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ダゴン最初の生贄 摩周虹子 Part1

 注意!この話しには、性的には勿論、流血などの残酷な描写が出てきます。直接的な物はなるべく避けるように努めましたが、察してより書いてしまった方が読み手に登場人物が置かれた状況を理解してもらえると思っています。なので、それでも読まれる方は注意してお読みください。


 三つに分けて摩周虹子が初登場する長いエピソードですが、彼女がどれだけ残酷な目に遭ったか、いわゆる悪魔崇拝者たちの非人道性や残虐性に異常な選民思想の高さを書くには避けては通れない展開だと思ったので、書きました。正直、書いていて辛かったです。よろしくお願いします。




 1


「石橋総理を辞めさせろ!」

「カルト教団の女と関係しやがって! 許さん!」

「総理大臣なれたのも、蛇轟秘密教団の組織票だろ!」

「外務大臣の岩壁! お前のせいで俺たちの故郷の埼玉県はズタボロだ!」

「そうだそうだ! クルド人を勝手に入れやがって! なんで難民のアイツらがBMW乗り回して一軒家を持てて、俺たちより良い生活送ってんだよ!」

「石橋総理辞めるな!」

「今の政権は、蛇轟秘密教団に操られているんだ! だから腐っているんだ!」

「だから早く、あの魚人間の奴らを潰してくれ! 日本はインスマスに牛耳られている!」

「石橋! 岩壁! 村上山! 山井戸! お前ら、あの小汚ない売春島の魚女たちの身体を楽しんでいたのかよ!」

「他の野党の議員たちの名前も画像も見たぞ! お前らまとめて謝罪しろ!」

「総理と外務相と総務相と国交相を逮捕しろ!」

「石橋総理辞めるな!」

『こちら日本国営教育放送協会。ここでニュースです。今現在、国会議事堂前で石橋総理辞めろデモと石橋総理辞めるなデモが行われていて、真っ二つに割れています。原因は、民主主義自由党の石橋いしばし茂明しげあき総理大臣と岩壁いわかべ毅永たけなが外務大臣と村上山むらかみやま義樹よしき総務相、院里いんり夢明むめい党の山井戸やまいど健哉けんや国土交通大臣らを含む他の与野党の現代表や秘書官や二つ前の政権で総理大臣を勤めた立憲共産民主主義党の鷹山たかやま寛貴ひろき議員、以上の名前が名簿に記載されていたのに加えて、本人と思われる映像と画像も世界中に拡散されて流れてきたためだと思われます。』

『こちら財務省前のイチフジテレビの黒埼(光咲)です。相変わらず財務省解体デモは続いていますが、たった今、速報が入りました。ーーー先ほど身元不明の人物から公開された蛇轟ダゴン秘密教団の“お勤め”ファイルに乗っていた、イギリス王室の王子ジョージ・イングリッシュ二世が王室を辞退しました。そして、バチカンのクリーム・パスタ教皇とエルサレムの最高指導者ラビット・セキネキ氏とメッカの最高指導者バタチキ・カリー氏の三人が現行犯逮捕されて、現地の長崎市からこちら東京都の本庁へと護送中です。あと、三人の指導者の他にも、各宗教の最高幹部らも身柄を拘束されたとのことです。ーーーそして、日本国営教育放送協会を解体破壊する党、立憲共産民主主義党、世界平和共産主義党、自由社会主義党、平成白虎隊、国民自由主義党。以上の各代表と秘書官、民間人アドバイザーなどが教団による違法売買斡旋の接待を受けていただけではなく、生贄の儀式にも参加をしていた疑いがあり、本庁の署長と重役たちを除いた現場の刑事たちが早急で送検書類を製作中であるとのことです。ーーーなお、薩摩長州連合党、陰謀論をブッ壊す党、日本UFO対策連合、日本農業繁栄良い世よ来こい世よ連合。の、以上の党代表や議員たちからは教団と院里学会や、学会に関係する日本基督教会と世界基督教会との関わりが見られませんでした。ーーー現場からは以上、黒埼くろさき光咲みさきでした』

『防衛省前のニタカサンナステレビの高山(忠春)です。防衛省と都内の自衛隊基地はいまだに解体デモが継続されていますが、緊急速報が入ってきました。ーーー世界基督教会、日本基督教会、そして院里学会所属の赤奴あかど牛太郎ぎゅうたろう氏、同じ所属で現政権与党のデジタルコンサルタントの母犁宮もれく智輝ともき氏と井東いとう譲三郎じょうざぶろう氏、こちらも同じ所属で院里夢明党の葬祭CEOの牛腹うしばる瀬織せおり氏の三人が、今朝方に蛇轟ダゴン秘密教団の生贄に関係していたのと人身売買の容疑で書類送検されました。ーーー以上、現地から高山たかやま忠春ただはるがお伝えしました』


