190話 魔力操作訓練②
タイトル通りなのは前半だけ……。
大量の血が流れる凄惨な事件が起きた、大体三十分後。
魔力操作の訓練をするため四人で中庭へ来ていた。
「じゃあ、本格的に訓練を始めるわよ」
「わかりましたわエレン先生!」
「頑張ってマリンお姉ちゃん!」
「マリン、気を張りすぎないように頑張るのですよ」
やる気十分のマリンと、それを応援するミラとシトリン様。
よし、早速始めよう。
「まずマリン、あなたは自分の魔力を感じ取れるかしら?」
「魔力……ですか? よくわかりませんわ」
まあ想像はしてたが、やはりよくわかっていないらしい。
「じゃあまずはそこからね。マリン、手を出してくれる?」
「手を……ですか?」
首をかしげながら出したマリンの手を優しく両手で握る。
ここで探知魔法の一つ、魔力視覚を発動だ。
マリンの体内で血液のように流れる青色の魔力を正確に把握する。
「じゃあマリン、あなたの魔力をちょっと操ってみるわね」
「操るですか?」
私の魔力操作技術を使って、マリンに流れる魔力を操る。
他人の魔力だからか、なかなか言うことを聞こうとしない。
しかし、日々暴れ馬のような魔導銃の魔力を制御している私だ。
これくらいなんてことはない。
「魔力を手に集中させてみるわ。どうかしら?」
「なにか……手に何か温かいものを感じますわ」
「本当? じゃあ魔力を足に移動させてみるわね」
「……あ、動きがわかりますわ。これが魔力ですのね」
よし、マリンに魔力を感じさせることに成功した。
「次は、自分で操作してみて」
「えっと……」
マリンは手に魔力を集中させようとするが、うまく集めることが出来ない。
「ごめんなさい、出来ませんわ」
「いいのよ、最初からうまくいくわけないもの」
それからマリンは何回もチャレンジするものの……。
「うまくいきませんわ……」
「いいのよ、焦らないで」
魔力をうまく操れず、マリンが申し訳なさそうに顔を下に向ける。
うーん、なにが足りないんだろう?
……もしかして。
「マリン、魔力を操作するイメージはできるかしら?」
「イメージ……ですか。ちょっとよくわかりませんわ」
やっぱり、それが原因のようだ。
魔法はイメージが大事。
魔力の操作だって当てはまる。
(とはいえ、どうやってイメージさせようかしら…………そうだ)
イメージできないのは魔力が普通、目に見えないからだ。
なら、見えるようにしてあげればいい。
「マリン、もう一回私の手を握って、意識を目に集中してみてくれる?」
「目に……ですか? わかりましたわ」
さて、出来るかどうか……。
私が魔力視覚を発動する時の感覚を、マリンの魔力を介して伝える。
すると。
「まあ、何でしょうかこれは……? 目の前いっぱいに、緑色の光が見えますわ……」
「それは、空気中のマナよ」
成功したようだ。
一時的に、マリンが魔力視覚を使えるようになった。
「自分の体を見てみて。青い光が見えるでしょう?」
「はい、見えますわ!」
「これがあなたの魔力なのよ」
「この青い光が……私の魔力なのですね。しかしエレン先生?」
「どうしたの?」
「先生の体にはほとんど魔力が見えないのですが、それは何故ですか?」
「うぐ!?」
無自覚な言葉のボディーブローが私に入る。
どうせ私はないわよ……魔力も、なにもかも……。
「それはおいといて、見えるようになったし、今度はイメージしやすいんじゃないかしら?」
「そうですね! やってみますわ!」
私と手をつなぎながら、マリンは再び魔力の操作を始める。
その結果、ぎこちない動きだが、マリンは体の魔力を操ることに成功した。
「やりましたわエレン先生!」
「ええ、やったわね。でもまだこれからよ」
私のサポートありで、基礎が少しできるようになっただけに過ぎない。
でも、これは大きな一歩だ。
こうして、初日の訓練は確かな手ごたえを感じて終わったのであった。
……その後、アルテナとマルタが騎士団の訓練場に行ったことを知り、迎えに行こうとした私たちだったが……。
「ちょっとお時間よろしいですか?」
シトリン様にそう言われ、私とミラは再び厨房に来ていた。
「どうしたんだろう?」
「さあ……?」
二人で首をかしげていると、シトリン様が紅茶セットを持ってくる。
「では、まず紅茶を淹れてみてください」
「え、なんでですか?」
「いいから淹れてください。妥協はしませんよ?」
「は、はい」
何故かシトリン様から謎の圧をかけられ、とりあえず厨房にあった茶葉を使い紅茶を入れてみる。
「ど、どうぞ」
「ふむ……どれどれ」
シトリン様は綺麗な所作で紅茶を一口飲む。
「これは……話に聞いてた通り美味しいですね。見事な淹れ方です」
「ありがとうございます」
よかった、口に合ったようだ。
「では次に、ひき肉入りオムレツを作ってください」
「え?」
もしかして、まだ続くの?
