかできないのですよね
…あの世界はどうなったのでしょう。
勇者達はあのダンジョンを攻略できたのでしょうか。
魔王と呼ばれたあの子は勇者に討伐されてしまうのでしょうか。
ただ、生まれた世界と環境が違っただけなのに。
わたくしのことを幼いころから支えてくれていたお付きの彼女は心配してくれているのでしょうか。
そして、わたくしを亡き者にしようとした王女。
あいつだけはわたくしがいなくなってほくそ笑んでいるのでしょうね。
勇者に媚びを売って無事に落とせているのでしょうか。
わたくしに求婚していた勇者はさぞかし驚き慌てふためいているでしょうね。
…まぁいいですわ!
わたくしはこの世界で今度こそ!本物のお嬢様になってやるんですわ!!!
転送の光に包まれながらわたくしはいままでのこと、
そしてこれからのことに思いを馳せていました
決意を胸に(なお、大きくはない。慎ましくもない。形が重要ですのよ!)
わたくしは今日も現実世界を無双する
2026/5/10執筆開始しました。設定は前作を一部引用してます。