 同じ時間帯。

 長崎市に戻り。

 路肩に停車中の八百比丘尼の赤いシトロエン。

 車内のコントロールパネルに設置してあるカーナビに映し出されているニュースに、鯉川こいかわふなは白銀色の煙管キセルでタバコを堪能しながら、微かな笑みを口もとに浮かべていた。液晶画面からでも理解できるほど“より一層いっそう余計よけいに”慌ただしくなった東京の様子に、八百比丘尼は助手席のふなに話しかけていく。

「“なかなか”辛い映像ね」

 “お勤め”で鱗の娘たちが、顧客たちに肉体的接待を見ての感想。

「でもなんか、彼女たちに自我が見られないんだけど。ふなさんがやったの?」

「そうじゃ。私の術で、彼女たちに痛みと不快を最大限に軽減してある。妖術とは言っても、まだまだ完全な物ではないからの」

「ふーん。そうなんだ。あなたなりの気遣いなのね」

「“それ”はある。ーーー“お勤め”をさせる際に、預かる女の子たちには必ず親御さんがおる。粗末に扱うなどできぬだろう? だから顧客たちが鱗の娘たちに傷を付けることなんぞ、決して許せぬことじゃ」

「へえ」

「しかし。中には必ずひとりから二人ほど顔と身体に殴られたあとを作って帰ってくる娘たちがいての……。その酷いさまを見るたびに、私は娘らを傷付けた顧客を特定して殺してやりたくなっていたわ」

「あなた……。根っこは悪い“人”じゃなさそうね」

「いいや。私は悪者わるものじゃよ。“ここまで来る”のに、多くの陰洲鱒の娘たちに犠牲をいてきた。絶対に水に流せないことだ。そして、決して善人ぜんにんでもない。よって、今までの行いにあたいするまたは上回る罰を受けねばならん」

「物凄い覚悟ね」

「そうかの?」

「そうだよ。ーーー話しは変わるけれどもさ。宣戦布告の文面に『偏向などの町に悪意を向けた報道が見られた場合は、第二陣のウィルスにより報道機関をブラックアウトします』ってな内容が最後らへんにあったんだけど。本当にソレを用意してんの?」

「あはははは。まさかー。ーーーいくらなんでも、私は“そこまで”無慈悲ではないぞ。ありゃ所謂いわゆるブラフじゃよ。ブラフ。本当にソレまでやってしまったら、レジスタンスではなくテロリストになってしまうぞ」

「そうだよね。あははは」

「あはははは。そうじゃろう? うふふ」

 ちょうど、鯉川鮒と八百比丘尼の会話中。

 赤いシトロエンのカーナビに映るニュース番組。

 同じ時刻。日昇にっしょうテレビ。スタジオ内部。

『えー。緊急で日昇ステーションをお送りします。メインの松田平まつだたいら将慶まさちかです』

『アシスタントの朝日あさひ向日葵ひまわりです』

『突然、お昼に各社SNSと日昇テレビを含めた全国の報道機関に、日本を世界を揺るがすような内容のファイルと映像が流れてきました。日本の政治を裏から操り我々の経済を牛耳る、蛇轟秘密教団がある陰洲鱒町から、許しがたい攻撃を受けました。これは、我々マスコミに対する挑戦状です。世界に宣戦布告したテロリストです。あの町はもう、日本ではありません。現政権が正式に解体解散命令を教団に出しましたが、ぜひとも町にも同じ命令を出していただいて、この日本から消し』

 ブツッ。

 暗転。

 再び、赤いシトロエンの運転席と助手席に戻って。

「は?」眉を寄せた八百比丘尼。

「え?」やや吊り上がった目を見開いた鯉川鮒。

 日昇テレビのメインキャスターである松田平将慶アナウンサーが、マスメディアを勝手に代表した「お気持ち」を述べていたところで、突然スタジオのみならずテレビ局全体の電気がシャットダウンしてしまい、液晶画面が本当にブラックアウトをしてしまった。この無慈悲な事態に、鮒と八百比丘尼の美女二人は少し口を開けた感じで動きが止まり、数秒間ほど沈黙をしてしまった。

