第三話:はじめての登録と、ピンクの正体
カクシ里から戻った翌朝。ハルキはいつものように、視界がぼやけた状態で目を覚ました。
枕元を何度も手で探るが、やはりメガネはない。
(……まただ。でも、今日は昨日までとは違う)
ハルキはそっと、枕元に置いてあった重厚な本――『カクシ図鑑』を抱き寄せた。メガネをかけていない「ぼやけた世界」で、ハルキは目を凝らす。
すると、学習机の上で、朝日の光を透かして**「ピンク色のふわふわした何か」**が楽しそうに飛び跳ねているのが見えた。
ハルキはクローゼットを開け、お父さんが用意してくれた大量の予備メガネの列から、新しい一本を鼻に載せた。
「ガチリ」とピントが合う。
「みーつけた」
ハルキが声をかけると、ピンク色の塊はビクッと震えて動きを止めた。メガネ越しに見るそいつは、大きな単眼にモフモフの体毛、そしてハルキのメガネをいくつも腕に抱えた、いたずらっ子のような姿をしていた。
ハルキは震える手で『カクシ図鑑』を開いた。すると、白紙だったページにスルスルと文字が浮かび上がってくる。
> **【図鑑 No.02:メガネカクシ】**
> **特徴:** ピンク色のモフモフな体毛に包まれた単眼の妖怪。
> **習性:** 持ち主が困る顔を見るのが大好きで、メガネを隠してコレクションする。
>
「……きみ、メガネカクシっていうんだね」
ハルキが図鑑に書かれた名前を読み上げると、ピンク色の妖怪はふわりと宙に浮き、ハルキの周りを嬉しそうに回り始めた。名前を呼ばれたことで、どうやらハルキを「天敵」ではなく「友達」として認めたらしい。
「ハルキ! 早く学校に行きなさい!」
階下からお母さんの怒鳴り声が響く。ハルキは慌てて図鑑をリュックに隠した。
メガネ越しに見るお母さんの肩には、昨日よりも少しだけ赤黒く膨らんだ**イカリカクシ**が、相変わらず不気味に居座っている。
(お母さんの怒りが爆発する前に、もっとたくさん友達を見つけなきゃ)
ハルキは、二足歩行でトコトコとついてくるメガネカクシを連れて、賑やかな声が響く小学校へと向かった。そこには、髪ゴムを隠されたユキちゃんや、名前を思い出せないサトシくん、忘れ物ばかりのダンゾウくんが待っているはずだ。
ハルキの図鑑作りは、まだ一ページ目が埋まったばかりだった。
第3話をお読みいただきありがとうございます!
「お母さんの肩にいるイカリカクシと、さっさと友達になれば解決じゃん!」というツッコミが聞こえてきそうですが……そこは一旦スルーさせていただきます笑。
実は、イカリカクシと本当の意味で向き合うには、対になる別のカクシ妖怪の力が必要だったり、友達になった後に「里に溜まった過去の怒り」をどう処理するかという大きな問題があったり……。ハルキくんには、まだまだ乗り越えなきゃいけない壁がたくさんあるようです。
今後、ユキちゃんやサトシくんの周りに潜む妖怪たちを登録していく中で、そのヒントが見つかっていく予定です。ぜひ、ハルキくんと一緒に図鑑のページをめくっていってください!
レビューにて皆さんの最近失くしたものなどのエピソードもお待ちしておりますのでよろしくお願いします!




