67.相談するってこと
王族との結婚は必要なことで、ラスキスは相手として一番良いから結婚する。
だから、不安なんてない。
そう思い込もうとして、自分に言い聞かせていたけれど、実際は、やっぱり……。
「……不安、かも……」
私のそのつぶやきに、イフレートはうんうんと頷く。
「そうですよね、仕事が終われば帰るだけの私でもこれだけ不安なのですから、一緒に住むイズミ様は、もっと不安ですよね」
その言葉は、私の胸のうちにすとんと落ちてきて、じわっと広がるような暖かさがあった。
「……ラスキスは、結局、この家に住むのかな。
もしも、私が魔導書を読む仕事をしてることに、反対されたらどうしよう。
それに、家事も、カイルですら嫌がったのに、王子様はもっと嫌がるんじゃないかなって思うし」
自覚してみたら、後から後から不安が湧いてくる。
「色々と思う所はありますよね。そういうことは、溜め込まずに旦那様方に相談したら良いと思いますよ」
「うん。でも最近みんな忙しいから、あんまり時間が無いんだよねぇ」
「それはいけませんね。イズミ様を守るための結婚だと言うのに、イズミ様がおざなりになっているとは」
「でも、お仕事もあるし、みんな忙しいのは仕方ないと思うんだよ」
特にツィリムとカイルは、家には寝に帰るだけになっている。
私の不安やワガママで時間を取るくらいなら、その分寝て欲しいと思うくらいに過酷なスケジュールだ。
「では、私が代わりに聞きましょうか。
ラスキス殿下と結婚しても、この家に居る時間が一番長いのはイズミ様と私でしょうから、同じ気持ちになれると思いますよ」
「そうかな。でも、不安って言っても、そんなにハッキリ分かってないというか、相談出来るほど具体的じゃないんだけど」
「それはもちろん。漠然としていて、分からないからこそ不安になるのですよ。
私も、この家に来る時は不安でした。
どんな方にお仕えするのか、上手くやって行けるのか、と。
異世界から来られた方と話したことなどもちろんありませんでしたから、すぐに帰らされたらどうしよう、と考えたこともありましたよ」
微笑むイフレートがそこまで考えてこの家に来てくれたとは知らなかった。
「ですが、今はこれだけ仲良く楽しく働けていますから。
分からないからこそ不安なのだと思います」
「確かに。新しいバイト先に行く時ってなんだかちょっと不安だよね。
でも、慣れたら楽しいこともあるし。
そういうもの、かな」
「ええ。ですから、不安な時は、何が不安なのかを誰かと話してみると良いですよ。
喋っているうちに自分の考えがまとまってきて、案外大丈夫かな、と思えるものです」
優しく微笑むイフレートの切長の瞳は私の心を包み込んでくれるようで。
この人が近くに居てくれて良かったな、と思った。