 キセルを持ったまま固まっている“人魚姫”を向いた八百比丘尼。

「マジでやったの?」

「わ、私じゃないぞ」

 向けられた疑いに、鮒は焦った。

 当たり前である。第二陣のウィルスには、全く身に覚えが無い。



 2


 同じく長崎市内の離島の陰洲鱒町。

 復旧工事中の摩周安兵衛の家の、倉庫に擬態したマルの“お城”。

 その地下の秘密基地。

 壁に掛けた八枚の液晶画面モニターから離れて、摩周マルは六畳間の御膳で座布団に胡座をかいて残りの揖保の糸を啜り終えていたところであった。チョーコーの飛魚アゴ出汁だしメンツユにヒタヒタに浸けたソーメンを“ズルズルズルル”と気持ちいいくらい大きな啜り音を立てて口に入れて、左右の頬を膨らませてモゴモゴと咀嚼してツユメンを堪能していたとき、八枚のモニターのうち六枚が次々とブラックアウトを起こしていったのを眺めていたマルは、口内の麺を食べながら“ニンマリ”と口角を上げていった。だいぶん咀嚼したところで、氷を入れてキンキンに冷やした地元陰洲鱒町のお茶『磯の薫り』で流し込んでグラスをコースターに置いたのちに、触手の“手のひら”をパチパチと叩き合わせてゲラゲラと喜んでいった。

「だっはっはっはっはっはっは! ザマァ! だから書いていただろ? 悪意が向くような偏向報道したらブラックアウトしますって。私、約束は守るよ」

 手元のリモコンを取り、チャンネルを触手の角の“親指”で器用に選局していく。地上波は江戸前放送局とが流れてきた事実を伝えており、衛星テレビも肉体的接待と生贄に関わった人物たちを写真と今までの素晴らしい経歴を取り上げて報道していた。これらの富裕層たちの世間一般で言われる表向きの顔と経歴はマスメディアとの連携によって“超善人”として報じられてきたが、流出させられたファイルと写真と記録映像によって、“彼ら”のメッキは剥がされてしまった。

 そんなとき。

 八枚の液晶モニターを掛けている壁の机に置いている、緑色のランプが点滅したのに気づいたマルは、お膳の手元のスマホをクリックした。このとき、同時にハッキングしていた衛星カメラからの映像も確認していきながら、潮干ミドリの通信を受けた。

「屋上が増えて、四〇名くらい。降りるのは六階で良い?」

『うん。お願い』

「了解。ミドリちゃんが飛んだらルーフ閉めるよ」

『オーケー。あとは任せたわ』

 彼女の注文を聞いたマルは、八畳間を降りて八枚モニターの机まで歩いていって、デスクチェアーに腰を下ろして烏賊のような白い触手の脚を組み、ノートパソコンの隣にある薄い箱形の黒色の機器の両側の操縦桿そうじゅうかんを立てて遠隔操作モードにした。機器の通信もONにして「ラジコンモードに切り替えたからね」と話しかけて、車内カメラのミドリの様子も確認しながら、マルはその白い烏賊の触手の“手のひら”を器用に使って操縦桿にあるボタンを押して、魔改造トヨダAAのルーフを前方にスライドオープンさせていく。次に、運転席シートに両足を乗って膝を曲げて体勢を整えたミドリを確かめたのち、機器の青色のボタンを押した。直後、油圧によってシートが激しく跳ね上がったのと一緒に、ミドリも飛び上がった。車内カメラでミドリが施設の六階に飛び込んだところを見届けたのちに、マルは再び操縦桿を握って魔改造トヨダを遠隔操作していく。車内カメラと衛星カメラの両者を見ながら、ミドリの愛車を遠隔からバック運転してブロック塀の破壊した部分へと後退していき、再び隣の敷地内の死角に身を隠した。

 役割を終えたマルは、逆探知を防止するために衛星カメラの接続を切って、席を立って歩いていき、八畳間に戻って再び座布団に胡座をかいた。八枚モニターのうちひとつの映像に再度目を向けて。

「馬鹿だねえ。今の今まで陰洲鱒の土地を勝手に利用して、町の女の子たちをさんざん喰い物にしたあげく、なおかつ町に悪意と憎悪が向くように報道を続けてきたからだよ。ウチの荒神が行動を起こさなくても、私は許さない。オマケに、一神教をかかげた世界規模の侵略者がこの国と陰洲鱒町ここを乗っ取ろうとして先陣が上陸しているよね」

 ポチポチと選局しながら、マルの口は止まらなかった。

 長崎地元のローカル局に至っては、ほぼ全局無事ではあった。

「神が罰を下さなくとも、この私が無責任で身勝手な奴らに“仕返し”をしてやったさ。虫一匹殺さなさそうな顔をしやがって、実際は教団と学会から生贄にされた私たちの町の女の子たちを犯して、切り刻んで、食って…………」

 涙声に変わりかけていたが、引っ込めて持ち直した。

「この世に神はいるけれど、悪魔は“実在しない”。だけど、いないというのは“無い”。西洋や北欧で言う悪魔、日本含む東洋の魔物。これらは、お前たち人間の中に確実にいているんだ。私の中にだって“ヤツら”は居る。じぶんの悪意がかたちを持って目の前に現れてくるだけなんだ。そんな“じぶん”の悪い部分に支配されてしまったのが、この映像の連中だよ」

