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第4話 頭の中は……


 屋上に行ったあの日から、神谷まほろというトンデモない先輩のことが僕の頭を離れなかった。


 人のお弁当を勝手に食べるな。

 死体遺棄の方法を検索するな。

 屋上の鍵を無断拝借するな。

 しかもその容疑を人に罪をなすりつけるために眼帯なんてするな。

 そもそも立ち入り禁止の屋上に侵入するな。


 見た目が良ければいいってもんじゃないよね。

 照れた顔は可愛かったけど。


 だけど、そういったこと以上に──。


 別れ際にふっと見せた、あの寂しそうな微笑みがずっと強く心に残っていた。

 神谷先輩も寂しいのかな。


 授業中も休み時間も、ずっとそんなことを考えていた。

 昇降口に行ったときなんかは、自然と神谷先輩を探していた。

 家に帰っても神谷先輩にもらった眼帯を見つめながら物思いにふけることが多かった。


 そうやって過ごして一週間ほど経った日──。


 昼休みになり、僕は校舎裏に移動することにした。

 ぼっち飯用にに新たに探索して見つけたスポットだ。


 また屋上に行くことも考えたけれど、忠告を無視したら神谷先輩に嫌われてしまうかもしれない。

 それが怖くてあれから屋上には行っていない。


 僕は階段を下り始めた。


「そういえば今日、神谷を見たんだけどさぁ」


「神谷って、神谷まほろ? いっつも一人でいる?」


「そうそう」


 階段の踊り場で話している先輩らしき女子二人の会話が耳に入ってきた。


「なんか今日、ギターケース持ってたのよ」


「ああ。私も持ってるの見たことある」


「でもあいつ軽音楽部とか吹奏楽部とかじゃないよね?」


「うん。もしかしてケースの中に、なんか怪しい物でも隠してるんじゃない?」


「神谷って不気味なやつだし、ありそうだよね。ウケるー」


 神谷先輩の陰口かよ。

 なんだか嫌な感じだな。

 二人の会話を不愉快に感じながら階段を下りきった。


 少し歩いて渡り廊下に出たところですぐに横に曲がった。

 校舎に沿って歩けば上履きのまま進めるようになっている。

 ちょっと歩いて腰を下ろした。


 校舎裏のここなら目立たない。

 僕はお弁当を食べはじめた。


 食べながらも、相変わらず神谷先輩のことを考えてばかりいる。


 どうも高校にギターケースを持ってきているらしい。

 音楽系の部活に入っていないなら確かに妙な話だ。

 もしかして本当に楽器以外の物が入っているのだろうか。


 だとしたら一体何が?


 その自問をさえぎるように──。


 ドサッ!


「えっ!?」


 いきなり何かが校舎裏の地面に落ちてきた。

 その黒ずんだ何かは僕から10メートルも離れていない場所に転がっている。


「あれはまさか、ギターケース!?」


 慌てて駆け寄ってみると、やはり黒いギターケースだった。


 もしかして神谷先輩が持っていたものだろうか。

 そして急に落ちてきたという不可解な状況。

 中を確かめられずにはいられない。


 僕はギターケースを開けた。


「これは──」


 ギターケースの中身は楽器ではなかった。

 鞘に納められた日本刀が入っている。

 一瞬混乱したけれど、すぐに思い出したことがあった。


「神谷先輩に屋上で会ったとき、やっぱり本当は日本刀を持ってたんだ」


 でも、どうして学校に日本刀を?

 この前も、そして今日も──。


 僕は校舎を見上げた。

 四階の上の屋上のフェンスが見える。


 ギターケースが屋上から降ってきただろうと僕はほぼ確信している。

 そして神谷先輩が、今、屋上にいるんじゃないかとも思っている。


 だけどちょっと手が滑った程度ではあの高く張り巡らされたフェンスをギターケースが超えるなんてありえない。

 だとしたら、何かとんでもない事が屋上で起こっている?


 胸騒ぎがした。


『危ないから、屋上に来ては駄目よ』


 寂しそうな神谷先輩の微笑と声が脳裏によみがえってくる。

 たまらない不安が込み上げてくる。


「屋上に行こう」


 嫌われるかもしれないとかそんなことは考えている場合じゃない。

 僕は日本刀の入ったギターケースの蓋を閉じた。

 それを抱えて走り出す。


 校舎へと入り廊下を疾走した。

 怪訝そうな視線を向けてくる生徒もいたけれどそんなのどうでも良かった。

 ただただ神谷先輩のことが心配だった。


 杞憂きゆうならそれでいい。

 だけどもし、そうでなかったとしたら──。


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