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没落聖女の逆転再出発~一杯のお茶を施した少年が砂塵の王となって、二十年後、私を迎えにきました〜  作者: 風谷 華
第一章

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番外編2 カイルが帝国茶道を学ぼうとした件

 ある日、カイルが少し早めに来て、カウンターに近づいてきた。


「少し聞いてもいいですか」


「何でしょう」


「お茶を淹れることを、学びたいのですが」


 エルザは手を止めた。


「お茶を?」


「ええ。ずっと、飲む側でした。でも、淹れる側を知りたい。あなたが大切にしているものを、知りたい」


 エルザはしばらく考えた。


「……少しなら、教えられます」


「ありがとうございます」



 翌週、閉店後にカイルへの個人レッスンが始まった。


 店長リリーが「私は用事があるので」と言ってさっさと帰った。エルザは店長の背中を見送りながら、用事などないだろうと思った。思ったが、言わなかった。


「まず、お湯の温度から」エルザは言った。「手をかざして、確かめて」


「こうですか」カイルはやかんの上に手をかざした。


「もう少し近く——」


「あっ」


「大丈夫ですか」


「大丈夫です」カイルは平然としていた。「砂漠育ちなので、熱さには強いんです。たぶん」


「たぶん?」


「今、少し熱かったです。でも大丈夫です」


「……次は茶葉の量を」


 カイルは集中して茶葉を量った。非常に真剣な顔だった。真剣すぎて、多めに入れすぎた。


「カイルさん、それは通常の二倍入っています」


「……そうですか。どうしようかな」


「それでも、飲めますか」


「飲めますが、渋くなりますね」


「渋いのも、経験として」


「……無理しなくても、大丈夫ですよ」


 できあがったお茶は確かに渋かった。カイルは一口飲んで、表情を変えずに言った。


「おいしい」


「本当ですか?渋くないですか?」


「渋い。でもおいしい」


「それは……強い味覚の持ち主ですね」


「砂漠育ちなので」


 エルザは少し笑った。声には出さなかったが、口角が上がるのを抑えられなかった。


 カイルはそれを見て、とても嬉しそうな顔をした。


「エルザが笑いましたね。やっぱり可愛いですね」と彼は言った。


「……笑っていませんし、可愛くもないです。もうそんな歳じゃないですし」


「笑っていましたし、可愛かったです。そして、笑ってなくても可愛いです」


「気のせいです」


「可愛いです。確かに」


「カイルさん、次の蒸らしの時間の話を」


「もう一回笑ってください」


「カイルさん」


「わかりました」彼は穏やかに言った。「次の話をします。でも、可愛いのは事実です」


 エルザは顔を赤くしながら、蒸らしの説明を続けた。




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