 そう言ったマルが見ている映像はとても古く、日付から見ると令和の今から約六〇年ほど昔であり、動画で確認赤黒いローブを纏った十八人の中年男性や男性老人たち。そして、撮影者は磯野いその波太郎なみたろうであった。画面いっぱいに、黒い画用紙に『ヤーハ島より。ダゴンへの一人目の生贄。摩周虹子。一日目』と白文字で書いた紙をレンズから離したときに、草原に画かれた赤色の円形魔方陣の逆さ五芒星ごぼうせいの真ん中で仰向けで寝ている全裸の摩周ましゅう虹子にじこの姿があった。これを見下ろすかのように、頭が雄牛で首から下は筋骨逞しい男の身体をした、赤黒く巨大な像が蛇の男根を“そそり立たせて”椅子に座っていた。魔方陣を取り囲む十八人のうち、十五人は赤黒いローブ姿であったが、残りの三人の男は素顔を晒した三つ揃いのスーツ姿だった。男たち三人はともに浅黒く、顔中に皺を刻んでいて、見た目は六〇歳以上だと思われた。そして、マルはこの三人の老男性に鋭い視線を刺していく。

「私は、コイツらとコイツらの子孫を絶対に許さない」

 と、マルが強く断言をしていく、VHS画質に映る男三人とは。

 ひとり目、深い赤色の三つ揃いスーツ姿の老男性。

 白髪交じりの赤毛と顎髭の長身筋肉質の、赤奴あかど牛兵衛ぎゅうべえ

 二人目、艶消し黒色の三つ揃いスーツ姿の老男性。

 灰色白髪の長身筋肉質、母犁宮もれく嬭児でいじ

 三人目、薄青色の三つ揃いスーツ姿の老男性。

 白髪交じりで蜂蜜色の癖毛の筋肉質の長身男性、牛腹うしばる瀨頭安せとやす

 ーこの三人が、あのサメの三兄弟と共謀して教団を立ち上げたんだ。そして、銭樺せんかさんのお祖父おじいさん、鯛原たいはら銭二郎せんじろうに話しを持ちかけて、院里学会の母体の世界基督教会の金で建てたんだよ。ーー

 と、このようにマルは父親の安兵衛から聞いていた出来事を思い出していた。メソポタミア神話を祖として信仰を続けてきた、牛兵衛ぎゅうべえ嬭児でいじ瀨頭安せとやすの三人はともに先祖を同じにしており、そしてこのあと出てくる、三人の老男性たちに昔から付き添っていた蜂蜜色の頭髪と眉毛をした占い師の女性も“そう”であった。魔方陣の真ん中で仰向けに眠る裸の摩周虹子の周りを、十八人の男たちがゆっくりと反時計回りに歩き出していく。六周したところで動きを止めたのちに、摩周虹子の爪先に立つローブ姿のブロンドヘアの老人男性が前を開けて両肩に掛けたとき、その格好は全裸であった。その上に、六〇歳を超えている皺だらけの顔と痩せた身体の割には若々しく“そそり立つ”男性器が異様であった。魔方陣に入ってきたブロンドヘアの老人男性は近づいて片膝を突くと、裸の摩周虹子の爪先から舌を這わせはじめていき、両太股を舐めたのちに、黒い三角の茂みへと顔を寄せて生贄の娘の局部を味わっていく。これを数分間ほど堪能したのちに、ブロンドヘアの老人男性は上へ上へと舌を這わせていきながら、摩周虹子の乳房を両方舐め回して先端部を啜ったあと両脚を広げていって、イキり立つ己の“ソレ”を彼女の下腹部にへと突き刺した。老いた男から身体中に舌を這わせられていても目を覚まさなかった摩周虹子の顔が、僅かに眉間に皺を寄せて苦痛とも取れる表情の変化を見せた。そして、生贄の娘に挿入したブロンドヘアの老人男性は、腰を前後に動かしていき、しばらくこの“運動”を繰り返した数分後、天を仰ぐほど背を仰け反らせて小ささ痙攣を見せたあとで摩周虹子の脚の間から満足そうな顔で腰と身を退いていった。そして、これが一度ではない。一番手のブロンドヘアの老人男性を含めてローブ姿の老人男性たち十四人と、牛兵衛ぎゅうべえ嬭児でいじ瀨頭安せとやすの三人を加えた計十七人の男たちがわるわる摩周虹子を男性器で貫いていき、皆が皆その己の白濁した体液を彼女の中に放出していった。摩周家の女の血を引く摩周虹子の美しさは、町の外でも突出した物を持っていて、これに伴う色香も人の男や女を問わず惹き付けていた。このような常人離れな綺麗と美しさと色香を兼ね備えた陰洲鱒町の美女が、外国のこの秘密の島の草原に画かれた円形魔方陣の中で、見知らぬ身勝手な男性たちから次々と汚されて体液を注ぎ込まれていったのである。こうした、美しい娘を汚して崇める神にへと捧げていく、十八人の一団。その生贄を汚す行為は一周のみのようで、最後の十八人目が魔方陣の中へと踏み入れた。十八人目の者が赤黒いローブをフードもなにもかもはだけて足元に落としたときに、現れたその姿は、蜂蜜色の長い髪と眉をした全裸の美しい女であった。

