194話 スキルの変化と後ろ盾
マリンがまたハゲになってしまったその数十分後。
中庭にマルタ、コーラル、ダイアン様が来て、マリンに注目していた。
「皆さん、見ていてくださいね」
マリンが手を前にだして集中。
毒魔法を発動し、前方に毒の玉を撃ちだす。
「おおー! すごいです! 本当に魔法が使えるようになったんですね!」
「お嬢様……素晴らしいです!」
魔法が成功し、マルタとコーラルは笑顔で喜ぶ。
そして……。
「おお……マリン。本当にスキルを制御できるようになるとは……! エレン君、ありがとう。すべて君のおかげだ。どれだけ感謝の言葉を述べても足りん……!」
ダイアン様はハンカチで涙を拭きながら感動し、私の手を取って感謝の言葉を述べる。
(うん、本当によかった……髪のことがバレなくて)
実を言うと、マリンの髪は今綺麗に生えそろっている。
幸いなことに、その場で回復魔法をかけたらマリンの髪は元通りになったのだ。
……ちなみにシトリン様はショックで記憶が飛んだらしい。
本人も気にしてないし、大事にならなくてよかった。
「ダイアン様、まだマリンはスキルを制御できるようになったばかりです。危険な魔法ですし、安全な場所でこれからも訓練させてあげてください」
「ああ、そうだな。しかし……制御できないというスキルの内容を覆すとは……む?」
ダイアン様が急に怪訝な表情になり、マリンを見つめる。
「ど、どういうことだ……?」
「あの……ダイアン様?」
「……君たち、今すぐ部屋に来てくれ。シトリン、コーラル、マリンのことは任せるぞ」
「ええ、分かったわダイアン」
「わかりました、領主様」
そう言って、私たち四人はダイアン様の私室へ案内され、中央にあるソファーに座る。
「あの……急にどうしたのですか?」
まさか、髪のことがバレて……?
「…………」
ダイアン様は難しい顔をしながら沈黙を続ける。
そして、意を決したかのように口を開いた。
「実はな……先ほどマリンを鑑定したのだ。すると、驚くべきことが起きていた」
「え、驚くべきこと……?」
「……マリンのスキル変化していたのだ。『毒生成』から……『宵闇の薬師』というスキルにな」
「スキルが……変化?」
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スキル 宵闇の薬師
薬の原料となる様々な毒を生み出し、操ることが出来るスキル。
どの種類を作り出せるかは本人の知識次第。
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ダイアン様が言うには、こういう内容だったらしい。
「今のマリンにとって理想的なスキルね……」
でもなんだろう?
話がうますぎるような気もする。
「いや、理想的とかどうでもいいですよ! 一体どういうことですか!?」
マルタが急に大声を出しながら立ち上がる。
「クソうさぎ、どうしたのよ?」
「どうもこうもありません! スキルは神が人に与えるとされる特別な力の事ですよ! それが変化するなんてありえません!」
「え?」
思わず「そうなの!?」という目でアルテナを見るが、あいつは「さあ?」って感じで首を傾げた。
く、この役立たず女神……!
「信じられないのも当然だ。私も目を疑ったからな。しかし、実際変化していたのだ……」
「いやいや、それがなんだってのよ? いいことじゃないの」
「そう簡単な話ではない! スキルは人生を決定づける重要なものだ! それが変化するなどと広まれば、どれだけ世界に混乱を巻き起こすかわかっているのか!?」
「え、そこまで大事なの?」
アルテナがポカンとする中、ダイアン様は再び考え込むと、私を見つめながら口を開く。
「エレン君、はっきり言おう。正直君に期待はしていなかった」
「え?」
「スキルは絶対だ。『毒生成』が制御不能なスキルなら、それは覆らないと思っていた」
「じゃあ何故、訓練することを許可したのですか?」
そう思っていたなら、その場で私の案を突っぱねたはずだ。
「……娘の未来のため、藁にも縋る思いだったという思いもある。だが本当の理由は、君の言葉には本当に娘を救ってくれるかもしれないと思わせるほどの、決意と自信がこもっていたからだ。そこで問いたい。君は何者だ? スキルについて何を知っている?」
ダイアン様はそう言って、静かに私の答えを待つ。
……正直に言うと、私なりの確証と考えはある。
だけど、ここでそれを言うつもりはない。
ならば……。
「……いいえ、私は何も知りませんし、ただの人間です。スキルのおかげで他人よりずっと器用なだけの」
私はダイアン様の目を見据えながらそう言い切った。
「それで誤魔化せるとでも思うのか?」
「それよりもダイアン様、ひとつ聞きたいことがあります。マリンのスキルが『毒生成』だったことは公にされているのですか?」
「いや、していないが……それが何だというのだ?」
「だったら、この話は終わりにしませんか?」
「なんだと?」
ダイアン様が怪訝な表情をしながら私を見る。
「マリンのスキルは最初から『宵闇の薬師』だった。ただ制御するのが難しかったから、私が教育して扱えるようにした。それでいいじゃないですか」
世界を揺るがす大事に巻き込まれるなんて絶対にごめんだ。
いっそ無かったことにしたほうがいい。
「そんな話で済まされると……」
「クリス家にとっても、そちらのほうが都合がいいのでは?」
「なに……?」
「マリンを巻き込まないで済みますから」
「……そういうことか」
気付いたようだ。
スキルの変化が大事なら、マリンもその渦中に晒されることになるということに。
「……いいだろう。今回の件は私と、マリンのスキルを知る少数の者たちの胸に秘めておくとしよう」
「ありがとうございます」
「礼はいい。そもそも娘を救ってくれた恩人に対し非礼だったことを詫びよう」
ダイアン様はそう言って、私に頭を下げる。
ほ、よかった。
これで世界に波風立たせることなく終われる。
「ていうか、後ろ盾の件はどうなったの?」
「ポンコツさん、空気読んでくださいよ」
「そうだったな。こちらも約束を守らねば」
ダイアン様はそう言うと、机から魔力が宿ったハンコのようなものを取り出す。
「ギルドカードを出してくれ」
「ギルドカードを?」
「カードに何かすんの?」
言うとおりアルテナとカードを渡すと、ダイアン様はそれに取り出したハンコを押す。
すると、カードになにかの紋章が浮かび上がった。
「これは……?」
「我がクリス家の紋章だ。このギルドカードを持つものが、クリス家と関わりがあることを示してくれる」
なるほど、それは便利だ。
ギルドカードは本人にしか使えないし、失くしても悪用されることはない。
「つまり、この紋所が目に入らぬかー! て奴ね」
「アルテナ、言っても通じないからそれ」
まあでも、実際の使いどころはそんな感じだろう。
私たちを狙うやつが絡んできた時これを見せれば、大抵の相手は退散していくはずだ。
「言っておくが、我が家に泥を塗る使い方をするんじゃないぞ?」
「そうですよポンコツさん。欲しい装備があるからってそれで無理やりタダにしようとか考えないでくださいね」
「しないわよ! ていうかあれ? クソうさぎはギルドカード出さないの?」
「いや、まだ再発行中ですし」
「そういやそうだったわね。でも一週間以上前の話じゃなかったそれ?」
「いやーそうなんですけど、色々あってすっかり忘れてましたね! あはは!」
「忘れんじゃないわよ、このポンコツうさぎ」
「うぐ!?」
ショックでマルタが倒れる。
ポンコツにポンコツ扱いされたんだから無理もない。
……私も言われたら一ヵ月くらい寝込みそうだし気をつけよう。
「まあ、それなら後日また来てくれればいい。
設定が絡む難しい話は書くのが難しい……w
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