「それは……この前マリンとコーラルに出したのと同じものでいいですか?」
「はい。あ、ちゃんとケチャップで名前も書いてくださいね♪」
「わ、わかりました」
この前と同じように、パパっと手際よくオムレツを作っていく。
「エレン様、ケチャップだよ」
「ありがとうミラ。えっと、『シトリン』でいいわよね」
「そこはシトリンちゃんでお願いしますね♪」
「いや、ちゃん付けするような年齢じゃ……」
「何か言いましたか?」
「なんでもありません」
一瞬眼前にナイフを突きつけられたかのような殺気を感じ、黙って名前を書く。
「これでいかがですか?」
「見た目は完璧ですね。ではいただきます」
シトリン様がスプーンでオムレツを口に運ぶ。
「これは……素晴らしいお味ですね。認めざるを得ませんわ」
オムレツを食べたシトリン様は、ほっぺに手を当てながらそう評価する。
どうやらこっちも口に合ったようだ。
よかった。
「では、次へ行きましょう」
「え?」
「まだあるのかな?」
ほっとしたのもつかの間、次は屋敷の廊下に連れていかれ、魔法で掃除するように言われる。
「わかりました……。『小さな竜巻』、『流れる水』、『乾燥』!」
家で使ったのと同じ生活魔法で廊下をピカピカにする。
「これでよろしいでしょうか?」
「やっぱりエレン様すごーい!」
「素晴らしいです。では次に……」
「ま、まだあるんですか……?」
なぜかその後も、洗濯やベッドメイク、裁縫、各種清掃作業、ランプなど消耗品の交換まで教わりながら次々とやらされ、気づけば夕方になっていた。
「エレンさん、お疲れさまでした」
「エレン様、大丈夫?」
「だ、大丈夫よ……」
なんだろう……。
ダンジョン探索並みに疲れた気がする。
「では、結果を報告しましょう」
「え、結果?」
一体何の?
そう思っていると……。
「合格です。こちらを贈呈いたします」
シトリン様が何かを差し出してくる。
それを受け取ってよく見てみると……。
「えっと、これって……メイド服?」
「はい。コーラルから話を聞いてましたが、実際見て確信しました。貴方には優秀なメイドの素質があります。次期メイド長として、これからも頑張ってくださいね」
「エレン様! 次期メイド長だって!」
「あ、ありがとうございますシトリン様! とても嬉しい……ってちょっと待ってください!!」
いつの間にか私、採用試験受けさせられてた!?
「心配いりません。昨日採寸しましたからサイズは完璧です」
「そこじゃありません!」
ていうか昨日から狙われてた!?
「安心してください。ミラちゃんも家で保護しますから」
「そういう問題でもないですから!」
「では、明日の午後から研修を始めますので、遅れないようにしてくださいね」
「勝手に話を進めないでください!」
まずい、このままだと強制的に雇われてしまう!
どうにかしないと……そう思っていた時、ドカーーン!! と大きな爆発音が耳に入る。
「あら、今の音は……?」
「今の爆発は……? ミラ、行くわよ!」
「う、うん!」
ちょうどよく逃げるチャンスを得た私は、爆発音のした方向へ走って行くのだった。
もっとタイトルを凝ったほうがいいですかね?
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