 それは、白磁のように透き通る白い肌、切れ長で細いまなこに常人より大きな瞳は赤褐色あかかっしょく、彫刻のような整った造形の顔の真ん中を走る高い鼻柱、張りのある豊かな乳房に鴇色ときいろの先端部、くびれのある腹周り、膨らみのある腰から下に伸びる長い両脚、適度な肩幅から伸びる長い両腕、そしてこの女の身長は目測百九〇センチ近いと思われるほどに大柄であった。かと言っても、肥満体ではなく、その長身に見合った逞しく太い骨格だった。腰まである蜂蜜色の長い癖毛と同じく、女のアンダーヘアも蜂蜜色であった。そしてさらに、この長身美女を特徴づけていたのが、厚さ一ミリ未満で径六〇ミリ以上の円形魔方陣を象った純金製のピアスとネックレスをしていたことだ。両耳から金色の細いチェーンから数センチほど下げられたのが二つと、首の後ろから下がる五本の金色の細いチェーンが胸の中央に繋がった物なひとつ。これら三つのアクセサリーはどれも、六芒星ろくぼうせいの円形魔方陣であり、この星の中にキューブ状に削った黒曜石こくようせきめ込んでいた。しかもこれらの装飾品は通常だとケバく品の無い印象を抱くものであるが、この長身美女に至っては、彼女の妖艶さを“より”引き上げている物として印象づけていた。

 この蜂蜜色の髪をした長身美女の登場に、マルは口を強く結んだ。

 ーコイツが、この女が、日奈菊ひなぎく…………。ーー

 そう。最後の十八人目の人物。

 占い師、日奈菊ひなぎく

 彼女の出生も年齢も不明だという。

 片倉かたくらの大祖母、政界や芸能界や経済界の専属的な占いをしていた占い師の片倉ヒナギクが死亡したその数日後に、この日奈菊が彼女の役目を引き継いで片倉かたくら一家いっかみなの前に現れたという。しかもこの話しは、八〇年代にあった出来事である。では、この映像にいる彼女はいったいなんなのか。六〇年代後半に撮影したと思われる姿から、全く変化というか老化が見られ無いとでもいうのであろうか。そしてこの美しい占い師、全裸姿の日奈菊は、魔方陣で僅かに頬と身体を桜色に上気させていた裸の摩周虹子の腰の上に跨がるように乗り、己の腰を“ゆっくり”と前後運動をさせながら、自身の乳房を円を画くように、腹からへそへと上下に直線を三本と腹を横断する直線を三本をその白く細い指先で“なぞった”直後、美女占い師の白磁の肌に赤い線が浮き出てきたかと思えば、赤色の鮮血が滴り流れてきて、乳房とその先端部やアンダーヘアの毛先へと伝い落ちて股下の生贄の娘の白い裸体を赤く濡らしていった。その間、日奈菊は自らの身体から滴り続けている鮮血を両手で掬い上げながら“じぶん”の乳房や首筋や腹周り、そして蜂蜜色の三角の茂みの中へと指を滑り込ませていき、快感に頬を紅潮させていく。身体前面に自身の鮮血を塗りたくったのちに日奈菊は、そのまま摩周虹子へと覆い被さり、ゆっくりと身体を前後に動かして、生贄の娘の白い裸体にへと己の血を塗りつけていった。身体の前面どうしを優しくこすり合わせて、じぶんの豊かな乳房と摩周虹子の小ぶりな胸の膨らみを左右を入れ換えて塗りつけ、ときにはその先端部どうしを付けたり離したり弾き合ったりして刺激を与えていく。それから、ルージュを引いた日奈菊の唇が摩周虹子の首筋を這い上がり、口付けを交わした。日奈菊はさらに顔を傾けて、唇の密接を深くしていき、舌を入れて摩周虹子の口内を味わっていった。まるで己の恋人かのごとく、日奈菊が摩周虹子を愛おしそうに長い時間の口付けをしていった。そうして、ようやく深いキスを終えて顔を離したときに、日奈菊と摩周虹子の唇から長く細い透明な糸状になった唾液が引いていた。それから次に日奈菊は、摩周虹子を横向きに寝かせて脚を広げたあと、腰を深く沈めると、股を股で挟んで合わせた。そしてなにをするかと思えば、日奈菊は腰を“ゆっくり”と上下と前後に動かし始めて、摩周虹子の局部と自身の局部とを擦り合わせていったではないか。この数分間の“運動”ののちに、顎を天に突き上げた日奈菊は、背を反らせて、大きな痙攣を数回見せたあとで、ようやく腰を引いて摩周虹子から離脱した。

