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188話 みんなで温泉です

今回はお風呂回です

 マリンに誘われ屋敷へ泊まることとなった私たち。

 その夕方、お風呂へ入ろうという話になり、みんなで屋敷の浴場へ来ていた。


「ここが屋敷のお風呂場なのね」

「わー! すっごく広いよー!」


 白い大理石が床一面に敷き詰められた、広々とした大浴場にミラがはしゃぎだす(マリンの腕の中で)。


「さすが貴族の屋敷ね。エレン、あたし達の家にもこれくらい大きな浴場作りましょうよ」

「面倒」

「たった二文字で全否定!?」


 アルテナのロマンをいつも通り軽く粉砕する。

 

「それよりも、まだお湯が張っていませんよ?」


 そう言ってマルタが首を傾げる。

 確かに、浴槽の中は空だ。

 おかげで少し肌寒い空気が漂っている。

 

「少々お待ちください。今お湯を張りますので」


 コーラルがそう言うと、浴槽にセットされた水色の魔石に近づく。


「こちらに触れると、お湯が浴槽の中を満たす仕掛けになっております」


 なるほど、そういう魔道具か。

 周りを見ると、体を洗うための、魔石がセットされた蛇口と桶もある。


「うーん……そうだ、待ってコーラル。今回それは使わなくていいわ」

「どういう事ですか?」

「ミラ、ちょっときて」

「はーい」

「あっ」


 ミラを呼ぶと、マリンの腕をするっと抜けて本体と一緒にやって来る。

 

「ミラ、あれを出してくれる? ヴェインから帰るとき持ってきたあれよ」

「あれだね! はーい!」


 ミラが手をかざすと、空中から大量のお湯がドバァァ!! とあふれだし、瞬く間に浴槽を満たしていく。


「まあ! すごいですわ!」

「これがミラちゃんの能力ですか……しかし、このお湯は一体? ほんのりと何やら香りがしますが?」

「これは()()のお湯よ」


 私たちがヴェインで掘り出した時の温泉である。

 こんなこともあろうかと、ミラの収納空間に入れてすこし持ってきたのだ。


「おお、エレンさん乙なことしますねー! ポンコツさんもちょっとは気を利かせて、裸踊りでこの場を盛り上げてくださいよ!」

「宴会か!? てかなんでそんなことしないといけないのよ!?」

「そういう役回りじゃないですか!」

「どういう意味よ!」

「コントはいいから、さっさと入りましょう」


 みんなで服を脱ぎ、体を洗ってさっそく温泉に浸かる。

 

「これが温泉ですか……」

「とっても気持ちいいですわ……」


 温かい湯がじんわりと体に染み込み、温泉特有の香りが鼻を抜ける。

 普通のお風呂とは全然違う気持ちよさに、マリンとコーラルの表情が蕩けていく。

 

「ふう……やっぱり温泉はいいわね」

「あったかくて気持ちいいー……」


 ミラも本体ごと浸かりながら、リラックスしている。

 ミミックも温泉の気持ちよさはわかるらしい。

 それはいいのだけれど……。


「ミラ? 分身の服は脱げないの?」

「うん、脱げないよ」


 霊体のような分身の体には、服を脱ぐということが出来ないらしい。

 まあしょうがないか。


「いやーいいお湯ですね! ミラちゃん、収納にお酒とか入れてないですか?」

「ううん、ないよ」

「ちぇー、やっぱりポンコツさんは気が利かないですねー」

「なんであたしのせいにすんのよ!」

「アルテナ、いちいち反応しないでいいから」

「むー。エレンさん、そんな冷たいこと言わないでくださいってー」

「むぎゅ!?」


 マルタに正面から抱き着かれ、胸に実った双丘に顔がうずめられる。

 いや、なに!? 

 このふっくらとした柔らかさは!?


「放しなさ……! むぎゅ……!」

「ほらほらー? その程度じゃ私から逃げられはしませんよー♪」


 じたばた抵抗するも、私の力じゃマルタを引きはがせない。

 まずい、息が出来ない……!

 

「マルタ……苦し……!?」

「ふっふっふー。こうなってしまうとエレンさんも可愛いものですねー♪」

「……なにアタシの従者に引っ付いてんのよ、このクソうさぎ!」


 アルテナが強引に私とマルタを引きはがす。

 ふう……助かった。

 ……なんか不機嫌そうだけどどうしたのだろう?


