68.安心できる暖かさ
それからイフレートと色々な事を話した。
後から振り返ったら何の話をしてたのかあいまいなくらい、取り留めもない話だった。
でも、それをきちんと正面から聞いてくれて、共感してくれて。
「イフレート、ありがとう。
イフレートが話を聞いてくれたから、だいぶ不安なのが減った気がする」
「それは良かったです。
不安は、誰かと話して共有するだけで、幾分かマシにはなりますから。
それに、自分がこれを不安に感じている、と誰かが知っていれば、それが現実になった時に、助けてもらうことも出来ますからね」
「そうだよね。イフレート、本当にありがとう」
自分の中でも納得できて、大丈夫だと言い聞かせていた不安と真っ直ぐ向き合うことができた。
それは間違いなくイフレートのおかげだから、自分一人で抱え込まなくていいと思えた。
「イズミル、本当に、申し訳無かった!」
その日の夕方、驚くほど早く帰ってきたカイルは開口一番そう叫んで頭を下げた。
「えっ、えっ!? どうしたの、何かあった!?」
私はまたラスキスとの間に何かあったのかと思っておろおろしてしまう。
「イフレートから、イズミルがラスキス殿下との結構について、一人で悩んでいると聞いたんだ。
夫として、妻の不安を放置するなど、あってはならないこと。
気がつかなくて、本当に申し訳無かった」
「いやいや、そんなことないよ!
カイルが、私のために頑張ってくれているって、良く分かってるから」
「だが、忙しいからと言い訳して、放ったらかしにしたのは事実だ。
今日はもう何の予定も無いから、ずっとイズミルと一緒に居られる」
「わざわざ予定を空けてくれたの? 迷惑かけて、ごめんね」
「いや、大丈夫だ」
私としては当たり前の返事をしたつもりだったけれど、それを聞いたカイルの表情は少し曇った。
その顔を見て、思い出したんだ。
いつもみんなが欲しがっているのは、私の『謝罪』じゃなくて『お礼』だってこと。
「えっと、えっと! カイル、私のために、早く帰ってきてくれてありがとう!」
必死に言い直したら、カイルがぱあっと子どもみたいに輝く笑顔になってくれた。
「イズミル、ありがとう! 大好きだ!」
それから、色んな話をした。
イフレートには話せないような、彼が帰ってからのこととか、家での立場とか、本当に取り留めもなくダラダラと。
でも、そうしてカイルの膝の上に座って、がっしりとした腕で抱きかかえてもらいながら話していると、不思議と不安は無くなっていった。
もちろん、ゼロにはならないけれど、それよりももっと大きな、カイルの暖かさで包み込んでくれるような。
「カイル、早く帰ってきてくれて、ありがとう」
「俺の方こそ、不安にさせてごめんな。
でも、こうして相談してくれて嬉しいよ。ありがとう」
独りで抱え込んで不安だったことが、カイルの暖かさで解けて安心できて。
カイルがこんなにも大切な相手になっているって実感できたからこそ、これからのラスキスとの結婚も、大丈夫なんじゃないかなって思えた。