 再び、十八人が魔方陣を囲んで反時計回りに歩いていく。

 と。ここで撮影が切れて、儀式の一日目が終了となる。



 3


 『ヤーハ島にて。二日目。ダゴンへの一人目の生贄。摩周虹子』

 白文字に黒色の画用紙の表示により、撮影は二日目に入った。

 撮影者は先日と同じく、磯野波太郎。

 これも先日と同じ、椅子に腰を掛けた赤黒い雄牛の頭を持つ筋骨逞しい男の身体をした巨大な像から見下ろされるように、赤色の逆さ五芒星を画いた円形魔方陣の真ん中で、摩周虹子が一糸纏わぬ姿で草原に尻を突いて“ペタンコ座り”をしていた。意識があるか不明なままだった昨日の映像と比べ、二日目の彼女には多少の自我が見られる感じではあったが、視線は常に斜め上を向いていて、終始脱力した上の思考力を制限されているように見受けられた。そのような生贄の娘を取り囲む形で、昨日と同じ十八人が、円形魔方陣の周りを反時計回りに“ゆっくり”と歩いていく。この日も六周したところで、今度は二人の老人男性がフードを外して前をはだけてローブを肩に掛けて、皺を刻んだ裸体を晒した。片方は白髪に占拠された茶髪の男、もう片方はほとんど白髪の黒髪禿げ頭の男。彼ら二人が、座り込んでいる摩周虹子を挟むように片膝を突いて前後から手を伸ばしていき、痩せて血管と骨格の浮いた皺だらけの指と手のひらで、若く美しい娘の乳房と尻に触れて動かしていき、感触を堪能したあとはさらに近づいてその唇で胸と背に口付けをして舌を上に下にと這わせていく。やがて、美しい娘の“味”を堪能し終えた白髪茶髪の老人男性と白髪黒髪禿げ頭の老人男性が生贄を四つん這いにさせて、隆々と立ち上がった男の象徴を摩周虹子の口と尻から挿し込んだ。数分後に仰け反って痙攣をして娘の中に欲望を放出た二人は、口と尻から引き抜き、順番待ちをしていた赤黒いローブ姿の男たちと交代した。

 それから。

 目を覚まして多少なりとも自我があるためか、これ以降の摩周虹子は抵抗する様子を見せていくものの、前もって陰洲鱒町の住民の力を常人並みにするテトロドトキシンを多量に注入されていたせいか、彼らを跳ね返そうにも叶わずに、三人の老人男性から好きなように身体をいじくられて舐め回され、そして最後には口と肛門と性器という三つの“穴”に三人から挿入されて、挙げ句の果てには彼女の中にへと白濁の体液を放出されてしまった。そしてこののちも、入れ替わり立ち替わりに残りのローブ姿の老人男性たちと牛兵衛と嬭児と瀨頭安から次々に貫かれて男たちの欲望を吐き出された。やがて、草原に糸の切れたような操り人形のように横に倒れた摩周虹子の表情は、濁った瞳に変わって絶望を現していた。そんな中で、撮影者の波太郎は彼女から見つめられていると気づいて、魔方陣へと近付いた。すると、やや吊り上がった切れ長な目の濁った黒い瞳から細い涙の糸が流れ落ちて、干からびて開いた唇の端から白濁した液を“こぼして”いきながら、その口が力無く動いていった。約六〇年以上前のカメラで撮影をしているために、音声まではれないが、彼女は彼女なりに力を振り絞って唇を筋肉を言葉が分かるように運動をさせていった。それは。