「おやおや、そんな怒った顔してどうしましたか? あ、もしかして嫉妬ですか!? もうーポンコツさんもしてほしいなら言えばいいじゃないですかー♪」

「は? なに言って……むぎゅ!?」

「まあ、とても楽しそうですわ! コーラル、私も行ってきますわね♪」

「え、お嬢様!?」

「わーいミラも行くー♪」


 ああ、マリンとミラまで……。

 貴族の浴場で優雅でも何でもない絡み合いが勃発し、巻き込まれないように隅へ移動する。


「にしても……柔らかかったわね……」


 そっと小さくつぶやく。

 今まであまり気にしてなかったが、マルタは私より頭一つ分くらい背が高く、胸も相当でかい。

 ピンク色の長い髪がさらに色気を際立たせている。

 まさにセクシーな大人のお姉さんといった体つきだ。(性格が邪魔してるけど)

 なんだろう、ちょっとうらやましい。


「じー……」


 今度は目線をアルテナに向ける。

 胸こそあまりないが、透き通った張りのあるきれいな肌と、輝くように美しい金髪。

 美少女と呼ぶにふさわしい整った顔。

 女神とはいえちょっと持ちすぎだ。

 イラっとする。


「……(チラッ)」


 マリンは小さく、まるで花のように可憐で、玉のような白い肌と人魚のような美しい水色の髪をしている。

 貴族のお嬢様とはいえ、ちょっと理想的すぎやしないだろうか?


「ミラは……」


 いつも通り可愛い。

 以上。


「それに比べて私は……」


 なんというか、普通だ。

 背も肌付きも普通だし、胸もそこまでない。

 髪も特にツヤのない黒髪だし。

 自分の見た目に対して不満を持ったことはないが、さすがにちょっと劣等感を感じる。


「エレン殿」

「コーラル……貴方は騎士だからか、とても引き締まった良い体をしてるわね。背が高いし胸もそこそこあるし、その燃えるような赤い髪が魅力を引き立たせて……」

「いやいや、なにを言っているのですか!?」


 コーラルが赤くなって私から遠ざかる。

 しまった、実況モードに入ったままだった。


「ご、ごめんなさい。それよりも、マリンを止めなくていいの?」


 今もマリンはアルテナたちとはしゃいでいる。


「あなたなら『お嬢様、はしたないですよ!』って止めそうなのに」

「……ええ、その通りですね。ですが、あのように楽しそうなお嬢様は初めてなので……」

「そうなの? でもマリンにだって楽しく遊ぶ友達くらい……」

「いえ。お嬢様には今まで……友達がいらっしゃらなかったのです」

「え?」


 どういうことだろう?

 マリンの性格なら友達くらい……いや、まさか?


「……スキルのせい?」

「……はい」


 コーラルは悲しげな表情で語る。

 無意識に毒を生成するという危険なスキルを持っていたマリンは、他者と繋がりを持つことを父親であるダイアン様がそれとなく禁じていたこと。

 そのせいで外の世界を知ることなく、今のような世間知らずに育ってしまったことを。


「じゃあ、マリンにとって私たちは……」

「はい。屋敷の外で知り合った、初めてのお友達なのです。お嬢様は大変喜んでおられました。それこそ、髪の毛のことなんてどうでもいいと思えるほどに」

「う……」


 私のせいじゃないとはいえ、それを言われると胸が痛い。

 それに……。


「……さっきはマリンを交渉材料にしてごめんなさい」

「いえ、いいのです。エレン殿達の事情も分かっていますから」

「もちろん、マリンを助けるためにも全力を尽くすわ」

「……はい。お嬢様を……そしてクリス家の未来をお願いします」


 私たちはそう言って握手を交わし……え?


「そこまで大事(おおごと)なの?」

「当り前じゃないですか。このままだとお嬢様は貴族社会に出られませんし……」

「……確かに」


 しまった……だいぶ責任が重い。

 まあでも、こうなってしまったからにはしょうがない。

 私たちのため、そしてマリンのために明日から頑張ろう。


 こうして裸の付き合いをした私たちは、マリンの笑顔の中、楽しく一夜を過ごした。

 ただ……。


「浴場で騒いではいけませんよ?」

「「「「「ごめんなさい」」」」」


 後でしっかりシトリン様に叱られた。

 なんで私まで……。

みんなの背格好などを改めて書いてみました。


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