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カクシ図鑑〜あなたの失くしたものは実は小さな妖怪のしわざかも?  作者: とある三姉妹の父


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4/7

第四話:二つの視界と、消える髪ゴム

「見える」ことと「見えない」ことの境界線。

前話で『カクシ図鑑』を手にしたハルキですが、現実はそう簡単ではありませんでした。

里から戻ったハルキを待っていたのは、以前とは少し違う、けれど決定的に「不自由」な新しい日常です。

第4話では、ハルキが直面する「二つの視界」のジレンマと、学校で巻き起こる新たな異変を描きます。

ハルキは朝から、何度もメガネをかけ直していた。

カクシ里から持ち帰った重厚な本――『カクシ図鑑』をリュックに詰め、登校の準備をする。

昨日の今日で、世界が劇的に変わることを期待していた。けれど、現実は甘くない。

(やっぱり、メガネをかけると……見えないんだ)

メガネをかければ、お母さんの顔も、朝ごはんのパンの焼き色もはっきりと見える。

けれど、その瞬間に「カクシ妖怪」たちの姿はかき消えてしまう。

逆にメガネを外せば、世界はぼやける代わりに、昨日見たピンク色の影や、お母さんの肩に居座る赤黒いイカリカクシが蠢いているのがわかる。

ハルキは、はっきり見える「日常」と、ぼやけて見える「真実」の間で揺れていた。

小学校の教室は、朝からユキちゃんの元気な声で溢れていた。

「ねえハルキ! 私の新しいシュシュ、可愛いでしょ?」

黒髪のツインテールを揺らして笑うユキちゃんは、男勝りで好奇心旺盛な、クラスの太陽のような女の子だ。

しかし、授業が始まった直後、その笑顔が曇る。

パサッ、と軽い音がした。

ユキちゃんの左側の結び目が突然解け、自慢の髪が生き物のようにボサボサに広がっていく。

「えっ、うそ!? また無くなった!」

ユキちゃんが慌てて机の下を探し始める。

ハルキは確信を持って、そっとメガネを上にずらした。

(……いた)

レンズを通さない、ぼやけた視界。

ユキちゃんの椅子の背もたれに、シュシュを抱えてクスクス笑う**『灰色の影』**がしがみついている。

「これ、あの……ええと、例の……」

後ろの席で、分厚い『野鳥大全』を抱えたサトシくんが唸っている。

彼は物知りなのに、肝心なところで言葉が喉に詰まってしまう。

「おい、ハルキ! ぼさっとしてないで鉛筆貸せよ!」

ガキ大将のダンゾウくんが、ハルキの筆箱から勝手に鉛筆を奪っていく。

彼は入学初日から忘れ物ばかりで、いつもハルキの道具を頼りにしていた。

ハルキは、リュックの中で『カクシ図鑑』が静かに熱を帯びるのを感じた。

メガネをかけて正体を暴くのか、外して居場所を突き止めるのか。

ハルキは、自分の「二つの視界」を使い分ける、最初の挑戦を始めようとしていた。


第4話をお読みいただきありがとうございます。

ハルキの能力について、「メガネ越しに何でも見える無双状態」ではなく、あえて「かけるか外すか」の選択を迫られる設定にこだわってみました。はっきり見える世界では妖怪が見えず、妖怪が見える世界では景色がぼやける。このもどかしさが、ハルキの冒険に深みを与えてくれるはずです。

そして、今回も「イカリカクシとさっさと友達になればいいじゃん」というツッコミは一旦スルーさせていただきます笑。

イカリカクシと向き合うには、単に名前を知るだけではない「何か」が必要になる……そんな伏線を、ユキちゃんたちの騒動の中に忍ばせています。

次回の更新では、ついにハルキが「灰色の影」の正体を図鑑に刻みます。お楽しみに!


またレビューにてみなさまの最近失くしたものなどの、エピソードもお待ちしております。

あなたが失くしたそのなにかエピソードのなかにカクシとして登場するかも!?

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