 ーもう……、殺して。お願い…………。ーー

 この唇の動きから“このように”察した波太郎だが、ローブを“はだけた”裸の日奈菊が魔方陣に入ってきたので、彼はカメラを肩に担いだまま後退していき、摩周虹子から離れていったのだ。このとき、日奈菊の大きな赤褐色の瞳から“チラッ”と波太郎の行動が見られてしまった。そんな、このヤーハ島で唯一の陰洲鱒の男である彼にへと摩周虹子が手を伸ばしていくも、波太郎は定位置に戻って撮影を続行した。口の端から垂れていた白濁の体液を日奈菊からハンカチで拭き取ってもらった摩周虹子は、そのまま四つん這いの姿勢にされて、革ベルトと土に打ち込まれた杭で手足首を固定されてしまった。その光景は、彼女の局部が悪神崇拝者たちに晒されている。この状態された摩周虹子は、抵抗するにも充分な力を振るえない悔しさと、還暦を過ぎたまたは還暦の手前の男たちから自身の身体の外も中もを好き放題されている屈辱感に気が滅入る思いであった。この獣の格好の後ろをろくに確認することができない姿の摩周虹子だったが、ギラギラとした熱い息を途切れ途切れ吐く音と、人とは違う足音に耳を澄ませていく。グルルルと低音で喉を鳴らす様子から、摩周虹子はこれまでとは違った恐怖感に包まれていった。

 その音の正体とは。

 赤黒いローブ姿の老人男性たちが、大型犬をリードに繋いでやってきたではないか。そしてこれは、牛兵衛も嬭児も瀨頭安の三人も、三者三様の大型犬を引き連れて皆に加わった。様々な犬種が、揃いも揃って雄の象徴を隆々とさせて、それぞれの先端部の“出口”から透明な粘性を帯びた物を少し垂らしていた。総勢十七頭の大型犬のこの欲望剥き出しのさまに、摩周虹子は怯えていった。身体を前後と斜めに動かすものの、多量のテトロドトキシンを注入されていたために、陰洲鱒の“鱗持ち”特有の常人の数倍の力が無効化されて、朝飯前のこの革ベルトさえも破くことが出来なかった。このような抵抗をしていた摩周虹子の背後には、無情にも大型犬の猟犬ホワイトプードルを連れた素っ裸の禿げ頭の老人男性が迫ってきていた。彼女の嫌がる姿もこの禿げ頭の老人男性には快楽の一種であるがゆえに、彼はこのまま我が愛犬を美しい生贄の背後から覆い被さらせて、獣の象徴を突き入れさせたのだ。それからは、まさにけだものたちの交尾と放出とが、摩周虹子の心情など構うこと考える必要などなく、彼女の体内に注ぎ込まれていった。

 スタンダードプードル。アフガン・ハウンド。

 マスティフ。ボルゾイ。レオンベルガー。

 フラットコーテッド・レトリーバー。

 アイリッシュ・ウルフハウンド。グレート・デーン。

 ナポリタン・マスティフ。サルーキ。

 バーニーズ・マウンテン・ドッグ。

 ニューファンドランド。ロットワイラー。

 ワイマラナー。ピットブル。

 エアデール・テリア。アラスカン・マラミュート。

 これらの猟犬や大型犬が入れ替わり立ち替わり。

 人を人とも思わぬ行為が続けられた。

 その回数、十七回。

 最後に放出したピットブルが雄の象徴を摩周虹子の尻から引き抜いたとき、再び十七人の男たちが魔方陣を反時計回りに歩き出した。絶望により頭を草原に落とした摩周虹子に、フードを外してローブを“はだけた”裸の日奈菊が魔方陣の中央に入ってきて片膝を突くと、突き上げていた生贄の娘の尻を優しく手で下げていったあとに、バールを用いて全ての鉄杭を引き抜き、革ベルトも剥がしたのちに、傷ついたその身体を両腕で抱え上げて儀式の場から出て行った。

