69.自信に満ちた濃紺の瞳
「イズミ、おれのせいで不安にさせてごめん」
翌朝夜勤から帰ってきたツィリムはしょぼんとしていて、それがとても可哀想になった。
「ううん、私は大丈夫だから安心して。
カイルとイフレートに話を聞いてもらって、だいぶ落ち着いたし」
「でも、イズミをひとりぼっちにしたのが良くなかった」
ぎゅう、と抱きついてくるのはまるで子どもみたいで、でも私と同じくらい高さにある濃紺の瞳は確かな強さがあった。
「イズミは、不安にならなくていい。
もしも、ラスキスがイズミに何かしたら、おれが追い出すから」
「追い出すって物騒ね。でも、ツィリムなら本当にしてくれそう」
「もちろん」
その自信に満ちた目を見ていると、カイルとはまた違った安心感がある。
「今日の昼から、出かけたいけどいい?」
「もちろん! どこへ連れて行ってくれるの?」
家に閉じこもりっぱなしにちょっと飽きてきている私は、外に行くのは大歓迎だ。
「おれの結婚式の衣装を作って貰ってる。
それの、採寸と試着をして欲しい」
「そうなのね。でも、採寸と試着、って?
採寸してから作って、それから試着じゃないの?」
「カヤッタエラの結婚衣装は、村のみんなが使う物なんだ。
だから、大きな布を上手く巻き付けてピンで留める構造になってるから、イズミの身体に合わせたい」
「そういえば、そう言ってたね。じゃあ、連れて行って。すごく楽しみ!」
そして、昼過ぎにはカイルが帰ってきた。
「カイル、おかえりなさい。今日はお出かけなんだってね!」
「そうだな。早速だが、もう出られるか?」
「うん」
カイルが帰ってきたらすぐに出かけられるように、ツィリムが先に準備してくれている。
私に着せるワンピースを選ぶツィリムは、横で見ていて分かるくらいにウキウキだった。
いつも出かける時のようにカイルがエスコートしてくれようとしたけれど、私はツィリムの方へ行く。
「イズミ、おれでいい?」
「当たり前じゃないの。今日はツィリムの結婚式の衣装あわせなんだから、ツィリムのための日でしょ?」
「うん! イズミ、ありがとう」
ツィリムは他の二人に比べて独占欲が強めなのに、夫の順位を下げたせいで中々独り占めするチャンスが少ない。
だからこそ、こういう時にはツィリムのためだけにしてあげたくなるんだよね。