 ここで、儀式の二日目の撮影は終了となる。

 しかし。

 場面が変わって、島にある建物の中に映像が移った。

 支障の無い内部は良いが、外観と重要な部分は駄目。

 撮影カメラを担いだまま、白い床を歩いている波太郎。

 この建物は、床も天井も壁も扉も寒色系の白色であった。

 温かみの無い廊下を、波太郎は茶色い革靴で進んでいた。

 やがて目的の白い扉の前に止まると、ドアノブに手を掛けて回して部屋に入っていく。と、そこには。これもまた部屋中が白色でコーディネートされた中の白いベッドで静かに息をして眠りに着いていた、摩周虹子の姿があった。あの凄惨な儀式のあとで、日奈菊から身体中を綺麗に洗われたのであろうか、この生贄の娘の寝顔は大変美しいものだった。そして、掛けられた薄く白いシーツからでも分かる、若い女性特有の身体の隆起が、波太郎を欲情させた。彼も生まれも育ちも陰洲鱒で鱗持ち。この町特有の筋力と身体能力のおかげで、デカくてクソ重い撮影カメラも、過度な重量を感じることなく軽々しく担ぎながらの片手作業をすることができていた。そういうこともあり、波太郎は撮影カメラを肩に空いた片手でシーツを下へ下へと剥いでいき、摩周虹子の裸体を露にした。極端に大きくはないが適度な膨らみと張りのある、まるで御椀のようなかたをしていて美しかった。彼は、まずは片手で生贄の娘の胸を撫でたり揉んだり桜色の先端部を指先で弄くったのちに、胸から腹を通過して下腹部の黒い三角の茂みにへと手を滑らせていき、その指先で縦になぞったり振動を与えたりしていった。すると、摩周虹子は寝ていながらも、眉間を寄せるなどの反応を見せた。これに“とうとう”我慢できなくなってしまった波太郎が、撮影カメラをベッドの傍らのテーブルに置くなりに、ベルトを外してジッパーとスラックスズボンとブリーフパンツとを下ろして革靴も脱ぐと、ベッドに乗っかり両膝を突いて、仰向けの摩周虹子に跨がった。そしてここから、波太郎は両手で生贄の娘の両胸を思うがままに揉んで弄くり、下腹部下の茂みを触り、終いには姿勢を上下逆にして、つまりは彼女の頭に尻と男性器を向けて己の顔は相手の下半身に位置する形態になり、両太腿を掴んで広げて、舌で局部を味わっていった。やがて、ピクピクと小さな痙攣を目蓋と頬に出したときに、摩周虹子は目を覚まして、目の前に下へと脈打つ男の“物”に驚愕して悲鳴を上げようとしたその瞬間、素早く半転して上下を戻した波太郎から手で口を塞がれてしまった。二日間に渡る絶望と恐怖に疲労して、深い眠りについていたかと思えば、自身の身体に同意無しに刺激を与えられたせいで強制的に目を覚まされてみれば、下半身を露出した同じ町の者が今まさに私への“一挿ひとさし”の準備が万端だったではないか。波太郎は脚の間に腰から下を滑り込ませて、生贄の娘が股を閉じないようにして、片腕を背中に巻いて上体を密着して乳房を押し潰し、摩周虹子を完全にホールドした。恐怖に小刻みに震える摩周虹子の耳に顔を近づけた波太郎は、静かな小さい声で話しかけていった。

 “舌を噛もうと考えるな。それより早く君の首をへし折るぞ。”

 男の言葉が脅しではなく本気でへし折ることを分かったとき、摩周虹子は身体中から静かに力を抜いていった。相手が抵抗を諦めたのを確認するなりに、波太郎は腰を深く沈めて己の“モノ”を突き入れた。摩周虹子の脱力に加えて、唾液を用いて“たっぷり”と濡らしていたこともあってか、生贄の娘の中にへと無理なく突き挿すことができた。はじめは“ゆっくり”と腰を動かしていき、数回ほどで女の体内の馴染みを感じたのち、波太郎は徐々にその動きを早めていった。摩周虹子の耳元で聞こえる波太郎の荒々しい息遣いが、恐怖と絶望をさらに煽っていく。歯を食いしばり、両手で肩を押しやって離そうと試みるも、まさに万力で締めつけられているようで男の力の入れ方は尋常ではなかった。波太郎の腰の動きは早く大きくなって、やがては、強固に床に固定していたベッドがギシギシガタガタと大きな音を立てて揺れはじめた。まるでこれは、今生の別れを惜しむかの如く、これからこの先はこの美しい虹色の鱗の娘を抱けなくなる、かのような波太郎の一方的な考えのもとで今の惨劇が行われていた。そうして、これが続くこと五分を過ぎたとき、波太郎はさらに“ギュッ”と抱きしめて、腰をビクッビクッと深く突き入れて、摩周虹子の体内に大量に放出した。

 これで、これで地獄から解放される。

 そう思った摩周虹子。

 息もれに、涙の細い糸が頬を伝い落ちていく。

 対して、ゆっくりと上体を離していく波太郎。

 顔中身体中汗だくな、陰洲鱒町の萬屋の店主。

 摩周虹子は涙目で男を見ながら、必死に願った。

 早く、早く、早く私の中からソレを引き抜いて!

 極度な疲労と困憊こんぱいに、娘の胸が大きく上下に動いていく。

 だが、そんな切なる願いも虚しく。

 波太郎は上着も脱いで完全に裸となり、腰の動きを再開していった。

 それから。十分じゅっぷん、十五分、二〇にじっぷん

 時間にしては“これ”だが、摩周虹子の体感時間は数時間に及んだ。

 数時間どころではない。数日間。永遠的な地獄ではないか。

 最初の五分も加えて、計四度に渡って波太郎は摩周虹子を犯して、全部中に放出していった。四度目の身勝手な行為を終えたのちに、波太郎はようやく己の象徴を引き抜いて、ベッドから降りて衣服と革靴を再び身につけて整えたあと、撮影カメラを肩に担ぎ直して部屋から出て行ったところで、摩周虹子を解放した。そして、波太郎が白い廊下を歩きながら撮影を止めたところで、二日目の撮影は本当に終了となる。



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